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海外に目向ける建設業界、高リスク覚悟で注目する新興市場

水野 文也記者

 4月9日、高いリスクを覚悟の上で展開する市場として、成長力の高さが目立っている新興国への進出を掲げるゼネコンが相次いでいる。写真は川崎の工業地帯で、1月14日撮影(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 [東京 9日 ロイター] 建設業界が収益源として海外に目を向け続けている。公共事業の大幅削減など国内市場の先細りを予想し、海外市場で勝負するとの発想だ。

 だが、大林組1802.Tがドバイでの工事で巨額損失を計上するなど、ビジネスモデルの転換を現

実の収益向上に結び付けるには高いハードルが控えている。高いリスクを覚悟の上で展開する市場として、成長力の高さが目立っている新興国への進出を掲げるゼネコンが相次いでいる。

 <中東で巨額損失のケースも>

 2010年度政府予算は総額92兆2992億円と過去最大の規模となったものの、公共事業関係費は18.3%減の5兆7731億円と大幅に減少し、建設業界に冷たい風が吹いている。民需も依然として不透明感が強く「ここ1─2年、民間工事は厳しい状態が続く」(清水建設の黒澤成吉専務)と、ゼネコン各社は成長機会を海外に求める傾向が出てきた。

 だが、国内市場との慣習の違いや環境変化などから損失を計上し、海外で収益を稼ぐといっても、簡単にはいかないと業界関係者に思わせるケースも相次いでいる。2008年3月期に大成建設1801.Tは、海外工事に関し遅延の影響などから巨額の損失を計上。2010年3月期予想に関して大林組1802.Tが3月24日、他社と共同で受注したアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ道路交通局からの受注による都市交通システム工事で、巨額の損失が発生して営業損益が赤字に転落する下方修正を発表した。同社の営業赤字は1958年の上場以来、初めてだった。

 大林組のドバイにおける同工事は05年7月に受注。その後、資材費や労務費が急騰したことに加え、想定を大きく上回る規模の設定変更があったことから、竣工までに要する工事原価は当初見込み額の3倍に達する見通しになったという。契約に際しエスカレーション条項(物価調整条項、インフレに対して請負金額の増額が認められる権利)を盛り込ず、コスト管理の甘さも要因になっていた。

 それでも、中長期的に縮小が見込まれる国内建設市場を踏まえれば「(大林組の損失は)高い授業料になったものの、ゼネコンにとって成長市場として海外を避けて通れない」(野村証券・建設担当アナリストの小松善明氏)という見方も出ている。今後も海外展開を続ける大林組の白石達社長は3月24日の会見で「国内は公共事業が削減される方向にあり、その部分の経営資源はリストラか海外に行くしか道はなく、海外に行くことを選択した」と語っていた。 

 <急増する中国の建設関連需要>

 最近になってコマツ6301.Tは、2010年3月期の中国における建設・鉱山用機械の売上高を2300億円から2500億円に引き上げたが、その背景には1─3月における建設機械の販売台数が前年同期比6─7割増のペースで推移していることがある。11年3月期も中国向けは「4─9月に少なくとも20─30%増、カレンダーベース(1─12月)でみても20─30%増はいくと思う」(野路国夫社長)としている。その分、建設工事現場は増える方向にあり、国内で展開していた建機レンタル会社も「07年に上海へ中国企業と合弁で進出し、現地で必要な建機を用意する体制を整えた。この会社は新たな決算期から連結対象とする」(カナモト9678.Tの中山雄一・社長室広報課長)と、ビジネスチャンスを求めて動いている。

 このように中国での建設関連市場は広がる方向だが、ゼネコンが中国に食い込むのは、そう容易な話ではないようだ。今後の海外展開について大林組では、リスク管理能力の向上を図るとともに、米国、台湾、タイ、シンガポール、豪州などリスク管理がこれまでの経験から十分できる地域での推進を図るとしていたが、そこに中国は含まれていない。

 現地の事情に詳しいみずほ証券アジア・エグゼクティブディレクターの小原篤次氏は「中国側のゼネコンは国営企業であるため、ODA(政府開発援助)が競争の初期条件となる東南アジアのプロジェクトと違うという認識が必要だ。その上に今どきオールジャパンでは相手にされず、中国企業を参加させるかなども課題になる」とコメントしていた。また、小原氏は「技術力・納期が日本の武器になるのではないか。世界一や最高級に関心が高い中国で、耐震技術、コージェネレーション(熱電併給)、ルーフガーデンなどの技術をアピールできれば、上海などの富裕層に受け入れられる余地がありそうだ」としている。

 <技術力の差出る難工事で本領発揮も>

 他方、カナモトの中山氏は「地下鉄工事が活発する上海は土壌が良い。これに対して従来路線が縦横に走る上に地質も複雑で難工事が予想される香港の方が、イメージとして日系のゼネコンが(上海よりも)食い込みやすい」と指摘。大林組が今後の展開地域に挙げた台湾については「地震多発地域でかつ地質が複雑。日系企業が得意とする免振技術やシールド工法による地下工事化といった技術優位性が発揮しやすい」(三菱UFJ証券・建設担当アナリストの水谷敏也氏)との指摘があるなど、難工事が想定できる地域であれば、国内ゼネコンに活躍の余地が大きいとの声が出ている。

 日本の製造業の技術的優位性について疑問が持たれ始める中、ゼネコンの海外展開についても、リスク管理の徹底と同時に、持てる技術をいかにアピールしていくが問われることになりそうだ。

(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

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