May 14, 2018 / 5:54 AM / 6 months ago

アングル:マークルさんの王室入り、英国黒人社会はどう見る

[ロンドン 8日 ロイター] - 弁護士のゲイル・ウォルターズさんは、普段はほとんど英王室のことを気にかけないが、それでも米国人女優メーガン・マークルさんとエリザベス女王の孫であるヘンリー王子の結婚は、英国の黒人社会において重要な瞬間になると感じている。

 5月8日、弁護士のゲイル・ウォルターズさんは、普段はほとんど英王室のことを気にかけないが、それでも米国人女優メーガン・マークルさんとエリザベス女王の孫であるヘンリー王子の結婚は、英国の黒人社会において重要な瞬間になると感じている。写真は1月、ロンドン南部ブリクストンを訪問するマークルさんとヘンリー王子(2018年 ロイター)

「重要なのは当たり前。黒人が結婚して英王室に入るという事自体、これまでなかった広がりと多様性と包摂を意味すると思う」と、ロンドン南部ブリクストンで買い物をしていたウォルターズさんは話した。

「私は生まれで支配が決まるとは思わないので、やはり王室は支持しない。それでも今回の結婚の象徴的意味合いは理解できるし、とても影響力がある」

英王位継承順位6位のヘンリー王子と、白人の父親とアフリカ系米国人の母親との間に生まれたマークルさんの結婚は、英国がいかに平等主義的で、人種の共存が進んだ社会になったかを示すものとして歓迎されている。

わずか60年前、離婚経験者との結婚は英王室で容認されるものではなかった。また、カトリック教徒と結婚しても王位継承権を失わずに済むようになったのは、つい2013年のことだ。

したがって、英国人の心理に大きなシンボル的影響力を持ち、白人しかいなかった王室にマークルさんが入ることの意味は、過小評価されるべきではないと、英国の人種やアイデンティティーなどに関する著書があるアフア・ハーシュ氏は言う。

「英国で育つ若い世代が受け取るメッセージに大きな変化が生じる。黒人らしさと英国らしさは水と油だという考え方にとっても(大きな変化)だ」と、ハーシュ氏は話し、こう付け加えた。

「もし私がもっと若かったなら、これが自分の国だと感じる正当性と自信という面で、心理的にも大きな影響を受けていただろう」

<血の川>

ヘンリー王子とマークルさんの結婚式は、英国で人種問題が注目を集める中で行われる。

先月は、黒人ティーンエージャーのスティーブン・ローレンスさんが白人の人種差別主義者に殺され、ロンドン警察当局の捜査の不備が「組織的人種差別」と調査で指摘された事件から、25年の節目だった。

また、保守党のイノック・パウエル議員が、いわゆる「血の川」演説で「黒人が白人に対してムチを握るようになる」と述べて移民排斥を訴えてからちょうど50年にあたる。

英政府はまた、第2次世界大戦後にカリブ海地域の英領(当時)から英国に招かれ移住したものの、その後必要な公的書類や基本的人権を得られずにいた「ウィンドラッシュ世代」と呼ばれる移民の子孫の扱いを巡るスキャンダルに揺れているところだ。

母方の祖先が奴隷だったマークルさんは、ヘンリー王子と共に、ローレンスさん追悼式典に参列。また、パウエル議員の時代からいかに社会の態度が変化したかについての論評も数多く見られた。

だが、ウィンドラッシュ世代を巡るスキャンダルが、真実を示していると話す人もいる。

「(今回の結婚に)意味はない。社会的な意義の上では、ないも同じだ」と、バーミンガム・シティ大学のケヒンデ・アンドリュース社会学准教授は言う。アンドリュース氏は、人種差別は「紅茶と同じぐらい英国的」だと話す。

「英国の白人主義の最高のシンボルに、ちょっとコーヒーがかかったからと言って、何を祝福することがあるというのか。今回の結婚を巡る報道で感じる問題点はそこだ。王室は制度だ。そこに黒人の顔が1つ、とても明るい肌色のきれいな黒人の顔が1つ加わったところで、制度は変わらない」と、同氏は話した。

