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日本の景気回復力に黄信号、中国経済にもリスク浮上

 [東京 8日 ロイター] 日本経済の回復力にかげりが見え始めた。輸出の鈍化や政策効果のはく落、世界的な金融市場の混乱を背景に、鉱工業生産や機械受注など想定より弱めの指標が目立っており、政策当局や民間エコノミストからは景気回復力の持続性を疑問視する声が増えている。

 7月8日、機械受注など想定より弱めの指標が目立っており、景気回復力の持続性を疑問視する声が増えている。写真は都内で6日撮影(2010年 ロイター/Yuriko Nakao)

 輸出鈍化の背景には予想されていた欧米景気の停滞に加え、過熱抑制策による中国経済の減速も指摘されており、中国経済の持続的成長の実現に向けた舵取りが注目されている。 

 <足元の上振れ続かないとの見方、景気変調に警戒> 

 「足元の景気回復力が続くとは思えない」──政策当局者の間でこうした見方が増えてきている。

 6月日銀短観では先行き景況感の改善が、足元の大幅改善にもかかわらず、頭打ちとなったほか、鉱工業生産でも6、7月の生産計画が前月比1%以下の低い伸びにとどまった。生産水準は金融危機前の9割に届いておらず、設備の稼働率がさらに上昇しなければ設備投資も慎重化せざるをえない。

 8日に発表された5月機械受注(船舶・電力を除く)は08年8月以来の大幅な落ち込みとなり、先行きの設備投資の改善は期待しづらい状況。日銀短観における設備投資計画も、10年度は全産業でわずか0.5%増と弱い計画にとどまっている。

 民間エコノミストからは「設備投資を過去の回復局面と比較すると回復モメンタムは著しく見劣りする」(モルガンスタンレーMUFG証券・チーフエコノミスト・佐藤健裕氏)との指摘もあり、内需の柱の一つである設備投資の本格回復は見込みづらくなっている。

 株安・円高など金融市場の混乱が企業のマインドに影響した可能性もある。伊藤忠商事・主任研究員の丸山義正氏は「金融市場の混乱が続けば、投資積極化のタイミングが後ずれする可能性も否定はできない」と見ている。

  日銀内からは、回復シナリオを維持しつつも、足元の堅調な景気回復が先行きも続くとは限らないとの慎重な見方が浮上。政府も「景気回復のテンポが想定以上に弱くなる可能性が出てきた」(津村啓介内閣府政務官)と警戒感を強めている。 

  <欧米景気停滞は想定内、新たなリスクは中国景気> 

 生産や設備投資など製造業の停滞感が目立ってきた背景には、輸出の増勢鈍化とエコポイントやエコカーなど政策効果のはく落があるとみられる。輸出の変調は統計にも表れている。内閣府の輸出数量指数は5月に前月比低下に転じたほか、日銀の実質輸出指数も、これまでより伸びが鈍化している。

 財政問題に揺れる欧州も、家計のバランスシート問題を抱える米国も、ともに回復力は極めてぜい弱。欧米経済の停滞自体は「金融システムがぜい弱な欧米景気が足踏みしているのは予想通り」(BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏)だ。

  むしろこれまでの回復局面で輸出のけん引役だったアジア向けの動向が気がかりだ。内閣府指数ではアジア向け輸出数量が5月は減少した。日銀の白川方明総裁は8日の支店長会議で「先進国経済の回復が緩やかなものにとどまる一方、新興国・資源国経済は力強い成長を続けている」とこれまでの見解を繰り返したが、ここにきて日銀内でも新興国、特に中国への警戒感が強まっている。 

 中国政府が実施した不動産取引抑制のための金融機関に対する「窓口規制」は、4月下旬ごろから効果を発揮し、高級物件の取引減少で不動産の取引価格が大きく下落している。都市部固定資産投資の伸び率は、昨年までの30%台から今年に入って25─26%台に低下。その影響で中国の鉄鋼需要や生産活動に幅広く影響し、塩ビなどの化学製品や鋼材価格を押し下げている。5月の鉱工業生産は伸び率が3カ月連続で低下した。

 インフレ率は公表数字の3%を実際には上回っているとみられており、中国政府はインフレと不動産市場の過熱を抑制しながら、過度な需要の落ち込みを避けて持続的な成長を実現するという難しい政策運営を迫られている。

 ある政策当局筋は、中国の抑制策が行き過ぎれば内需が減退、過熱を抑制できなければ資源価格の高騰を招き、どちらにしても日本経済への影響は避けられないと懸念を示している。 

 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 石田仁志)

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