[ロンドン 3日 ロイター] - ロンドン市場は取引低迷やバリュエーションの低さにより、上場先としての魅力を失いかねないと一部の投資家や金融機関幹部は指摘する。
ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計会社アームは3日、株式上場計画について、今年は米国のみの上場を目指すと表明。同社がロンドン市場に復帰することを望んでいた英政府の期待は崩れた。
投資顧問会社ベレリオン・キャピタルの創業者、イアン・マクドナルド氏は「アームがニューヨークを上場先に選んだことに全く驚きはない。他の多くの企業、特に事業の大半を米国で展開する企業は追随するだろう」と述べた。
アイルランドのダブリンを拠点とする建設資材会社CRHも2日、プライマリー上場先をロンドンから米国に移す計画を明らかにした。
AJベルの財務分析責任者、ダニ・ヒューソン氏は「米国で多くの事業を展開する企業にとっては理にかなった動きだが、世界的な金融ハブとしてのロンドンの能力に対する不満の高まりも暗示している」と述べた。
またマクドナルド氏は、アームのような企業は米国に上場しなければ「資本力と評価がより高い米国の競合他社に買収されるだけだ」とし、英国における市場流動性と成長企業への支援の低下を指摘した。
投資銀行関係者によると、IPOを誘致する上で英国が抱える問題は、ロンドン上場企業のバリュエーションが米国上場企業よりも低いことが一因という。
米国のS&P総合500種採用企業の1年後業績予想に基づく株価収益率(PER)は17倍。これに対して英FTSE全株指数採用企業のPERは11倍程度で、この差は過去10年間で拡大した。
調査会社ディーロジックのデータによると、2022年の上場を通じた企業の調達総額のうち、ロンドン市場が占める割合はわずか1.1%で、ランキング13位だった。中国と米国がトップ。
23年は現時点でロンドンは21位。中国が再び首位に立っている。
ただ、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)がまとめたデータでは、ニューヨーク市場に上場した英企業は必ずしも期待通りの順調な結果を得られていないことがうかがえる。
LSEGの集計によると、過去10年間に米国で上場した英企業22社の株価は平均38.6%下落している。
<野心的な改革>
英国は依然として世界有数の金融センターで、多くの主要な国際機関の本部、世界最大の外国為替取引所、時価総額で欧州最大の証券取引所の一つを擁している。
しかし、アームの決定は上場先としての英国の魅力を高めるための当局への警鐘となるべきだと、ロンドン証取のジュリア・ホゲット最高経営責任者(CEO)は指摘。
「成長を促進するために利用可能なリスク資本の量に対処することを含め、規制と市場改革の課題を迅速に進展させる必要性を示している」と語った。
(Alun John記者、Pablo Mayo Cerqueiro記者)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」