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焦点:実体経済と相反する金利低下、マネー逆流に警戒も

 [東京 4日 ロイター] 10年最長期国債利回り(長期金利)が7年ぶりに1%を割り込んだ。緩やかな景気回復局面での金利低下に違和感を抱く市場参加者は少なくない。一方で、銀行勢の国債保有残高が過去最高を記録するなど金利リスク量は着実に膨張。

 強気論が台頭する一方で、沈静化している財政規律への懸念など何らかのきっかけによるマネー逆流を警戒する声も出ている。 

  <2003年の写真相場、金利低下後の反動を懸念> 

 「債券バブルの色彩が強まった」。日興コーディアル証券・チーフ債券ストラテジストの野村真司氏は緩やかな景気回復トレンドが続く中で、長期金利が1%を割り込んだことについてこう指摘する。菅政権の財政再建路線の行方に不透明感が増す中で、カネ余りに伴う運用圧力で財政赤字リスクプレミアムを押しつぶしてまで金利低下した後の反動を警戒している。 

 2003年の写真相場といわれる中で、歴史を繰り返すことになるのか。過去の残像が脳裏に焼き付いている市場参加者は少なくない。2003年6月、デフレ懸念の台頭や量的緩和政策の継続で長期金利が0.43%と過去最低を付けた後に反転。株価の上昇などを背景に同年9月には1.675%とわずか3カ月間で120ベーシスポイント(bp)を超える大幅な上昇となった。金利急反騰を促す要因となったのは、都銀による損失確定の売り。標準的なシナリオリスクを数値で管理する「バリュー アット リスク(VaR)」でテクニカル的な処分売りを余儀なくされた。日銀の緩和的な金融政策で余剰資金を潤沢に抱える都銀が国債残高を積み増して債券運用収益を確保する構図は今回の金利低下局面と同じだ。

  <都銀の国債保有残高が2年間で2倍に増加> 

 日銀が7月29日に公表した6月分の民間金融機関の資産・負債によると、都市銀行の国債保有残高は6月末現在、90兆5633億円と7カ月連続して過去最高を更新し、2003年6月末(51兆1763億円)を40兆円近くも上回った。リーマンショック直前の2008年8月末(45兆9765億円)と比較しても、わずか2年足らずで約2倍に膨らむなど、都銀の金利リスク量は急激に増加している。「金利が反転した時に、都銀勢は売り切れるのだろうか」(国内金融機関)との不安がつきまとうのも自然だ。特に、今回は地銀も国債残高を大きく膨らませるとともに保有年限を長期化しているだけに、何らかの圧力でポジション縮小の動きが顕在化すれば「予想を越える金利上昇になる可能性も否定できない」(国内証券)との見方もある。  

 財務省が6月11日に開いた国債市場特別参加者会合。議事要旨によると、理財局から銀行セクターが国債を大量保有しているという状況において、2003年にあったようなことを常にリスク要因として考えなければいけないと思うとの懸念も示されている。発行当局も国債のリスク管理には慎重だ。

 クレジット市場では、日本ソブリン(ドル建て)が70ベーシスポイント(bp)前後と欧州財政問題が深刻化する前の今年5月連休前後の水準まで戻している。バークレイズ・キャピタル証券・チーフ公的セクター・クレジット・アナリストの江夏あかね氏は「世界的な金利低下基調の中で、日本ソブリンのプレミアムと国債利回りとの裁定が働いていることも影響している」とした上で、「日本の財政問題が解決したわけではないため、今後ボラティリティが高まる可能性もある」とみている。  

  <米国の利上げ論封印、長期金利0.5%目指すとの声も> 

 一方で、債券相場の先行きに強気論も台頭している。2003年の金利低下局面において、債券投資を指揮した元外資系証券幹部は、長期金利が長期的に0.5%を目指す展開を描く。「米国で民間債務を公的部門が肩代わりする現在の姿は、当時の日本と全く同じ」(元幹部)という。

 当時の日本は、金融機関の不良債権処理に明け暮れ、最終的に公的資金を投入した。米国も金融機関への資金注入や市場安定化策などで公的部門のバランスシートが拡大している。米国の利上げが事実上封印されるなか、「日本も金利が上がりにくいため、銀行は過剰な流動性を安全資産の国債に投資せざるを得ない状況が続く」(同)との見方をしている。 

 (ロイター日本語ニュース 星 裕康記者:編集 石田仁志)

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