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焦点:宙に浮く英離脱に苛立つEU、居座り警戒の声も

[ブリュッセル 4日 ロイター] - 欧州連合(EU)は、英国が国民投票で離脱を決定した後も「機能不全」に陥ってはいない、と主張している。だがブリュッセルの当局者からは、英国の今後が読みにくいことで、他のEU加盟国の立法プロセスを複雑にしているとの声が聞かれる。

 7月4日、欧州連合(EU)は、英国の離脱が決まった後も「機能不全」に陥っていないと主張するが、ブリュッセルの当局者からは、同国の不透明な情勢が、他のEU加盟国の立法プロセスを複雑にしているとの声が聞かれる。写真は6月、ブリュッセルのEU首脳会議前に国旗の位置を修正する男性(2016年 ロイター/Francois Lenoir)

英政府が、キャメロン首相辞任後の後継首相のもとで、EU単一市場に容易にアクセスできるような条件を求めて離脱交渉を開始するのは、恐らく数カ月先になろう。

EU当局者の一部は、英国が自国の立場を強化するために、EUの立法プロセスを妨害するのではないかと懸念している。

フェアホフシュタット元ベルギー首相は先週、欧州議会でのブレグジット(英EU離脱)問題に関する議論のなかで、「中途半端な状態を続けている余裕はない。英国がEUを人質にするような状況は許されない」と主張した。

英国に対しEU離脱に向けた2年間の交渉を開始するよう求める同氏の主張はEU本部で賛同を得ているが、キャメロン首相はその任務を9月に選ばれる次の保守党党首に委ねてしまっている。

保守党の党首選における有力な出馬予定者のなかには、公式のEU離脱交渉の開始となるEU条約第50条の発動を急ぐ必要はないとの声も聞こえてくる。英国民のなかには国民投票のやり直しを求める声もある。

「やや現実味が薄れている」と英国のある外交官は語る。欧州の各国首脳が第50条の発動前にEU離脱の条件を協議する可能性を否定しているため、EU当局者や外交関係者は何も手がつけられない状態だからだ。

EU本部周辺で広まっている冗談の1つに「シュレーディンガーの猫」がある。物理学者シュレーディンガーの思考実験による猫が「生きながら死んでいる」のと同様に、英国はEUに加盟していながら脱退しており、会議に参加していながら何も言わない、というわけだ。

英国は来年7月から6カ月間、EU閣僚理事会の議長国を務める予定だ。だが、この議長の座を引き受けるかどうかについてもキャメロン首相は後任者に一任するとしており、本格的な議題に取り組むには2年前から準備が必要だと考えるEU官僚を苛立たせている。

英政府の広報官による公式の見解は「離脱交渉が決着するまでは、我々はEUの一員であり続ける」というものだ。

とはいえ、EU離脱後の英国にとって無関係な事項(大半の事項が該当する)についてはほとんど発言権がなく、英外交関係者が話題にしているのは、たとえば来年のEU内の漁獲割当など短期的な事項だけであると英当局者は認めている。

「手詰まりの状態に陥っている」と前出の英外交官は語る。

<さらに厄介な英国の居座り>

法的には、英閣僚は今もEU理事会において、いくつかの主題に関する拒否権も含め完全な議決権を有しているし、定数751の欧州議会では、英選出の議員73人が引き続き議決に参加している。

だが、長らく英主導のもとで進められてきた気候変動対策に関しては、議会の要職にあった英選出議員がすでに辞任している。

二酸化炭素排出量削減の負担分散に向けて、今月成立が予定していた法案は、保留になる可能性があると複数の当局者は指摘。この通商ブロックにおける第2の経済大国である英国が離脱する時期(あるいはそもそも離脱の有無)も分からないまま、英国を除外した排出量合計を計算し直しているからだ。

「他の欧州議会議員から見れば、すでに信用を失っていると感じている」と英選出議員の関係者は話す。

EUの行政機関であるEU委員会においてブレグジットがすでに始まっていることは明確である。英国が指名したジョナサン・ヒル委員は辞任し、英政府としては、金融街シティのユーロ圏に対する立場を支援すると見られる金融規制について、その監視を行う重要なポストを失ってしまったことになる。

キャメロン氏の後継首相が新たな委員を指名することは依然として可能だが、重要なポストは期待できない。英国民投票の意外な結果に感情を害したEU当局者は、英政府が手にするのは「バレエ担当欧州委員」だろう、と冷笑する。

首脳会議レベルにおいても、30日には英国を除く27カ国の首脳が集まり、キャメロン氏は締め出される格好となった。今のところ、英国の出席なしに欧州理事会が法律を制定することはできないが、英国政府が第50条を発動させれば、離脱問題をめぐる協議から英国が排除されることになるため、27カ国による会合が常態となるだろう。

EU離脱は前例がないため、明らかに離脱に関する協議だけでなく他の議論(たとえば通商政策)からも英国を排除すべきかどうかは不明である。EUによる決定は、非加盟国としての英国にも影響を及ぼす可能性があるからだ。

一部の国にとってさらに問題なのは、次の首相次第だが、英国が第50条を発動させず、自国に有利な条件による交渉を強要する手段として、EU加盟国としての権利を利用するかもしれないことだ。

「そうなればひどく厄介なことになる」とEUの上級官僚は言う。英国がEUの各理事会を人質に取るような状況を懸念しているのだ。

だが、各加盟国が拒否権を持つ事案は、もはやそう多くない。EU特使の1人は次のように警告する。「英国が問題を起こすならば、非常に冷酷に、多数決による決定が適用されるだろう」

別の上級官僚は、もし英国が年内に第50条を発動せず、交渉を強要するためにEU内で妨害行為に及ぶのであれば、EUは司法面での選択に目を向ける可能性があると述べている。

この当局者は、加盟国の「誠実な協力」を要求するEU条約第4条を引用し、「もしある加盟国がシステムを麻痺させるのであれば、法的に(協力を)義務づけることができる」と言う。とはいえ、彼もこうしたEU本部からの警告がさほど重みを持たないことは認めている。

<欧州議会が抱える問題>

欧州議会も、ブレグジットには頭を抱えている。先週、欧州委員会のユンケル委員長は、英選出の離脱派議員に対し、「あなた方はなぜここにいるのか」と質問した。

ドイツ選出のシュルツ議長は、欧州議会の議員たちに対し、第50条に基づく離脱交渉が始まっても、離脱が完了するまでは英選出の議員たちの権利に何ら変化はないと語った。

だが、欧州議会の議員であることによる形式的な権利はほとんどない。その影響力は、委員会のポストを占めること、すなわち立法を通じたEU運営によって得られるものだ。

委員会のポストは多国籍のグループのなかで配分されており、レイムダックと化した英選出議員は、遅くとも12月に予定されている中期的な委員交代の時点で、同じグループに属する他国選出議員にポストを譲らねばならないかもしれない。

欧州議会における保守会派のリーダーである英選出のサイード・カマル議員は、自らのチームは平常通り機能していると述べる一方、「第50条が発動されたら、離脱以後に発効するような法制についてどのように取り組むべきか考える必要があるかもしれない」と付け加えた。

英選出の欧州議会議員がどのように行動するにせよ、そのスタッフのあいだでは、すでに離脱を織り込んだ動きも表われている。第2議員秘書の1人はロイターの取材に対し「転職活動をしている。何か良い話はないかな」と語った。

( Alastair Macdonald記者、Alissa de Carbonnel記者、翻訳:エァクレーレン)

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