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コラム

コラム:テスラを待ち構える値下げ競争、利ざや縮小は不可避

[ニューヨーク 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が昨年末から大幅値下げに踏み切っている。これは需要低下でパニックを起こしているか、さもなければ競合他社を出し抜くための抜け目ない動きかもしれない。EV業界をリードするテスラには利ざやという大きな武器がある。しかし世界的な景気悪化が見込まれる今、「世界を支配する」と豪語し続けるだけでは立ち行かなくなるかもしれない。

 1月25日、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が昨年末から大幅値下げに踏み切っている。写真はドイツ・グリューンハイデにあるテスラの「ギガファクトリー」。2022年3月、代表撮影(2023年 ロイター)

テスラはその厚い利ざやゆえに、EV産業で生み出される利益の大半を占めている可能性が高い。しかし25日に発表された昨年第4・四半期の決算では、利益がピークから減少した。

テスラ車の生産台数と納入台数の差は拡大し、利ざやは縮小する定めにあった。マスク氏は苦渋の選択を迫られた。需要減を放置して在庫をさらにだぶつかせ、高い経費を投じて急拡大してきた工場を遊ばせてしまうのが1つの選択肢。もう1つの道は値下げによる需要喚起で、マスク氏は後者を選んだ。

この道は利ざやを損ねるが、ライバル社との差を維持するのには役立つかもしれない。テスラの動きを受けて、まだEVの投資段階にあるライバル社も値下げを迫られ、キャッシュフローが減少して生産拡大が難しくなる可能性がある。

最近の値下げによってテスラの中でも価格が安めの車種は米政府の税制優遇の対象となり、ますます魅力的な価格になるだろう。とはいえゼネラル・モーターズ(GE)のシボレー・ボルトなどはもっと安価だし、他社もテスラ同様に低価格モデルに力を入れかねない。

マスク氏は依然として、販売台数を2022年の130万台から30年には2000万台に増やすという目標を掲げている。つまりテスラは、世界を支配する比類なき自動車メーカーになるということだ。

第4・四半期の自動車事業の粗利ざやは、環境を破壊しない自動車に与えられる「規制クレジット」の販売収入を差し引いたベースで納車1台当たり1万2473ドルだった。この利ざやをゼロにすると、テスラ車の世界の平均販売価格は現在の5万1421ドルから3万8949ドルに下がる計算だ。この数字は各種のコスト削減の可能性や、販売台数拡大がもたらす「規模の利益」を勘案していない。とはいえ世界一売れているトヨタ自動車のカローラの最低価格2万1550ドルに比べるとずっと高いのが現状だ。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げにより自動車ローン金利が上昇し、さまざまな市場が減速している今、テスラが目標を達成できない可能性は現実のものとなっている。同社は単純に高価格車市場に手を広げ過ぎたのであり、生産分を売り切るには一段の大幅値下げが必要なのかもしれない。第4・四半期決算には1月に実施した再値下げの影響が反映されていない。この先まだ痛みが待ち構えている。

●背景となるニュース

*テスラが25日発表した2022年第4・四半期決算は、売上高が前年同期比37%増の243億ドルとなり、アナリスト予想の242億ドルをわずかに上回った。中核となる自動車事業の粗利ざやは約26%で、前年同期の約31%から縮小した。

*同社は近年、値上げを続けてきたが、昨年12月には主要市場で値下げを実施し、今年1月には再値下げに踏み切った。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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