シンクタンク「英国の未来」が先月行った調査では、英国人のほとんどがマークルさんの人種に注目しておらず、大半が歓迎していることが示された。

しかし、調査に回答した人の12%が、複数の人種の血をひく人が王室に入るのは良くないと回答。25%が、自分の子どもが異なる人種の人と真剣交際したり結婚したりすることに不安を感じると答えた。

また、マイノリティー(社会的少数派)の33%が、ローレンスさん殺害事件のころと同じぐらい人種的偏見は強いと回答。イスラム教徒であるロンドンのカーン市長は先月、テレビインタビューの中で、英国のほとんどの組織が「組織的な人種差別の問題」を抱えていると発言した。

<コンプトン直送>

ヘンリー王子との交際が報道され始めた当初から、マークルさんの人種的背景は注目を集め、それはポジティブなものばかりではなかった。2016年11月、ヘンリー王子はメディアを批判する異例の声明を出し、一部の記事に見られた人種的偏見を含む論調を非難した。

マークルさんの母ドリア・ラグランドさんが住む米ロサンゼルス近郊の町に関する記事の見出しは、このようなものだった。「ハリーの彼女は、(ほぼ)コンプトン直送。ギャングはびこる母親の自宅発見」

また、ジョンソン英外相の妹で文筆家のレイチェル・ジョンソン氏は、マークルさんが「豊かで別世界のDNA」を英王室にもたらすと書いた。

昨年11月の婚約発表時のテレビインタビューで、このようなメディアの関心について聞かれたマークルさんは、「落胆させられた」と述べた。

「でも私は、最終的には自分や自分の出自をとても誇りに思っている。私たちは、それに特別関心を払ったことはない。カップルとしての私たちの在り方にしか関心がない」と、マークルさんは語っていた。

前出のウィンドラッシュ世代の移民の多くが移り住み、黒人人口が多いロンドン南部のブリクストンのマーケットで今回の結婚について意見を聞くと、ほとんどの人が前向きに受け止めており、バラク・オバマ氏が米国初の黒人大統領になったことと関連づける人もいた。

このような反応は、2人が婚約後の今年1月にブリクストンを訪れた時の温かい歓迎ぶりにも見られた。ブリクストンは、1981年の人種暴動以降、荒廃した大都市圏の地区の代名詞のような存在となっていた。

「彼女のような人が王室に入るのは、この国にとって良いことだと思う」と、交通機関で働くノエル・デービスさん(60)は話した。

リアンヌ・フレミングさん(23)は、「彼女が多様な人種の血をひいているということで、特にエキサイティングになると思う。本当は、そんなに重要視されるべきことではないはずだ。でも歴史的背景を考えると、『本当にこれが実現するのか』といった反応も出る。そういう反応をしないですむのが本当だとは思うけれど」と話した。

前出のハーシュ氏は、若者たちがマークルさんを尊敬していると話す。

「彼らは今回の王室の婚礼に、過去にはなかったような関心を持っている」とハーシュ氏は話し、「なぜなら、自分たちや身の回りにいる人に似ている人(が当事者)だからだ。自分たちの親戚に似た母親を持つ人だからだ」と、説明した。

一方で、アンドリュース氏らにとっては、今回の結婚は現実がいかにひどい状況にあるかを示すものにほかならない。

「マークルは英国の『オバマ・モーメント』ではないし、そう扱われるべきではない。王子に選ばれることは、民主主義ではない」と、作家のレニ・エッドロッジ氏は、婚約発表直後にそうツイートした。

「人種差別があまりにひどく、あまりにも歴史的であまりに根深いため、私たちは(そうではないものは)どんなものでも求めてしまう」とアンドリュース氏。「だから、良い意味を持つと思われるシンボルを、持ち上げすぎてしまう。だが落ち着いて何が起き、何が変わったのかを分析すれば、(今回の結婚には)まったく意味がないことが分かる」

「根深い人種差別や失業と同様、王室はわれわれが直面する深刻な問題の一部だ。彼女は、問題の一部になるのであり、解決策になるのではない」と同氏は付け加えた。

しかし、ブリクストンの街を歩く人々の多くにとって、人種は今回の結婚の最も重要な点ではない。

「2人が愛し合っているとき、王室出身か一般人かは関係ない。愛こそが大事だ」と、最初に登場したウォルターズさんは話した。

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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