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コラム

コラム:強気のプーチン戦略、欧州に巨額エネ危機コスト強いる

[ロンドン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ロシアのプーチン大統領がほんの少し動いただけで、欧州はエネルギー安全保障の面で後戻りができない地点に達した。

 ロシアのプーチン大統領がほんの少し動いただけで、欧州はエネルギー安全保障の面で後戻りができない地点に達した。写真は天然ガスのパイプラインとロシア国旗のイメージ。7月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

プーチン氏は、西側が経済制裁を解除しない限り、ロシアからドイツに天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」を止め続ける構えを見せた。

その結果、ロシアはもはや信頼できるガス供給者ではないのではないかという欧州側の「疑念」を「確信」に変えてしまったのだ。これで欧州各国は、エネルギー危機対策をぐずぐずと先送りできない立場に追い込まれたのは間違いない。

ノルドストリーム1の稼働率は最近数カ月、500億立方メートル超という年間輸送能力のおよそ20%で推移している。それでも欧州の指導者は、ロシアが技術上の障害と説明していた問題が解決されれば、通常の供給規模に戻るだろうと、わずかな望みをつないでいた。

ところが、実際にはノルドストリーム1は無期限で停止され、欧州は今年必要とするガス需要5700億立方メートルの約2割が不足する事態になった。

同時に、ロシアから別ルートで送られてくる年間500億立方メートル分も、供給がにわかに不安視されている。これらの不足分は、欧州がこれまで何とかひねり出した対策で節約できた需要と比べると、はるかに大きい。

そして、北半球のこの冬が平年以上の寒さになれば、欧州は新たに130億立方メートルが不可欠になるかもしれず、1400億立方メートルの液化天然ガス(LNG)を求めてアジアの買い手との競争を強いられることになる。

つまり昨年3月の水準と比べて既にそれぞれ14倍と10倍に達している欧州のガスと電力の価格は、来年とそれ以降も高止まりする。

バーンスタインのアナリストチームが懸念するのは、ドイツの各家庭の燃料費が年間で1万ユーロ超と昨年の4倍になり、英国でもエネルギー支出が3倍余り膨らんで6000ポンド強に跳ね上がる事態だ。

フランス、ドイツ、英国の3カ国だけで世帯数は1億を上回り、彼らが向こう2年間でそれぞれ年間2000ユーロ余計に支払うとすれば、負担額は4000億ユーロにもなる。

これほどの負担を国民にそのまま背負わせるというのは、現実味を欠く。そこで1つの選択肢として浮上するのは、エネルギー企業への資金融資で当面の価格を抑え、将来の価格引き上げを通じて国民に返済してもらう方法で、英国で提案されている。

さらに、電気料金に上限を設け、利用者から賦課金を徴収するというスペインで既に実施されている手法もある。

ドイツが渋々受け入れたような、石油・ガス生産者と再生可能エネルギーの発電事業者が得た思いがけない利益に課税するというのも効果があるかもしれない。あるいは政府が借金を増やして国民の負担の一部を吸収するのも対策になるだろう。

とはいえ、各国が消費者を市場の力から守るとしても、エネルギー需要自体を減らす手も打たなければならない。それには例えば、強制的な電力の割り当ても必要になるのではないか。

いずれにせよ欧州各国は、エネルギー危機で生じる金銭面と社会的なコストを釣り合わせるためのさまざまなやり方を見つけ出すことだろう。

少なくともプーチン氏が、そうすべきだとの考えに対する一切の疑心暗鬼を解消してくれたのだから。

●背景となるニュース

*ドイツ連立政権は4日、ロシアからの天然ガス輸入大幅減などによる物価高騰で苦しんでいる家計と企業を支援する総額650億ユーロ規模の対策を発表した。子ども手当や住宅手当の拡大、公共交通機関利用の助成などが含まれ、電力会社への課税と法人税の国際共通最低水準導入先送りで財源を捻出する。

*フィンランドとスウェーデンは4日、それぞれ国内電力会社の流動性確保を支援する措置を発表した。支援規模はフィンランドが100億ユーロ、スウェーデンが2500億スウェーデンクローナの予定。

*ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは、ロシアからドイツに天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」について、3日に予定していた保守点検終了に伴う稼働再開を白紙に戻している。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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