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コラム

コラム:ロシア産石油に価格上限、計算違いで逆に値上がりも

[ロンドン 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 世界がロシアから輸入する石油の取引価格に上限を設ける考えは、計算通りの効果を上げられるのだろうか。

 6月28日、世界がロシアから輸入する石油の取引価格に上限を設ける考えは、計算通りの効果を上げられるのだろうか。写真はエルマウ城で、代表撮影(2022年 ロイター/Benoit Tessier)

この措置はロシアがウクライナ侵攻開始以降稼いできた収入を制限するし、欧州連合(EU)域内のエネルギー価格を引き下げてインフレ抑制に役立つ。国際的な石油市場に大きな混乱が起きるのも避けられる。だからこそ先進7カ国首脳会議(G7サミット)が前向きに検討することで合意した。もっとも物価に及ぼす「ブーメラン効果」のリスクを考えれば、運用は厳格にしなければならない。

浮上しているのは、一定価格以下で販売されるロシア産石油にのみ、輸送の際の保険適用を認めるという構想だ。これが有効に機能するには世界全体、とりわけインドないし中国といった国の参加が不可欠となる。インドや中国はここ4カ月間、EUが輸入を減らしたロシア産原油を積極的に購入してきた。ところがこれらの国は、EUや英国が提供するよりも割安な保険を手配できる可能性がある。

さらに上限より高い価格でロシア産石油を買おうとする国を強制的に阻止する手段は何もない。米国とその同盟国が、上限を無視した国に対してそれだけの理由で制裁対象に加える態勢は整っていないし、実行できそうにもない。

上限がほとんど守られないとしても、少なくとも直接的な石油価格の高騰にはつながらないだろう。一方でロシアに無理やり低い価格で石油輸出を続けるのを受け入れさせるのは難しいかもしれない。期待されるのは、プーチン大統領がロシアの経済的利益になるという名目で自身の政治的面子をつぶされるのを甘受するという展開だ。

しかしロシアがそうした思惑通りに動かなければ、石油価格は上昇してしまう。ロシアの現在の石油輸出規模は世界の全生産量の8%に当たる。この比率が5%に下がれば、世界の石油価格は30%跳ね上がる、とエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は試算している。石油輸出国機構(OPEC)の有力産油国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)に供給不足を穴埋めできるほど増産余力があるかどうかもはっきりしない。

EUは既にロシア産石油の完全な輸入禁止に向けて動き出している。EUがロシアに対してウクライナ侵攻以降で石油代金として320億ドル余りを支払ったのは間違いない。だが厳しい金融制裁を科せられたロシアは、その金をほとんど使えなくなっている。だとすれば今さら実効性のある価格上限を設けようとするのは、無駄な努力ではないだろうか。

●背景となるニュース

*主要7カ国首脳会議(G7サミット)は28日、ロシアから輸入する石油の取引価格への上限設定を検討することで合意に達した。ウクライナ侵攻を続けているロシアの戦費調達を制限する狙いだ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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