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コラム

コラム:SPACブーム、投資家を待ち受ける6つのリスク

[シカゴ 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 特別買収目的会社(SPAC)が一世を風びしている。調査会社SPACリサーチによると、SPACの上場による第1・四半期の調達額は834億ドルと既に昨年全体を上回り、従来型の新規株式公開(IPO)のほぼ3倍に達した。女子テニスのセリーナ・ウィリアムズや全米プロバスケットボール(NBA)のステフィン・カリー、大手ヘッジファンドのパーシング・スクエアなど、そうそうたる面々がスポンサーに名を連ねるSPACは、またたく間にウォール街用語の仲間入りを果たした。

 5月13日、特別買収目的会社(SPAC)が一世を風びしている。調査会社SPACリサーチによると、SPACの上場による第1・四半期の調達額は834億ドルと既に昨年全体を上回り、従来型の新規株式公開(IPO)のほぼ3倍に達した。2020年5月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

しかしSPACは監督や監視が欠如しているため不正が起きる恐れがあり、投資家にとってはリスクが大きい。米証券取引委員会(SEC)は警鐘を鳴らしている。しかしSPAC市場の長期的な持続性は、リスク管理の包括的な枠組みと明確な規制上のガイドラインを作ることにより、管理と安全性を高められるかどうかに掛かってくる。SPACを通じて上場する企業を、従来型IPOを通じて上場する企業と同様に厳しく審査する仕組みを確保しなければならない。これらが実現するまでSPAC投資家は6つの主要なリスクに直面する。

<不十分な資産査定>

通常のIPOでは、上場する企業に対して包括的な資産査定(デューデリジェンス)が規定通りに行われる。しかし資産査定には時間が掛かる。SPACの場合、創設者(スポンサー)は一般的に買収先を見つけるのに2年の期限が設けられている。このため資産査定はしばしば見て見ぬふりをされる。従来型のIPOでは不合格になるような経歴を持つ経営幹部や取締役会メンバーが入っていることがある。そしてスポンサーは、上場に適さない企業を拙速に買収する可能性がある。 

<不正確な財務報告書>

資産査定では財務報告書の不備が見つかることが多々ある。SPACによる上場は期間が切迫しているので、マネジャーの多くは企業の安定性に目を向けるより、素早く取引しやすい企業を見つけることに注力する。

標的となる企業はほぼすべて未公開企業であるため、過去の財務報告書は公開企業の基準を満たしていない。従来型のIPOと異なり、SECがこうした財務報告書を審査するのは買収後だ。従来型のIPOではSECが厳しい審査を行う。

<虚偽記載と脱漏>

SPACを通じて上場する未公開企業は経営についての審査も甘いため、当局への提出書類に虚偽記載が紛れ込んだり、投資家の見通しに影響しかねない重要な脱漏が発生したりする可能性がある。「将来予想に関する記述」という免責文言が入っているのはざらだ。買収する側の企業が既に上場しているため、こうした記述は最近まで従来型IPOの届け出書類と同様の審査を受けていなかった。

<経営実績の不在>

上場を目指す企業は普通、成熟度を示す指標を満たしている。例えば売上高が1億ドル(かそれ以上)、実績が証明された経営陣、厳格に記録を保持する管理体制、財務健全化のための不良資産売却などだ。しかし買収の標的を見つけるための競争に追われるSPACは、それほど成熟していない段階の企業を狙うことが多い。

そのため一般投資家がリスクの高い、未成熟な企業に資金を投じてしまう恐れがある。米金融取引業規制機構(FINRA)は、SPACは上場手続きが速いため、長期的に存続可能な事業ではなく、一時の隆盛で終わりそうな「ホットな」セクターや事業モデルを引き付けている可能性があると指摘した。

<経営管理の不備>

買収の標的となる企業は審査が甘く、未成熟であるため、経営管理が不十分な可能性がある。財務や会計の担当者の経験が浅ければ、有効な情報開示手続きや財務報告の管理を確立し、維持できない恐れがある。過失により不正確な財務報告や不正な支払い、さらにはサイバー絡みの不正行為すら起きるかもしれない。

<利益相反>

SPACには利益相反の恐れが付きまとう。スポンサー、オフィサー、ディレクターはいずれもSPACのためだけには働かず、SPACの事業と競合する他の組織・団体に対して受託義務を負っているかもしれない。SPACの当初からの投資家は、買収標的企業と利害が対立する立場に身を置く戦略で利益を得るかもしれない。標的企業と合併し、買収手続きを完了する「de-SPAC」はアドバイザーやスポンサーに頼る部分が大きいが、こうした人々には良い案件を手がけるよりも、どんな企業であれ案件をまとめる方向に動くインセンティブがある。

スポンサーはSPACの普通株をかなり割安に取得しているため、株主を踏みつけにして利益を得るかもしれない。FINRAは「引受業者とSPACのスポンサーは、SPACの買収標的とする可能性のある企業について重要な非公開情報を握り、そうした情報に基づいて取引を行う可能性がある」と警告を発している。

(筆者のリサ・シルバーマン氏はK2インテグリティーのシニア・マネジング・ディレクター)

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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