for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

モメンタムで買えない中国関連株、先行きに懸念も

 水野 文也記者

 8月27日、モメンタムで買えない中国関連株、バルチック指数下げ先行き懸念も。写真は都内の株価ボード前。先月14日撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)

 [東京 27日 ロイター] 中国の景気に対する不安が台頭し、関連企業の収益回復に水を差すとの懸念が生じている。中国向け鉄鉱石の運搬需要が伸び悩むなど、足元で不透明な事象が増えてきたのが理由。

 その背景には、過剰な需要を抑制するために当局が施策を打ち出している点が挙げられており、中国景気が失速することはないまでも、過大な成長期待は後退し、関連銘柄をモメンタムでは買えなくなりつつあるとの見方が浮上している。

 8月上旬から下げに転じていた上海総合株価指数は、このところ下げ渋り落ち着きを取り戻したものの、株式市場関係者が中国景気の指標とみている、ばら積み船運賃の総合指数であるバルチック海運指数には底打ち感が出ておらず、中国景気の先行きに対する不安感が消えていない。

 バルチック指数は、6月3日に4291ポイントで天井を形成した後、下降トレンドを形成しており、現在は2400ポイント近辺での動きとなっている。

 市況低迷の理由として市場関係者が挙げているのが、中国当局による抑制策だ。過熱した鉄鉱石のスポットマーケットを沈静化するために、当局は鉄鉱石輸入の政府認可を受けているブローカーの約2割について、認可取り消しを検討しているという。市場では、鉄鉱石の年間価格の値下げ交渉が軟化した経緯から、抑制策を打ち出したとの見方が出ている。

 8月中旬までの中国株の下落に関しても「上半期で(中国の)景気回復が確認され、新規融資などの金融緩和が、不動産や株式など資産価格急騰につながったとの指摘も少なくないため、過熱抑制の政策の観測に敏感となった」(みずほ証券アジア・株式調査部長の小原篤次氏)との指摘があった。

 <中国経済の急減速にはつながらず>

 ただ、このところの株価下落や海運市況の下落は、こうした当局の抑制策による要因が大きく、先行き中国の成長がリーマンショック時のように失速し、需要が急速に減退することはないとの見方が多い。

 三菱UFJ証券・運輸担当アナリストの姫野良太氏は「バルク市況の軟化は、中国の実需が衰退したためではなく、鉄鉱石スポットマーケット沈静化の動きが影響している可能性がある」と指摘する。

 三井住友アセットマネジメント・チーフストラテジストの山岸優氏は「当局の抑制策によって、中国景気は減速しているような感じと目に映っている。しかし、実際のファンダメンタルズに関して成長のトレンドには変わりはなく、巡航速度で伸びて行くというイメージだ」とコメントしていた。

 もっとも、4─6月期の業績回復に中国向けの伸びがプラスに貢献した日本企業にとって、中国の抑制策は影響を及ぼす。これまでは、中国向け輸出の急増が材料視されていただけに、当面は過度な期待感が持てなくなるためだ。

 三菱UFJ証券の姫野氏は「中国関連として海運株はモメンタムでは買えず、ここからは収益実態に見合った形で評価されるようになる」とした上で「26日にバルチック指数が反発。従来なら、海運株が一斉に買われる材料だが、今日はそうならなかった。投資家は、足元をじっくりみるようになっているのではないか」と指摘していた。

(ロイター日本語ニュース 水野 文也記者 編集 田巻 一彦)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up