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コラム:モディ氏のインド再生、問われるスピード=ブレマー氏
2014年5月22日 / 02:07 / 4年後

コラム:モディ氏のインド再生、問われるスピード=ブレマー氏

[20日 ロイター] - インド総選挙の結果を受け、世界で最も強力かつ大きな変化をもたらす指導者がアジアに3人揃うこととなった。その3人とは、日本の安倍晋三首相、中国の習近平国家主席、そしてインド人民党(BJP)のナレンドラ・モディ氏だ。

 5月20日、国際政治学者イアン・ブレマー氏は、インド次期首相となるモディ氏には、国民が望むスピードで劇的な変化をもたらすことが求められていると指摘。写真は記者団に応じるモディ氏(2014年 ロイター/Adnan Abidi)

この3人は世界経済の5分の1をコントロールし、世界人口の5分の2が住む地域を治める。そして、いずれの指導者も積極的な改革計画を持っている。

安倍首相や習主席に寄せられる期待は非常に高く、同時に課題も多いが、モディ氏ほどではない。世界最大の民主選挙となった今回の総選挙では、モディ氏率いる最大野党BJPは、下院議席の約52%を獲得するという決定的勝利を収めた。一方、英国からの独立以来、ほぼ間断なく国を支配してきた国民会議派は大敗を喫し、4分の3の議席を失うという過去最悪の結果となった。

インドの有権者がモディ氏にこれほど魅力を感じるのは(見方を変えれば、国民会議派にこれほど反発したのは)なぜだろうか。人口6000万人のグジャラート州の首相としてモディ氏は、中国をほうふつとさせる経済的利益を同州にもたらした。12年間の在任中、同州の1人当たり平均所得はほぼ4倍に拡大し、全国平均の伸びを上回った。

モディ氏は「小さな政府で最大の統治」をスローガンに掲げ、非効率を削減して事業の発展や競争率向上を目指す経済政策を訴えてきた。これはまさに国民会議派が国家レベルで実現できなかったことだ。インドは高インフレ、成長の停滞(少なくとも過去の水準と比較すれば)、そして米議会の方がましに見えるほどの政治の機能不全に直面している。

有権者が期待しているのは、モディ氏がグジャラート州で実現させた経済モデルをインド全土で導入することだ。

ここで問われるのは、国民が望むスピードで劇的な変化をもたらすことができるどうかだ。中国や日本と違い、インドは極めて地方分権色が強く、選挙で圧勝してもその事実は変わらない。

次期選挙は2016年まで行われず、その時に争われる議席も全体の3分の1にとどまる。BJPは過去10年、野党として国民会議派の政権運営を妨げてきたが、今後は立場が逆転する。モディ氏は、有権者の高い期待に応えるほどの改革断行には苦労するだろう。政治的に慎重な対応が求められる労働、エネルギー、農業などの問題をめぐっては、計画をすぐ実行に移すことも困難だろう。

しかし、野党側が政権運営を妨害したとしても、モディ氏には即座に変化をもたらすことができる3つの分野がある。

第一に、議会の支持を得なくても実行できる計画に焦点を当て、外国直接投資の自由化やインフラプロジェクトの効率化などを進めることができる。

第二に、インドの地方分権はもろ刃の剣であり、大きな改革は国家レベルでは実現が困難となる一方、州レベルでは劇的な構造変化が実行に移される可能性が高い。モディ氏はグジャラート州で築いた開発モデルを他の州にも拡大し、インフラ開発や外国直接投資の加速につなげることも可能だ。

最後に、インドが国際社会でより重要な役割を果たすよう行動を起こせるはずだ。「再生したインド」を世界の表舞台で示せれば、主要国や多国籍企業は改めてインドに注目するだろう。

モディ政権誕生への外国人投資家の期待を受け、通貨ルピーは対米ドルで約10カ月ぶりの高水準に達し、インド株式相場は史上最高値をつけた。モディ氏は米国、欧州、日本、中国、ロシアなど、すべての国との外交関係を強化していくとみられる。

中心的な役割を果たす国が存在しない「Gゼロ」世界では、インドは「オアシス的存在」として際立つため、各国との二国間協定では絶交の機会が到来するだろう。

米国を例にとれば、ニューヨークでのインド人外交官の逮捕などを背景に、両国関係はこじれてきた。また米国は2002年にグジャラート州で発生した宗教暴動への対応を理由に、2005年にモディ氏への渡航ビザ発給を拒否した。しかし、勝利がすべてを解決することは少なくない。総選挙でのモディ氏圧勝が明らかになった後、オバマ米大統領は同氏に電話で祝辞を述べ、米国訪問を招請した。

モディ氏が進めているのは10週間の計画だけでなく、インドを改革に導く10年後の青写真でもある。インドがその間待ち続けることができることを願おう。

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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