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コラム

コラム:VWトップ人事、ポルシェIPO巡り混乱誘発も

[ロンドン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、ヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)の後任に傘下の高級スポーツ車メーカー、ポルシェのオリバー・ブルーメCEOを充てるグループ内トップ人事を発表した。VWは、失言癖があるとはいえ電気自動車(EV)事業を強力に推し進めた立役者を失う。さらに重要なのは、計画されているポルシェの新規株式公開(IPO)に混乱が生じる恐れがある点だ。

 ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、ヘルベルト・ディースCEO(写真)の後任に傘下の高級スポーツ車メーカー、ポルシェのオリバー・ブルーメCEOを充てるグループ内トップ人事を発表した。北京で2018年4月撮影(2022年 ロイター/Jason Lee)

ディース氏は3年間のCEO在任期間中にある程度の成功を収めた。BMWの幹部だったディース氏はVWのバッテリー車へのシフトを主導し、ライバルのテスラとその創業者イーロン・マスク氏をたびたび賞賛した。また、国や州政府と民間セクターの株主の間で危うい均衡を保っていることで知られるVWで人員削減の可能性にも言及した。

しかしディース氏のやり口は、監査役会の半分を支配する、強力な労使協議会と労働組合の怒り買い、その権限を疑問視する声が上がることが少なくなかった。ナチスを起想させる発言で物議をかもしたが、在任中の失言はこれだけではない。自ら統括したソフトウエア部門カリアドの進捗が遅れ、EV化にとって唯一の守護者という見方は根底から覆った。ロイターの報道では、労組と対立しただけでなく、VWの議決権の半分余りを握り、ディース氏交代人事を主導したポルシェ家とピエヒ家からの支持も失ったもようだ。

販売台数に占めるバッテリー車の割合を2030年までに半分以上に引き上げるといったVWの野心的なEV化の方針が、ディース氏更迭によって頓挫することはないだろう。ブルーメ氏はEV事業で多くの実績を残している。同氏が率いるポルシェはEVモデル「タイカン」を展開して成功を収めており、2年後にはグリーン車の収益性が内燃機関車と同等まで改善すると見込んでいる。

トップ交代人事による仕切り直しは、ブルーメ氏がVWの重要な課題に取り組む上で助けになるかもしれない。VWはEV投資を拡大しつつ、低迷する収益性を改善する必要がある。リフィニティブの試算によると、VWは今年の利払い・税引き前利益(EBIT)ベースの利益率が8%にとどまりそうだ。また最大市場である中国でも、地元ライバル勢が台頭する可能性があり、市場シェアを守る必要がある。

重要な問題は、ブルーメ氏のCEO就任により、ただでさえ複雑なVWとポルシェの企業統治に混乱が生じる恐れがあることだ。VWはポルシェを上場し、議決権株の25%強をポルシェ家とピエヒ家に売却する計画だが、これはポルシェのVWからの独立性を高めるのが主な動機のはずだった。ブルーメ氏がVWとポルシェ両社のトップに就けば、それが曖昧になる。

VWの議決権のない優先株はポルシェのIPO計画の詳細が発表された2月以来、価格が4分の1ほど下落した。VWの時価総額は840億ユーロでポルシェの900億ユーロを下回っている。投資家がポルシェのIPOを巡る混乱への不安を強めれば、ディース氏の失言ですら懐かしく思い始めるかもしれない。

●背景となるニュース

*VWは22日、ディースCEOが9月1日付で退任すると発表した。後任は傘下の高級スポーツ車メーカー、ポルシェのオリバー・ブルーメCEO。

*ブルーメ氏はVWの取締役会会長を兼任する。また、ポルシェが計画しているIPO後も引き続き同社のCEOを務める。

*ディース氏は電動化の影響を巡り、強い力を持つ労使協議会とたびたび衝突。投資に関する労組との協議が長引いたことで、昨年12月には中国事業の権限がラルフ・ブランドシュテッター氏に移り、権限が低下していた。

*ブルーメ氏は1994年にVWに入社。「VW」や「アウディ」など複数のブランドで管理職を務めた経験を持つ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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