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コラム

コラム:スコットランド独立問題、英国債投資家が安心できる理由

[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国は小国群に分裂する「バルカン化」への道をゆっくりと進みつつある。先週行われた地方選の結果により、スコットランド独立を目指すスコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首と、独立に否定的なジョンソン英首相はそれぞれの立場を固めた。これを機にスコットランド独立問題を巡る政治対決の再開が叫ばれているが、実は英国債投資家がおじけづくべき理由は乏しい。

 5月10日、英国は小国群に分裂する「バルカン化」への道をゆっくりと進みつつある。写真はスコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首。グラスゴーで4月15日代表撮影(2021年 ロイター)

スコットランドが300年の時を経て英連合王国から離脱するかもしれないとの見通しが出てきたことで、投資家が心配するのはもっともだ。スコットランド独立の是非を問う初めての住民投票が実施される直前の2014年9月、世論調査で独立派が一時的に優勢となったため、英10年国債利回りは13ベーシスポイント(bp)跳ね上がって2.5%に達する場面があった。

国債投資家が懸念したのは、独立を果たしたスコットランドが英国の債務に関する応分の履行を破棄し、国内総生産(GDP)が縮小した英国の債務比率が10%高まるという事態だった。

ところが今回の選挙後、英国債利回りの水準はほとんど変化しなかった。その理由の1つは、2回目の住民投票は恐らく何年も先まで実施されないという見方だ。スコットランド議会(定数129)における独立派のSNPとスコットランド緑の党の合計獲得議席は72で、16年の前回選挙時の69からそれほど大きく伸びていない。

一方ジョンソン政権与党の保守党は、同時に行われたイングランドの地方議会選で健闘した。ジョンソン氏はこうした状況を踏まえ、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復途上にある英経済にとって早期の住民投票は「厄介者」だとみなすだろう。

英国債投資家が得られるさらなる安心材料は、スタージョン氏が住民投票で勝利できないかもしれないという点だ。14年の住民投票では、分離独立に付随する経済的なリスクが決め手の1つになった。というのもシティのエコノミストチームの分析によると、スコットランドの総生産(GDP)に占める国内他地域への輸出の割合は35%だが、これらの地域のスコットランド向け輸出は3.5%にすぎない。

確かに今回独立すれば、スコットランドは欧州連合(EU)に再加盟する可能性がある。大半のスコットランド住民はブレグジット(英国のEU離脱)に反対したため、これは独立を強力に後押しする材料と言える。またSNPの「持続可能成長委員会」は債務問題の解決に取り組んでおり、独立後のスコットランドが毎年30億ポンド(約4600億円)を拠出して英国の債務返済負担に充てるよう勧告している。

ただスコットランドがEUに戻る道筋は不透明で、イングランドとの国境管理について難しい問題が生じる。従って独立直後のスコットランドは、実効性が試されていない新通貨を発行するか、イングランド銀行(英中央銀行)の金融政策を引き続き受け入れるか選択しなければならない。

スタージョン氏は、これらの難題に立ち向かうのを避け、ジョンソン政権がスコットランド住民の希望を無視しているとの批判を英議会で展開することに恐らく専念するだろう。それこそが英国債投資家にとって安心の源だ。

●背景となるニュース

*6日に投票が行われた英スコットランド議会選(定数129)で、スコットランド独立を目指すスコットランド民族党(SNP)が64議席を獲得し、過半数に1議席届かなかった。ただやはり独立に賛成しているスコットランド緑の党が8議席を得た。

*英連合王国への残留を望む党の獲得議席は、保守党が31議席、労働党が22議席、自由民主党が4議席だった。

*得票率はSNPが47.7%、スコットランド緑の党が1.3%、保守党が21.9%、労働党が21.6%、自由民主党が6.9%。

*投票率63.2%は、スコットランドの選挙としては過去最高を記録した。

*イングランドの地方選では、労働党がロンドンとマンチェスター広域都市圏の首長を維持したが、7つの地方議会の過半数議席を失った。保守党は12議会で過半数を握った。

*ゴーブ英内閣府担当相(国務相)は9日のテレビインタビューで、スコットランド議会が独立の是非を問う住民投票の実施を求める法案を可決した場合、政府がどう対応するか表明するのを拒否した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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