[香港 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ゲーム業界に「乗り遅れ」への不安が広がりそうだ。米マイクロソフトはゲームソフト開発アクティビジョン・ブリザードを690億ドルで買収すると発表。業界が激変する可能性があり、ソニーと任天堂には、大胆な合併・買収(M&A)戦略の検討を求める声が強まるとみられる。
没入型のバーチャル世界を構築する競争では、知的財産を買収する動きが新たに加速している。ゲーム業界は激戦地だ。マイクロソフトのアクティビジョン買収直前にも、米ゲームソフト大手テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエアが、ソーシャルゲーム大手ジンガを130億ドルで買収すると発表。ドレイク・スター・パートナーズによると、業界のM&Aは昨年850億ドルと、3倍近くに拡大した。
注目を集めているのが日本勢の動向だ。任天堂は90億ドル以上の手元資金があるが、買収よりも開発を重視している。昨年、開発会社1社を買収したが、買収額は非公表。主だった買収は2007年以降で初めてだった。ソニーは昨年、約6件の買収を実施したが、いずれも規模が小さく、ニッチなゲーム制作会社が対象だった。
任天堂とソニーは今週、決算発表を予定しており、投資家は両社が業界の再編にどのように対応するのか、ヒントを見いだそうとしている。ソニーは、マイクロソフトのアクティビジョン買収発表後、積極的な買収攻勢に対応できるのかとの不安が広がったこともあり、株式時価総額が200億ドル以上目減りしている。「プレイステーション5」はマイクロソフトの「Xbox」より人気があるかもしれないが、マイクロソフトのサブスクリプションサービスは、どのような機器でもゲームをプレーできる仕組みになっており、2500万人以上の会員を集めている。
任天堂も準備は整っていないようだ。「スイッチ」の販売はピークを過ぎており、リフィニティブがまとめたアナリストの予想平均によると、3月期の営業利益は12%減少する見通し。モバイルなど成長分野でも出遅れている。任天堂の株価は12カ月先の予想株価収益率(予想PER)が16倍と、20年初めの21倍を下回っており、攻撃モードにシフトする時期が来ていることを示唆している。
●背景となるニュース
*マイクロソフト、アクティビジョン買収 現金687億ドル 過去最大
*米ゲーム大手テイクツー、米ジンガ買収へ 110億ドル
*ソニーG株が一時9%下落、米マイクロソフトがゲーム会社買収
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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