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焦点:スコットランド独立派の「根拠」、前回投票と何が違うか
2017年3月26日 / 00:33 / 8ヶ月後

焦点:スコットランド独立派の「根拠」、前回投票と何が違うか

[エジンバラ 21日 ロイター] - スコットランドが英国からの独立をめざす経済的な根拠はかつて石油だったが、現在は資源確保よりも貿易がこの地域の将来的な繁栄を確保するとの主張が高まっている。それにより英国の欧州連合(EU)離脱によるダメージを回避できるというのだ。

  3月21日、スコットランドが英国からの独立をめざす経済的な根拠はかつて石油だったが、現在は資源確保よりも貿易がこの地域の将来的な繁栄を確保するとの主張が高まっている。写真はスコットランドの旗。アバディーンで2016年6月撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)

輸出の3分の2が英国内向けであるスコットランドにとって、国際的な貿易大国に変身することは容易ではない。2014年に実施した住民投票で独立が否決された後、世界的な石油価格の急落によりスコットランド経済が打撃を受けただけに、なおさらだ。

スコットランド自治政府を率いるスコットランド国民党(SNP)は新たな住民投票の実施を目論んでいるが、300年続く英国連邦の解体に反対する人々は、再び住民の分断を招くキャンペーンや不確実性の増大に耐える余裕が現在のスコットランド経済にはないと主張する。

だが企業経営者のニアル・マクリーン氏のような人々は、44年間加盟していた通商ブロックとしてのEU離脱に向け、英国が交渉準備を進めている今、不確実性はいずれにせよ避けられないと言う。

「その不確実性を突き詰めれば、自分がどこにいたいのかを考えざるを得ない」とマクリーン氏は言う。「独立によって、EU市場に引き続き自由にアクセスする道が開け、貿易を推進することができる。ブレグジットはその逆だ」。独立賛成派グループ「ビジネス・フォー・スコットランド」の諮問委員会メンバーでもある同氏はそう語る。

マクリーン氏が経営するジオロープという企業は、英国及び欧州大陸に土木関連サービスを提供している。EUは市場としてだけでなく、人材の供給源としても必要だという。社員200人には他のEU諸国の市民が数多く含まれているが、離脱後の英国で働き続ける権利があるかは依然として不透明だ。

EU離脱を決めた昨年6月の英国民投票によって政治状況は変化した。英国で最も人口の多いイングランドは、ウェールズとともに、EU離脱を選択。スコットランドと北アイルランドの住民は残留を望んだ。

スコットランド自治政府首相を務めるSNPのニコラ・スタージョン党首は、ブレグジットによって、英国がかつて提供していた確実性は崩壊したと言う。

多数の意志に反してEUから離脱させられる状況に直面している今、スコットランド住民に新たな選択機会を与えるべきだと彼女は主張する。英国から独立することによって、スコットランドはブレグジット後もEUに(あるいは少なくとも統一市場に)留まる機会を得ることになる。

英国のメイ首相は、拘束力のある住民投票が行なわれれば承認せざるを得ないだろうが、今は「それをやるべきときではない」と述べている。だがスタージョン氏は、来年秋から2019年春にかけての時期に住民投票を実施する方向でプレッシャーを高めている。

<どの市場を重視するか>

SNPは2014年のキャンペーンで、英国の国庫に納められている北海油田からの税収は、独立を果たしたスコットランドに属するべきであり、500万人の住民が豊かになるための緩衝材だと主張した。

だが結局、スコットランド住民の過半数は、最大の貿易相手と通貨ポンドを捨てることに意味を見いだせなかった。その後、石油価格が1バレル100ドルから半減し、北海油田による税収崩壊とともに、東岸都市アバーディーンを中心として、北海油田事業を支えるスコットランド地域に打撃を与えた。

スコットランド独立派も英国残留派も、どちらも貿易の拡大を望んでいる。意見が割れるのは、どの市場を重視するかという点だ。

スコットランドの人口は英国全体の8%で、年間の経済生産は1500億ポンドだ。500億ポンド(620億ドル)相当の財・サービスを英国の他地域に販売している。スコットランド自治政府のデータによれば、2015年には、スコットランドからの輸出のうち英国内向けが63%を占め、他のEU加盟国向けはわずか16%にすぎなかった。

「われわれもそれに同意するが、もしスコットランドの誰もが、欧州との自由貿易が重要だという点に同意するなら、英国の他地域との貿易はその4倍も重要だということを否定するのは文字通り不可能だ」。  スコットランドでメイ首相が率いる保守党を代表するルース・デビッドソンは、今年初め、このように語った。

