December 19, 2019 / 8:20 AM / in 8 months

コラム:カタールのアラムコ出資見送り、対サウジ雪解けなお遠く

[ドーハ 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - カタールはなぜ、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコ(2222.SE)に投資する機会を見逃したのか――。先週末に開催された国際会議「ドーハフォーラム」で、こうした疑問は少なくとも公式の場では誰も口にしなかった。実に残念な話ではないか。カタールがアラムコの新規株式公開(IPO)に参加しなかった理由を解き明かせば、サウジとカタールの対立がまだしばらく続きそうなわけを知る手掛かりになるのだ。

 カタールがサウジアラムコのIPOに参加しなかった理由を解き明かせば、サウジとカタールの対立がまだしばらく続きそうなわけを知る手掛かりになる。写真はサウジアラビアのアブカイクにあるアラムコの施設で10月撮影(2019年 ロイター/Maxim Shemetov)

ドーハフォーラムの参加者にも公正を期すべき立場で言えば、彼らの頭の中はもっとはるかに切迫した幾つもの問題が占めていた。実際、アラブ首長国連邦(UAE)はサウジの緊密な同盟国である点から、常にアラムコの出資者候補として存在した。クウェートの場合は、地域内の対立に中立的な姿勢を取ってきただけに、アラムコへの出資は多少の驚きがあった。だがもしカタール投資庁(QIA)がアラムコの株を買っていれば、あまりの意外さに驚天動地の大騒ぎになっていただろう。

カタールとサウジの関係は2017年6月からずっと冷え込んでいる。当時、サウジとUAE、エジプトなどは貿易ルートを9割方封鎖するとともに、カタール国民の入国はおろか、直行便すら受け入れを停止した。それでもブルームバーグが11日伝えたところでは、サウジ政府はカタールにアラムコへの出資を打診した。

サウジがどうしてそうしたかは、売り出したアラムコ株1.5%の引き受け先で、外国人投資家の比率はわずか15%と悲しいほどに低かった状況を考えれば、すぐに察しが付く。そしてカタールが応じなかった理由も理解できる。サウジが経済封鎖解除の条件として掲げた13項目はなお有効で、その中にはイスラム過激派テロ組織への資金提供の中止も含まれている。カタール側はそうしたサウジの主張を否定し続けており、両国の関係は近く「雪解け」を迎えそうには見えない。

もっとも数カ月前の真実は足元でやや揺らいでいる。ドーハフォーラムの出席者は、サウジが経済封鎖を終わらせたいと思っているという根拠を数多く挙げた。9月にはイランが企てたとみられるミサイル攻撃を受けたサウジは、国内の石油生産が一時半減し、もはやカタールは警戒対象リストの上位ではなくなった。米国が長年同盟してきたサウジ防衛のために報復に動かなかったことで、サウジ政府は動揺している。カタールに空軍基地を持つ米政府としては、婉曲的な表現で「亀裂」と呼ぶサウジとカタールの対立の幕引きに熱心だ。

だからQIAが例えば10億ドルでもアラムコに出資していれば、既に兆しが出ていた融和の気運を一気に本格化させるきっかけになっただろう。サウジのサルマン国王が10日にリヤドで開いた湾岸協力会議(GCC)の会合にカタールのタミム首長を招待した際に、妥協に向けたある程度の動きが感じられた。5日にドーハで行われたサッカーの「ガルフカップ」準決勝でサウジとカタールが対戦しても、特に混乱も起きなかった。

結局タミル首長はリヤドには行かず、QIAはアラムコの支えにはならなかった。もちろんそれはガルフカップでサウジがカタールに1対0で勝ったためではないだろう。恐らくカタールは、自分に有利な条件にならないままで和解を申し出る必要性が乏しいからだ。

カタールのクワーリ商業・工業相がドーハフォーラムの傍らでBreakingviewsに語ったように、サウジなどによる経済封鎖の打撃はもはや軽減された。同国は急速な自給態勢を構築した結果、例えば以前に90%強を輸入に頼っていた乳製品を輸出するまでになっている。ドーハフォーラムには、米国からムニューシン財務長官やリンゼー・グラム上院議員、イバンカ・トランプ大統領補佐官らが顔を見せ、米政府がカタールの後ろ盾だという図式がはっきりした。サッカーの2022年ワールドカップ開催国としての先行きの明るさも、カタールの強みだ。

またサウジのご機嫌を取り続ける隣国としての義理のないカタールも、アラムコがバリュエーションの観点で妙味があれば、関心を向けた可能性がある。ただIPO直後に2兆ドルに迫ったアラムコの時価総額は、カタールにとって西側の投資家同様大して意味を持たなかった。

フィッチの見立てでは、カタールは12年間の非石油基礎的財政収支赤字をカバーできるだけの対外資産を保有する豊かな国で、1人当たり国内総生産(GDP)は世界有数の高水準だが、政府系企業が抱える債務の対GDPは2018年末で67%と、サウジの24%を大きく上回った。つまりカタールも「打ち出の小槌」を持っているわけではない。そこでより好ましい投資先と考えるのはロンドンの高級不動産かもしれない。その理由は単純に、アラムコよりも値打ちがあり、原油価格に左右されにくいからだ。

カタールとしても、維持のために膨大な人的コストがかかる経済封鎖は終わらせたい。しかし解除の際の環境が重要になる。カタールとサウジの双方が譲歩できるような中立的な雰囲気作りが求められ、多分クウェートがその役目を務めるだろうが、もしかすると米国が出てくるのではないか。ドーハフォーラムのある出席者は、これが実現する可能性があるのは1年程度先になると予想する。カタールにとって、UAEなどに交じってアラムコの株式引き受けに同意していれば、サウジと対等な立場で向き合う前提が崩れてしまっただろう。

●背景となるニュース

*サウジアラビアは、国境封鎖などの制裁措置を実施しているカタールに対して、サウジアラムコのIPOへの参加を働き掛けたが、成功しなかった。ブルームバーグが11日伝えた。

*カタールは14─15日に「第19回ドーハフォーラム」を開催した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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