[ロンドン 11日 ロイター] - 英政府の移民政策をツイッターで批判したサッカー元イングランド代表のゲーリー・リネカー氏を、公共放送BBCがサッカー番組の司会から降板させたことで、BBCが政治圧力に屈したとの批判が噴出している。リネカー氏への連帯感から解説者らが出演を拒否、トップが釈明に追われるなど、BBCは危機の様相を呈している。
英政府は先週、英仏海峡から小型ボートで密入国する移民を強制追放する新法案を発表。リネカー氏はツイッターで、「最も弱い人々に向けられた残酷な政策」であり、法案の文言はナチス・ドイツと酷似していると強く批判した。
首相報道官はリネカー氏の投稿について「受け入れられない」と述べ、ブレイバーマン内相は「侮辱的だ」と批判。BBCは中立性を守るためとしてリネカー氏を降板させた。
リネカー氏が司会を務めていた「マッチ・オブ・ザ・デー」は11日、出演者らがボイコットしたため時間を大幅に短縮して放送するなど混乱に見舞われた。
降板の一件は、BBCの公平性を巡る大きな議論に発展。ティム・デイビー会長は11日の放送で、「われわれBBC、そして私自身、左でも右でもなく特定の政党に迎合しない公平性への情熱」に基づいて働いていると釈明し、この問題で辞任しない意向を示した。
デイビー氏はまた、リネカー氏を放送に復帰させるとともに、一部の出演者についてBBCの中立性を維持しつつ自身の意見を表明できるバランスを探っていきたいと述べた。
スナク首相は11日、移民政策を擁護する声明を発表。リネカー氏の問題については同氏とBBCの間で解決されることを期待するとした。
野党労働党のスターマー党首は、BBCはリネカー氏に不満を示した与党保守党議員らに屈したと批判した。
リネカー氏は11日、自宅を出る際などにメディアにコメントを求められたが答えなかった。
2000年から04年にかけてBBC会長を務めたグレッグ・ダイク氏は11日のBBCラジオで、「広く愛される司会者のゲーリー・リネカー氏が、特定の問題について政治圧力を受けて降板させられた」とし、BBCは間違いを犯したとの見方を示した。
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