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コラム

コラム:テスラ評価で楽観的すぎる市場、薄れる優位性

[ニューヨーク 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車(EV)大手テスラが置かれている現実と、市場の評価にはかなり大きな開きがあるのではないか。

 7月20日、米電気自動車(EV)大手テスラが置かれている現実と、市場の評価にはかなり大きな開きがあるのではないか。写真は上海のショールームで2019年1月撮影(2022年 ロイター)

テスラの第2・四半期業績は、他の自動車メーカーを悩ませたのと同じ生産面の問題によってダメージを受けた。ただ7700億ドル(約106兆6000億円)という時価総額は、残りのあらゆるメーカーに対しては決して抱けないほどの楽観的な見方を反映している。それがロボタクシーであれ人型ロボットであれ、投資家は引き続きイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が世界を変えると期待しているのだ。

テスラの売上高は前期比で約10%減少した半面、前年同期比ではなお42%増え、成長モードを保ってはいる。しかし原材料価格高騰に伴って、収益性は低下。中核となる自動車部門の粗利益率はまだゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターより高いとはいえ、前期の32.9%から27.9%に下振れた。

これらの既存メーカーに対してテスラが享受してきた特別な地位も揺らぎつつある。特に自動車からの収入は前期比で13%強減少した。ウェルズ・ファーゴによると、これは生産台数の15%減にほぼ一致し、業界全体の減収率9%より大きい。つまりテスラもライバル勢と同じ混乱に見舞われ、彼らの投入する新たなEVがテスラの先行利得を侵食しているということだ。

ところがテスラの現在の企業価値は、依然として同社が多くの特別な要素を備え続けると見込んでいる。まず今年の納入台数が非常に野心的な目標である150万台に達すると想定してみよう。テスラは上半期に自動車1台当たりおよそ5万6000ドルを稼ぎ出した。営業利益率を20%とすれば、年間営業利益は170億ドル弱となる。これをフォードの利益見通しに基づく株価収益率(PER)の14倍に当てはめると、テスラの自動車部門の価値は約2400億ドルと、同社の時価総額の3分の1にも足りない。

確かにテスラはライバル勢より収益力が高いし、生産面での洗練さという観点でも抜きん出ている。それでも実情と評価の間にはとてつもなく差がある。マスク氏は、テスラが単なる素晴らしい自動車メーカーというよりずっと大きな存在になると約束し、ロボタクシーや「オプティマス」と呼ぶ人型ロボットなどの構想を次々に打ち出している。だが同社が突きつけられているのはもっと平凡な懸念材料で、金利上昇が需要に及ぼす影響や連邦当局による各種調査、衝突の不安などがそれに該当する。

投資家はテスラの潜在的な力を目いっぱい織り込みながら、同社が抱えるリスクはほとんど考慮していない。

●背景となるニュース

*テスラが発表した第2・四半期の売上高は169億ドルで前年同期比42%増えたが、前期比は10%の減少となった。リフィニティブに基づく市場予想の171億ドルをわずかに下回った。

*中核となる自動車部門の粗利益率は前期の32.9%から27.9%に低下。工場の操業に支障が出たことや、供給制約が響いた。

*第2・四半期の生産台数は25万8850台で、前期比15%減。それでも同社によると、6月は月間で過去最高の生産台数になった。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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