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コラム

コラム:スナク英次期首相、乗り切れるのは当座の危機だけか

[ロンドン 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英与党保守党が、トラス首相の後任としてスナク元財務相を選ぶという、近年まれに見るほど健全な判断を下した。信頼がゼロになった指導者を、金融市場から総じて好意的に評価されてきた人物と交代させたわけだ。だがスナク氏が首相の座に就いても、英国が切り抜けられるのは当座の危機だけに過ぎない。

スナク氏は首相になれば英国では非白人として初めてで、最も若く、金持ちでもある。とはいえ投資家は、スナク氏が掲げる経済政策の基本原則をより気にかけている。結局のところ、2カ月前に行われた前回の保守党党首選で、トラス氏が物価高騰局面において財源の裏付けがない減税を打ち出せば市場にパニックを引き起こす、と予言していたスナク氏の言葉通りに事態は進行。トラス政権が9月23日に大型減税を盛り込んだ「中期財政計画」を公表すると英10年国債利回りは3.5%から4.5%に跳ね上がり、トラス氏は辞任を決断せざるを得なくなった。その後21日までに4.0%に下がった同利回りは、今回の党首選で厄介な存在とみられたジョンソン前首相が出馬を断念したこともあり、足元ではさらに3.7%に落ち着いている。

こうしたスナク氏に対する市場の信頼には、具体的な価値がある。サンデー・タイムズ紙が政府予測を引用して伝えたところでは、トラス政権下ならば2027年までに公的債務の対国内総生産(GDP)比を引き下げるには、720億ポンドの歳出削減もしくは同額の増税が必要だった。しかし既に、財源なしの減税450億ポンドのうち約300億ポンドは撤回され、財源不足の合計は400億ポンドに縮まっている。そこにスナク氏が次期首相になるとの見通しで借り入れコストが低下した結果、不足分は300億ポンドになった、と英予算専門家の1人がBreakingviewsに明かした。

残る財源不足の半分前後は、スナク氏が財務相時代に導入してトラス氏が撤廃した給与税の引き上げを復活させることで賄われてもおかしくない。スナク氏は、投資家からの信頼を利用する形で英国債利回りをまた上昇させることなく、増税の先送りに動こうとする可能性もある。ただ、どんなケースになっても英国民には、一段の増税か、重要インフラ向け投資の削減、あるいは現時点でもやりくりに追われている公共サービスがもっと縮小されるという喜ばしくない未来が待っている。

より長い目で見た場合、スナク氏にとっても保守党内の情勢を含めた政権運営環境は厳しくなりかねない。所属議員らは恐らく、保守党には経済運営能力がないと判断されて2025年までに実施される総選挙で敗北するのを懸念し、スナク氏を党首に選んだのだろう。しかし党内右派はスナク氏の増税路線を好ましく思っていないし、党内のリベラル寄りの勢力はスナク氏が英国の貿易活動の妨げになった欧州連合(EU)離脱を支持したことで不信感を持つ。一方英国は生産性低迷という長期的課題と、エネルギー料金高騰に伴う生活費危機という大きな問題に直面している。そうなるとスナク氏と市場の蜜月関係が一段落してしまえば、同氏は議会と国民の支持を確保し続けるのが難しくなるだろう。

●背景となるニュース

*英与党保守党の党首選はスナク元財務相が無投票で選出され、次期首相に就任する。党首選出馬を表明していたペニー・モーダント氏は十分な議員の支持を集められず、ジョンソン前首相も出馬を断念した。

*スナク氏が正式に就任すれば、英国では初めての非白人の首相となる。市場の動揺を招いた責任を取って在任わずか44日でその座を去ろうとしているリズ・トラス氏の後を継ぎ、何年にもわたる政治と経済の混乱によって傷ついた英国への信頼を取り戻す仕事を託される。

*ハント財務相は31日に来年の予算案を提示する。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*動画を付けて再送します。

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