September 24, 2019 / 4:18 AM / 24 days ago

コラム:英トーマス・クック救済せず、EU離脱強行の予行演習か

[ロンドン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英老舗旅行代理店トーマス・クック(TCG.L)がついに経営破綻した。時代遅れなビジネスモデルを考慮すると、英政府が同社を1億5000万ポンド(約200億円)で救済する措置を拒否したことは、手厳しいとは言えない。その代わり、同社を利用して海外旅行中の英国人約15万人を帰国させる費用は、納税者が負担することになる。

 9月23日、経営破たんした英老舗旅行代理店トーマス・クックの救済を英政府が拒否したことは、同社の時代遅れなビジネスモデルを考慮すると手厳しいとは言えない。写真は同社破たん後の9月23日、トルコのダラマン空港で撮影(2019年 ロイター/Umit Bektas)

英国が合意なしで欧州連合(EU)を離脱し、破綻する企業が出た場合にも、政府が「モラル・ハザード(倫理の欠如)」を伴う救済をおいそれと行うことはないだろう。

社会史学者なら、1841年にイングランド北部で創業したトーマス・クックの経営破綻を嘆き悲しむだろうが、同社の取引先企業はそうではないだろう。500余りの実店舗を構える同社は、変化する旅行習慣に対して驚くほど適応力がなかった。

同社は2011年以降、経営難にあえいでいた。民泊仲介サイトを運営する米エアービーアンドビーのような革新的企業や、格安航空会社が台頭し、そこにポンド安と2018年夏の猛暑が重なってとどめを刺された。

ジョンソン英首相としては、海外で足止めを食らった旅行者の帰国費用は請け負うとしても、トーマス・クックの経営破綻については放置するほかなかった。

2017年に英モナーク航空が経営破綻した後に8万人余りの英国人を帰国させた際には、5000万ポンドの公的資金が使われた。トーマス・クックの場合、その約2倍の英国人旅行者が海外で足止め状態となっている上、飛行機の借り上げ費用は米航空機大手ボーイング(BA.N)の737MAXの運航停止によって膨らんでいる。政府は推計支出1億5000万ポンドの大半を、保険で回収できないだろう。

トーマス・クックの筆頭株主である中国の復星旅遊文化集団(1992.HK)など株主は、出資金が吹き飛ぶ見通しだ。債権者も軽い損失では済まないだろう。トーマス・クックが運航に使用している100機余りの航空機のうち、同社が保有しているのは16機のみだ。他の資産には、空港の発着枠や地中海に展開している9軒のホテル、トーマス・クックのブランドなどがある。

だが、同社のブランド価値は1週間前から低下しているとみられ、これらの資産全体でも、推計債務15億─17億ポンドの4分の1程度しかカバーできそうにない。

英政府が海外旅行者を帰国させる費用は、ジョンソン首相が拒否した救済策の費用とほぼ同額だ。トーマス・クックの救済を拒む一方、破綻後の「後片付け」費用は負担する対応は、鉄鋼会社ブリティッシュ・スティールや肥料開発会社シリウス・ミネラル(SXX.L)など最近の経営破綻に対して取ってきた厳しい姿勢と整合的だ。

だが、仮に首相が10月末に「合意なきEU離脱」を強行すれば、経営難に陥った企業が、救済を求めて政府のドアを叩いてくるだろう。

●背景となるニュース

*英老舗旅行代理店トーマス・クックが23日、経営破綻した。これにより同社を利用して海外旅行中の何十万人もが旅先で足止め状態となっている。

*178年前に創業したトーマス・クックは16カ国でリゾートを展開、航空会社も運営している。同社を利用した海外旅行客は現在約60万人に上り、政府と保険会社が旅行客を帰国させる措置に乗り出した。

*トーマス・クックは17億ポンドの債務を抱え、経営難に陥っていた。同社は、筆頭株主である中国の復星旅遊文化集団などと9億ポンドの資本増強計画を進めていたが、銀行団が追加で2億ポンドの資金を要求したことを受け、交渉が決裂した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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