この見解は、分裂するスコットランドのビジネス社会においても、多くの人々が共有している。

スコットランドの貿易において、石油はもはや支配的な地位にはない。2015年、石油及び石油化学製品の国際輸出産業としての規模は第3位で、28億ポンドの収益をあげた。対照的に、スコッチウィスキーを含む食品・飲料の輸出は48億ポンドに達している。

 3月21日、スコットランドが英国からの独立をめざす経済的な根拠はかつて石油だったが、現在は資源確保よりも貿易がこの地域の将来的な繁栄を確保するとの主張が高まっている。写真はスコットランド自治政府を率いるスコットランド国民党のニコラ・スタージョン党首。18日、アバディーンで撮影(2017年 ロイター/Russell Cheyne)

もし再び住民投票を行なう場合、SNPの経済予測では石油生産による税収を計算に入れないことになると同党の経済戦略担当者は語る。

ほとんどの先進諸国と同様に、スコットランドにおいても、はるかに規模が大きいのはサービス部門であり、同地域GDPの75%を占めている。そのなかには、観光や、エジンバラを中心とする大規模な金融業、そしてジオロープのような企業が含まれている。

SNPは、独立を機にスコットランド企業が隣接する英国市場に背を向ける可能性を否定している。

スコットランド自治政府のキース・ブラウン経済長官は、カナダからの輸出の75%が米国向けであることを例に挙げる。「独立反対派は、カナダにとって最大の貿易相手国が米国だから、カナダは独立できないとでも言いたいのだろうか」と同長官は問いかける。「もちろん、そうではない。彼らの主張は不合理なナンセンスだ」

<EUへの窓口>

ブレグジットの長期的影響については、エコノミストのあいだでも意見が分かれているが、オックスフォード大学のサイモン・レンルイス教授(経済政策論)は、2030年までに英国国民の平均所得は10%低下する可能性があると試算している。

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「スコットランドが独立によってそうした悪影響を回避できるならば、それは明らかに長期的な経済メリットだ。しかしそれだけではない。もしスコットランドが(EU)統一市場に残留できれば、かつてはEUへの玄関口として英国に流入していた外国からの投資が、今度はスコットランドに向かう可能性がある」と同教授は指摘する。

独立したスコットランドが通貨として何を使うのかという問題は依然として不明だ。2014年の住民投票では、SNPは英ポンドを使い続けることを提案していた。ただし、これでは暗黙のうちにイングランド銀行に依存することになり、英国当局も否定的だった。

スタージョン首相は、ポンドの使用が独立スコットランドの「出発点」だと発言している。イングランド銀行のキング元総裁は、ポンドを通貨として使用することが大きな困難を招くとは思わないと述べる一方で、公共財政という別の問題を指摘する。

<財政赤字>

2014年以前、スコットランド経済は数年にわたり、英国全体のGDPと同じペースで成長してきた。だが、この年に石油価格が下落して以来、事情が変わった。2016年の第3・四半期には英国経済が前年同月比で2.2%成長したのに対し、スコットランド経済はわずか0.7%の成長にとどまっている。

2016年3月までの会計年度において、スコットランドの財政赤字は150億ポンドと試算されており、これは年間GDPの約10%に相当する。EU加盟国は、財政赤字をGDPの3%に抑えるよう求められており、英国の同割合は3.8%となっている。

経済シンクタンク、フレイザー・オブ・アランダー研究所の研究員で、スコットランド議会の顧問を務めるデビッド・アイザー氏は、独立スコットランドは厳しい問題に直面するだろうと語る。

「これだけ大きな赤字をどうやって埋めるのか。デジタル経済など、現状では課税されていないタイプの経済活動があるのだろうか。公的支出で大幅削減できる部分があるだろうか」と彼は問いかける。

スコットランド企業は、EU域内で労働者が移動の自由を維持することに執着している。高齢化と人口減少の影響を軽減できるからだ。スコットランドで生活する他のEU加盟国の市民は約18万1000人で、人口の約3.4%に相当する。

3分の1はホテルやレストランで働き、約2万人が約140億ポンドの規模を誇り、多くは周辺地域に立地する食品・飲料部門に雇用されている。

英国、フランス、オランダ出身のドライバー約450人が働く輸送物流企業を経営するトム・バリー氏は、「自由貿易と労働者が移動する自由がなくなれば、私の事業にとっては損失だ」と言う。彼はスコットランドの独立を支持するが、ポンドを使い続けることを望んでいる。

バリー氏は、英国政府との間で貿易障壁の発生を回避する協定を結ぶことができると信じていると語り、ユーロを使用するアイルランド共和国と英領北アイルランドの国境開放を例に挙げる。「アイルランドでは、通貨は2つだが、国は1つで、国境はない。私はよくアイルランドを訪れるが、あの島では生活に悪影響は生じていない」

(翻訳:エァクレーレン)

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