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コラム

コラム:スリランカ危機が世界に警鐘、インフレの政治的リスク

[ムンバイ 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - スリランカの危機が世界中に強烈なメッセージを送っている。生活に欠かせない食品や燃料の不足に業を煮やした人々は街頭で抗議活動を行い、マヒンダ・ラジャパクサ内閣では複数の閣僚が3日に辞任を表明。おそらく約440億ドルに上る対外債務の再編も加速するだろう。

 スリランカの危機が世界中に強烈なメッセージを送っている。生活に欠かせない食品や燃料の不足に業を煮やした人々は街頭で抗議活動を行い、マヒンダ・ラジャパクサ内閣では複数の閣僚が3日に辞任を表明。おそらく約440億ドルに上る対外債務の再編も加速するだろう。写真は抗議活動を行う人。3月31日にコロンボで撮影(2022年 ロイター/Dinuka Liyanawatte)

現在の危機は、長年にわたる政権運営の失敗が導いた結果でもある。しかしインフレが瞬く間に社会を混乱させた様子は、欧州からアジアに至るまで、スリランカよりも経済基盤は堅固ながらも生活コストの急騰に直面している国々への警鐘となる。

スリランカの経常収支危機は、西側諸国が大規模な対ロシア制裁を始めてから拍車がかかった。停電が頻発し、非常事態宣言が出されたことで、わずかに残っていた旅行者も逃げ出そうとしている。海外からの旅行者は貴重な外貨収入源だ。

食品のインフレ率は3月に30.2%に達した。通貨スリランカルピーは、中央銀行による切り下げを含めて1カ月間でドルに対して40%下落。このため債務比率は急拡大し、国際通貨基金(IMF)の推計では公的債務比率は国内総生産(GDP)比120%に達した。シティによると、これは持続可能な比率を40ポイントほど上回っている。

スリランカは昨年12月に中国と15億ドルの通貨スワップ協定を結び、インドからはコメと軽油を提供されている。しかし危機が深刻化したことで、こうした統一性のない「命綱」は効力を失った。IMFは、債務を持続可能な水準に減らすのに必要な政策は、経済的にも政治的にも実現不可能だと指摘している。このため7月に満期を迎える10億ドルの国債は現在、元本1ドルに対して0.67ドルと、2月初めの0.74ドル前後からさらに下落した。

中国から米金融機関に至るまで、債権者は元本削減(ヘアカット)を迫られるだろう。昨年4月時点で、スリランカ政府の対外債務に占める市場借り入れの割合は47%だった。

こうした様子は、インフレがもたらす政治的影響を痛感させる。ロシアによるウクライナ侵攻以前、アジアで消費者物価上昇率が2桁台に達していた国はほとんどなかった。例外はスリランカとパキスタンで、後者のカーン首相は3日、首相不信任案の採決を回避するために下院を解散に持ち込んだ。

貧しい国々の人々は裁量的品目よりも食品への支出比率が高いため、世界的な食品価格の高騰によって直撃を受けやすい。しかしIMFが1月に示した推計では、パンデミックに起因する供給網や貿易の混乱により、2019年から22年にかけての物価上昇率は先進国全般が新興国市場の3倍程度に達した。

各国は減税や補助金の積み増しによって物価高騰への対策を急いでいる。いずれにせよスリランカが急速に混乱に陥った姿は、インフレを甘く見ることの政治的リスクに警鐘を鳴らしている。

●背景となるニュース

*スリランカ内閣は複数の閣僚が辞任を表明した。複数のメディアが4日報道した。マヒンダ・ラジャパクサ首相と弟のゴタバヤ大統領は辞任しない。

*スリランカ最大の都市コロンボでは3日、数多くの少数グループが外出禁止令を破り、経済危機に対する平和的な抗議デモを行った。一方、中部の都市キャンディでは警察が抗議デモを行っていた学生らに催涙ガスを使用した。同国は物価が高騰、生活必需品が不足、停電が頻発しており、大統領は1日に非常事態宣言を行った。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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