[上海 30日 ロイター] ほぼ1年ぶりに新規株式公開(IPO)が再開された上海株式市場では今週、新規上場した2企業の株価が急伸したことで、投機抑制のために最近講じられた改革の実効性に疑問符が付いたほか、当局は引き続き、資産バブル対策で苦慮する可能性も出てきた。
IPOは10カ月ぶりに再開されたが、新規上場株は乱高下。企業の資金調達を支援し、世界有数の株式市場を目指すため、市場の安定化を確立するという期待も後退している。
海通証券(上海)のシニア株式アナリストは「最新のIPO改革は当初の目的を達成することに失敗した。政府は市場を冷やすため、新株の供給を増やすなどの一段と措置を講じる可能性が高い」と述べた。
有料道路運営会社の四川高速道路601107.SS0107.HKは上場初日の27日、2度の売買停止措置をはさみ、ザラ場で公開価格の4倍以上に急騰した。
株価上昇により、同社の株価収益率(PER)は最大61倍に跳ね上がった。上海や深セン株式市場に上場している同業15社の平均PERは19倍だ。
同社は上場初日の急騰後、3日間にわたり株価はストップ安の10%ずつ下げ、ようやく落ち着いた。初日に買った投資家は損失を出した向きもいるだろう。
建設大手の中国建築工程総公司(CSCEC)601668.SSも上場初日の29日、株価が一時90%高となり、PERは業界平均が26倍であるのに対し、50倍となった。
同社は前週、過去1年で世界最大規模のIPOを実施し、73億ドルを調達した。30日の株価は6.3%高の6.94元で引けたが、アナリストの間では5元程度が妥当な株価との見方が多い。
<迫る危機>
銀河証券(上海)のシニアアナリストによると、過剰な投機により、中国株は、2006年と07年当時と似たバブルに発展する危険性がある。当時のバブルは08年に上海総合指数が約70%下落する形で崩壊した。
国海証券(深セン)のマネーマーケット・アナリストは「大量の流動性主導で資産価格が急伸しており、リスクが高まっている。しかし、監督当局は困難な状況に直面している。景気回復の兆しが出始めたばかりで、実際の金融引き締めは少なくとも第4・四半期まで待たなければならない」と指摘する。
今年上期の中国の銀行貸出は過去最高を記録し、国内で資産バブルが発生する可能性が懸念されている。融資の一部が株式・不動産市場に流入しているほか、海外からの投機的な資金流入も増えているもようだ。
バブルを抑制するため、政府が融資抑制措置を講じる可能性が出てきたため、29日の上海総合指数は5%急落し、8カ月ぶりの大幅下落率を記録した。
同指数は年初来90%上昇しており、株価のバリュエーションは企業収益からみた妥当な水準を大幅に上回っているとの懸念が強い。
しかし中国当局は、直ちに金融引き締め策を実施することはないとの見解を示している。
中国人民銀行(中央銀行)の蘇寧副総裁は29日、「適度に緩和的な金融政策を断固として維持し、経済の回復モメンタムを強固にしていく」と述べた。
<監督当局の期待>
中国はIPO再開に伴い、大きな株価変動の際に取引を一時中断するサーキットブレーカー措置などの導入により、新規上場株の投機的な取引を抑制したい考えだった。
株価操作を防止するため、大手投資家向けのIPO株の配分を制限するなどの措置も講じた。
しかし、四川高速道路とCSCECの両社の上場初日、市場全体の売買高に占める比率がそれぞれ90%と70%となった。機関投資家や富裕個人投資家が発行市場を独占し、個人投資家は新株を流通市場で買わざるを得ず、IPOでは依然投機熱が冷めていないことが浮き彫りになった。
また、株式の先物やオプションのデリバティブ取引などの投資手段がないことも希少株への投資を過熱化する要因になっている。
(ロイターニュース 原文 Lu Jianxin、Edmund Klamann、翻訳:宮本 辰男)