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コラム

コラム:中国非難する米国の偽善、抗議デモが超大国失墜にとどめ

[香港 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 全米で巻き起こっている抗議デモは、米国の国際的地位に修復不能な禍根を残すかも知れない。トランプ政権になって以来、米国の影響力は衰え続けていたが、今回の暴動により米国が道徳的な優位性を取り戻すのは一層難しくなるだろう。その代償は大きい。

 6月1日、全米で巻き起こっている抗議デモは、米国の国際的地位に修復不能な禍根を残すかも知れない。トランプ政権になって以来、米国の影響力は衰え続けていたが、今回の暴動により米国が道徳的な優位性を取り戻すのは一層難しくなるだろう。写真は黒人男性死亡事件を受け、全米に広がった抗議活動の様子。6月1日、サンフランシスコで撮影(2020年 ロイター/Stephen Lam)

米国の独立は、本国の暴政に植民地が蜂起するところから始まった。それと同じ暴政へと米国の民主主義が劣化していく恐れは、少なくともフランスの政治学者アレクシ・ドゥ・トクビルが1831年、米国を訪れた時から予言されていた。

英エコノミスト誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」は2017年、米国の民主主義レベルを「欠陥のある民主主義」に格下げした。トランプ政権以前から綿々と続く政策の誤りが、所得格差や医療制度の欠陥など数々の問題を生み出している。

米連邦政府は新型コロナウイルス感染の世界的大流行への対応に失敗し、既に10万人を超える米国民が命を落とした。そして今、この国は警察の残虐行為と人種的不公平を巡って引き裂かれている。国内の根深い問題をさらけ出しながら、さらに友好国を追い払う行為にさえ出ている。

トランプ大統領はここにきて世界保健機関(WHO)脱退を宣言し、相変わらず内向きの政策に終始している。過去には、米輸出に対する外国の税で約1万8000項目が撤廃されるはずだった環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を離脱した。トランプ氏は中国に関税をかけたが対中貿易赤字は消えず、一部の推計によると、米消費者は最終的に1人当たり年間最大1000ドル(約10万7000円)のコストを負わされる可能性がある。

イデオロギー的に偽善的に振る舞うことで、腐食はさらに深まっている。米政治家は中国の検閲と香港での人権弾圧を非難するが、自国で似たような行動が燃えさかっている。目下の抗議デモは、ミネアポリスの白人警官が拘束した黒人を窒息させ、死に至らしめたことに端を発するものだ。警察はその後、デモを取材中のジャーナリストを拘束したり、彼らに向けてゴム弾を発射したりするといった行為に出ている。

何を平常と言うかはともかく、平常に戻るのは難しそうだ。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ氏は全米向けに演説する代わりに、ホワイトハウスの地下壕に一時退避した。その彼は、政敵が汚いやり方で大統領選に勝とうと目論んでいるのだ、と訴えている。これは国内政治をむしろ、もっと不安定化させかねない主張だ。

指導者のモラルを経済価値で測るのは難しいが、信頼はビジネスと貿易のコストを下げ、軍事支出の必要性を減らす。中国が実感している通り、信頼は金で買えない善でもある。信頼の喪失は代償を伴い、その代償は今、日増しに膨らみつつある。

●背景となるニュース

*黒人のジョージ・フロイドさんが5月25日、ミネアポリスの白人警官に暴行され死亡された事件を巡り、多数の米都市で暴動が勃発した。この警官は解雇され、第3級殺人などの罪で訴追された。[nL4N2DB41S]

*フロイドさんは手錠を掛けられて路上に押し伏せられた状態で、約9分間にわたって警官から首に膝を押しつけられて死亡。その姿は目撃者に撮影されていた。フロイドさんは20ドルの偽札1枚を使った疑いがあるとして拘束されていた。

*CNNのオマール・ジメネス記者と撮影クルーは5月29日、フロイドさんの死を受けた抗議デモを取材、放送している最中に逮捕された。

*報道への暴力を追跡している諸機関によると、今回の抗議デモを取材している記者らへの暴力行為は約20件報告されている。この中には、ロイターのカメラマンらがゴム弾に直撃され負傷した件が含まれる。 [nL4N2DE0VB]

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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