July 25, 2019 / 7:08 AM / 4 months ago

焦点:英金融機関のEU市場アクセス維持、一段と期待薄に

[ロンドン 24日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱後、英金融機関はEU市場へのアクセスを維持することがますます難しくなりそうだ。この問題の解消に向けた英国の政治的意思が弱まっている上、EU側も域外国によるアクセスを認める際の基準を強化しているためだ。

 7月24日、英国の欧州連合(EU)離脱後、英金融機関はEU市場へのアクセスを維持することがますます難しくなりそうだ。写真はロンドンの金融街に立ち並ぶビル。5月7日撮影(2019年 ロイター/Hannah McKay)

英金融街シティーにとってEUは最大の顧客であり、英金融サービス業界は2017年、EUに260億ポンド相当を輸出した。この金融業界がシティーに本拠を置いたままEU域内で事業を展開できるようにすることは、英国が国民投票でEU離脱を選んだ16年以来、重要な課題の1つだった。

しかし英国とEUの姿勢を見ると実現の可能性は薄く、金融機関は数兆ポンド規模の資産をロンドンからEU諸国の拠点へと移し始めている。ユーロ圏の国債取引も、1日約2400億ユーロ相当がロンドンからミラノやアムステルダムに移った。

それでもEU市場に直接アクセスできれば、金融業界にとっては国境を越えた取引が引き続き効率的に行えたり、2拠点を維持するコストを顧客に転嫁せずに済むといった利点がある。

EUが英国のアクセスを認めるためには、「同等性評価」制度に基づき、英国がEUとほぼ同等の規制体系を備えていると判断する必要がある。ところがEU離脱問題がきっかけとなり、EUは評価基準の厳格化に動いた。

欧州議会・経済問題委員会のシャロン・ボールズ元委員長は「同等であるなら何でも求めればよい。しかし、EUのほうから歩み寄る可能性はゼロだ」と断言する。

同等性評価制度は米国、シンガポール、日本など遠い国々の企業が利用するもので、EUのすぐそばの一大金融センターのために設計されたものではないし、銀行業など中核的な金融活動は範疇に入っていない。

英金融機関がEU離脱に向けた準備を進めた現在、EU市場へのアクセスを得る必要性はある程度薄れている。また、厳しいと感じているEUのルールから逃れたいと望んでいる機関もある。

例えば英保険会社は長く、EUの資本基準の硬直性に不満を抱いてきた。しかし英議員からの圧力にもかかわらず、域内国である以上、イングランド銀行(英中央銀行)はこれまで単独での基準変更を嫌がってきた。

法律事務所の幹部は「同等性評価の利点について、シティーの意見は1年前に比べるとずっと分断が進んでいる。今後の実際の姿を直視するようになったからだ」と言う。

EU離脱後に英EU間で漁業権から自動車まで、あらゆる分野で貿易交渉が待ち受けることを考えると、分断していて、一方で資金のゆとりはたっぷりある金融業界のために財務省がEUに対し市場アクセス権を求めていくインセンティブは弱いかもしれない。

<清算機関>

EUは、英国が10月に合意なしで離脱した場合でも、ロンドン証券取引所(LSE.L)傘下の清算機関LCHについては、混乱を避けるため今のところ、来年3月までは同等性評価に基づきユーロ建てデリバティブの清算を認める方針だ。しかし長期的には、どうなるかは不透明だ。

株・債券取引など現在EUの証券ルールの規制下にある投資銀行業務について同等性評価が与えられるかも定かでない。EUの市場監督機関は、「合意なき離脱」となった場合にはユーロ建て株式は域内で取引しなければならないとの判断を下している。

アクィス(AQX.L)、ターコイズ、CBOEグローバル・マーケッツ(CBOE.Z)など、ロンドンを拠点に欧州全体の金融商品を扱っている取引所は既に、アムステルダムとパリにも、EU域内の取引所に上場されている証券をEU域内の顧客が取引するための拠点を開設した。

ルクセンブルク・フォー・ファイナンスの代表、ニコラス・マッケル氏は「合意なき離脱」になればEU側が態度を硬化させるため、同等性評価が得られる見込みは薄くなると指摘した。そうなると、LCH向けの一時的な延長措置が見直しの対象になる可能性さえ出てくるかもしれない。

一方、クリフォード・チャンスの金融担当弁護士サイモン・グリーソン氏は、社債と国債の引き受けについては、EU側が突然、英国金融機関を切り捨てるのは難しいとの見方を示した。

<絵に描いた餅>

イングランド銀行と英金融行動監視機構(FCA)は市場アクセスについて、EU側の規制が永遠に押し付けられ、英規制当局の手が縛られるべきではないと主張。英政府もこれに同調している。

こうしたリスクを軽減するため、英国はEUに対し、同等性評価制度の透明性や予見性の向上を求めている。

しかしボールズ元委員長は、英国が望むような同等性評価の劇的改革を短期的にEUに期待するのは「絵に描いた餅」だと一蹴する。

まるで英国への注意喚起のように、EUはEUルールに従おうとしない一部の国に対し、同等性評価に基づく域内市場へのアクセスを初めて取り消したことを発表する予定。来週に文書で公表する見込みだ。英国は現実の厳しさを思い知らされることになる。

(Huw Jones記者)

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