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焦点:ブレグジット&ザ・シティ、英金融界は衰退するか
2017年11月28日 / 01:32 / 14日前

焦点:ブレグジット&ザ・シティ、英金融界は衰退するか

Andrew MacAskill

[ロンドン 20日 ロイター] - 2019年に欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、この国で最大級の成功を収めた産業に打撃を与えるのだろうか──。

金融サービスセクターは、英国経済生産の約12%を占め、他のどの産業よりも多くの税金を納めている。英国がEU離脱(ブレグジット)後、4億4000万人規模となるEU市場に対し自由なアクセスを失うことで、このセクターは潜在的に大きな損失を被る可能性がある。

数世紀にわたり「シティ」と呼ばれたロンドンの金融センターは、本来の中枢である「シティ・オブ・ロンドン」から、超高層ビルの建ち並ぶ東部のカナリーワーフ、そして豪華な集合住宅が集まる西部のメイフェアへと拡大してきた。

首都ロンドンは、世界の外国為替市場の頂点に立ち、国際的な債券やファンドの取引が行われ、世界中に存在するどの金融ハブよりも多くの銀行を集めている。

それだけにブレグジットの衝撃に対する脆弱性も高い。ロンドンの取引所やトレーディングルームで行われる取引の約3分の1には、EU域内のクライアントが関与しているからだ。

こうした状況から、一部の政治家やエコノミストは、ブレグジット後、ロンドンが金融センターとしての優越性を失うだろうと予言している。これに対して離脱支持派は、ルールを自ら定めることができるようになることで、長期的には英国に恩恵をもたらすと主張している。

ロイターはシティの運命を占うために、6つの指標を監視するトラッカーを作成した。公共交通の利用状況、バーやレストランの新規開店数、商業用不動産価格、雇用などを通じて、金融セクターの「定期健康診断」を試みるものだ。

「最初は、現在起きていることよる真の影響を評価することは難しい。非常に混沌とした状況になるからだ」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで銀行を中心に研究するトム・キルシュマイヤー教授は語る。「こうしたトラッカーは、現状の全体像を把握するのに役立つだろう」

英国が国民投票によってEU離脱を支持してから約17カ月が経過した。ロイターの指標は減速の兆候を示しているものの、激変と呼べるほどの衰えは見られない。

●商業用不動産価格

ロイターは、英不動産セクターの最大手、サヴィルズとナイトフランクから不動産データを得ている。サヴィルズは、シティ・オブ・ロンドン地区内で判明しているすべての不動産取引に基づいて不動産価値を計算しているという。ナイトフランクのデータは、オーナー、デベロッパー、不動産代理店から集めたものだ。

サヴィルズによれば、シティ・オブ・ロンドンの商業用不動産価格は、2016年6月の英国民投票の後、グローバル金融危機の最後の年となる2009年以降で最大の下げ幅を見せている。

シティ・オブ・ロンドン地区の不動産賃貸価格は、9月末時点で、前年の1平方フィートあたり77.6ポンドから73.4ポンドへと約5%の下落を示している、とサヴィルズは指摘する。

だが、サヴィルズで欧州商業不動産リサーチ部門を率いるマット・オークリー氏によれば、2017年第1・四半期から第3・四半期にかけて、シティ・オブ・ロンドン地区における賃貸活動は、長期的な平均値よりも17%多かったという。

ナイトフランクによれば、カナリーワーフ地区の価格は昨年に比べて変化していない。

サビルズのオークリー氏は、グローバル金融危機以降初めて、金融・銀行セクターが「(旧ドック地区であるカナリーワーフで)新たなオフィススペースを探すようになった」と話す。

