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コラム

コラム:生殖医療ビジネスのブーム到来か、コロナ禍も需要に拍車

[ニューヨーク 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 精子はただで豊富にあるものと思っている人々もいる。だが、そうではない人々が世界には何百万人もいる。精子の需給はひっ迫しており、特にコロナ禍がそれに拍車を掛けた。これが「フェムテック」とも呼ばれる生殖補助医療ビジネス・ブームに火を点けている。社会的な課題や規制上の障害はあるが、この産業は投資家に愛されて開花しそうだ。

精子はただで豊富にあるものと思っている人々もいる。だが、そうではない人々が世界には何百万人もいる。精子の需給はひっ迫しており、特にコロナ禍がそれに拍車を掛けた。写真は仏パリ・トゥノン病院の生殖生物学研究所で、胚と精子のサンプルを冷凍保存するための準備を行う医療技術者。2019年9月撮影(2021年 ロイター/Benoit Tessier)

<精子不足深刻化させるコロナの流行>

生殖補助医療は、人工授精から体外受精まで種類が多い。体外受精の歴史は比較的浅く、国際生殖補助技術モニタリング委員会のデータによると、1978年の最初の事例以来、これまでに体外受精によって生まれた人数は累計約800万人にとどまっている。

生殖補助医療の市場では、以前からサービスの提供が不足していた。デンマークの精子バンク、クリオス・インターナショナルのピーター・リースレブ最高投資責任者(CEO)によると、世界中で異性間カップルの約15%が不本意に子どもをもうけていない。

これに米国の国勢調査の数字を当てはめると、現在結婚している、あるいは過去に結婚していた米国人女性のうち約1400万人が、ある時点で生殖補助医療サービスを必要としていた計算になる。ここには結婚していない異性カップルは含まれていない。

しかも、リースレブ氏の顧客の約3分の1は同性カップルに属し、50%は独身女性だ。米疾病対策センター(CⅮC)によると、米国で2018年に生殖補助医療を利用して生まれた新生児は7万4000人にとどまっている。生殖補助医療の助けを借りてでも子どもを産みたいが、産めていない人の数がずっと多いのは明らかだ。一部の企業は、このギャップに将来の商機があると見込んでいる。

不均衡は悪化する一方なのかもしれない。疫学者のシャンナ・スワン氏によると、ストレス増大や食事の悪化により、過去40年間で精子の数は半減した。しかも、足元ではコロナ禍によって精子がさらに手に入りにくくなっている。

ロイターによると、例えばスウェーデンでは精子提供者が新型コロナウイルスへの感染を恐れて精子バンクに行くのを拒否するようになった。米ニューヨーク・タイムズ紙は今年、精子の「闇市場」が台頭していると報じた。

<上がる結婚年齢>

一方で、精子の需要は増加している。1年以上も家に閉じ込められた多くの女性は「失われた1年」を案じている。ロックダウンによって子作りのパートナーを探すのは不可能に近くなった。人口動態の上では、既に逆風が吹いている。

ピュー・リサーチによると、現在23―38歳の「ミレニアル世代」のうち結婚している比率は44%と、1960年代序盤または中盤から1970年代終盤に生まれた「X世代」が同年齢だった時の53%、「ベビーブーム世代」の同61%を下回っている。女性の結婚年齢が上がるにつれ、妊娠の難しさは増す。

<少子化と人工授精ビジネス>

各国政府の対応は、多かれ少なかれ矛盾をはらんでいる。人工的な受精に対する宗教上の忌避感に即した対応を採る政府もあれば、子どもを望むカップルを支援しようとする政府もある。しかし、政府は同時に経済への影響も懸念している。

米国と中国はともに昨年、出生率が急激に下がった。人口の増加ペース鈍化に伴う経済成長の鈍化を懸念した両国は、出産の増加を後押ししようとしている。かつて「1人っ子」政策で知られた中国は最近、1組の夫婦が3人まで子どもを持つことを許すと発表した。

同時に、生殖補助医療の市場は、政府支援への依存度を弱めている。性の平等を支持する世界的な潮流も追い風だ。例えば、男女の賃金水準の平等化は回り回って、高い体外受精コストを自力で賄える財力につながる。米国立衛生研究所の2011年の調査によると、成功した体外受精治療の料金は平均6万ドル余りだった。

<手ぐすね引くウォール街>

上場企業数社が、この潮流に乗る準備を進めている。不妊治療専門の福利厚生企業、米プロジニーはアルファベット傘下のグーグルやマイクロソフトなどの顧客企業と協力し、保険費用の補助による生殖補助医療サービスの低コスト化とアクセス向上を図っている。同社の株価は、過去3年間で約4倍に跳ね上がった。

リフィニティブによると、婦人医療サービスを手掛ける中国企業、錦欣生殖は、今年の売上高が約25%増える見通しだ。株価は過去1年間でほぼ2倍の水準に上昇している。

プライベートエクイティ(PE)企業も、流れに乗ろうとしている。生殖補助医療ビジネスは細分化されているが、今後は規模拡大の余地がある。IBISワールドによると、米国の同業界は昨年、大手3社がシェアの約4割を占めたが、残りは規模の小さい地域施設だった。

また、米国の生殖医療クリニックでは、利払い・税引き前(EBIT)の利ざやが、2015年の7%弱から昨年は約11%に拡大した。ウォーバーグ・ピンカスやTPGなどのPEや金融大手モルガン・スタンレーが、こぞってこのセクターの企業を買収したのも不思議ではない。

投資銀行ハリス・ウィリアムズは2020年のマーケティング資料で、生殖補助医療セクターの素晴らしさを持ち上げた。これはウォール街が手ぐすねを引いている証拠だ。「フェムテック」への投資は間もなく急拡大するだろう。

●背景となるニュース

*生殖補助医療のサンタ・モニカ・ファーティリティーは2019年、PE企業のウェブスター・エクイティ・パートナーズによる買収を発表した。

*PE企業のTPGは2016年、不妊治療専門の福利厚生企業プロジニーに投資し、同社は19年に上場した。ウォーバーグ・ピンカスは18年に中国の錦欣生殖に投資し、同社は19年に上場した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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