●地下鉄利用客

シティ周辺の主な地下鉄駅であるバンク、モニュメント両駅間は、平日1日あたり20万人以上の利用客を記録し、ロンドンで最も混雑する駅となっている。

この両駅及び地下鉄カナリーワーフ駅の利用客数を調べるために、ロイターは公共交通を運営しているロンドン交通局に情報公開法に基づく公開請求を提出した。

ロンドン交通局のデータは、バンク、モニュメント両駅の利用客数が、グローバル金融危機以降初めて減少傾向にあることを示している。

両駅の2017年1─8月の乗降客数は、前年同時期に比べ2.7%減少した。それまでは2009年以降、毎年増加していた。

 11月20日、2019年に欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、この国で最大級の成功を収めた産業に打撃を与えるのだろうか。写真はロンドンの金融街シティで10月撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)

カナリーワーフ駅では、利用客数の増加が続いている。だがロンドン交通局のデータによれば増加ペースは鈍化しており、今年1─7月の増加率は2009年以来2番目に小さかった。

ロンドン交通局の広報担当者によれば、バンク駅の拡張に向けた多年度プロジェクトが2015年末に始まり、結果として一部のエスカレーターが一時的に閉鎖されたが、それによって列車の運行本数が減らされたことはないという。

●バーやレストランの新規開店数

ロイターはさらに、シティ・オブ・ロンドン自治体にも情報公開請求を提出した。今年の新規店舗によるアルコール類販売ライセンス申請の件数と、既存店のライセンス更新件数を調べるためだ。

今のところ、この部分ではブレグジットの影響は何も見られない。シティ・オブ・ロンドン自治体のデータによれば、2017年1─8月にシティ・オブ・ロンドン地区内でアルコール販売ライセンスを新規申請したバーやレストランなどの店舗数は、過去最高を記録している。

同自治体の職員によれば、その原因の一端は、ここ数年、同地区におけるナイトライフが多様化しており、いまや金融産業関係者向けの飲食提供に限定されていないからだという。

同自治体は「私たちはナイトライフの拡大する安全なシティを実現している」とコメントしている。

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●ロンドン・シティ空港

欧州各国の都市などへのフライトで企業幹部が愛用するロンドン・シティ空港の利用客数は、公開されている搭乗客数を見る限り、過去5年間で最も小幅な増加となっている。

カナリーワーフ金融地区に近い同空港の今年1─6月の搭乗客数は0.9%増加。過去4年間の平均では年10%増加している。

ロンドン・シティ空港は、2012年以来、過去最高の乗客増加ペースが続いていたが、ピーク時間帯の処理能力に限界があり、拡張を模索していると述べている。

●雇用数

人材派遣会社モーガン・マッキンリーによれば、今年、ロンドンの金融サービス産業での雇用件数は過去5年間で最大の減少を記録した。

金融産業向けのスタッフ雇用を専業とする同社によれば、データの基準は、同社が受託した人材募集の総数であり、これにロンドンの金融産業における同社の市場シェアに基づく係数を掛けている。

モルガン・マッキンリーによれば、今年1─7月の金融サービス産業による新規雇用の創出は5万1922人で、前年同期に比べ10%の減少となっている。これは2012年以来最も低い募集件数だ。

モルガン・マッキンリーでディレクターを務めるハカン・エンバー氏は、「ブレグジットをめぐる不確実性があるため、企業は自然に、雇用の拡大を計画、実行することを躊躇している」と語る。

<ロンドンから雇用流出はあるか>

ロイターが9月発表した国際金融分野で多くの雇用を担っている企業を対象とした調査によれば、英国が欧州単一市場に対するアクセスを拒否された場合、その後数年間で約1万人の雇用が英国から流出する、と想定されている。

400社以上の銀行や金融企業に対する緊急計画を検証したイングランド銀行のサム・ウッズ副総裁は、ロイターの調査結果に異論はないと語る。

調査によると、ブレグジットによる雇用減少の第1波は、業界ロビー団体や企業が試算した下限値になりそうだ。このことは、ロンドンが欧州大陸におけるトップ金融センターとしての地位を、少なくとも短期的には維持するということを意味する。

「この調査はおおむね正確に思われる」と副総裁は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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