[東京 28日 ロイター] 政府税制調査会は28日夕に全体会合を開き、2011年度税制改正で法人税の5%下げを要望している経済産業省から説明を聴取した。焦点の財源論で経済産業省は減価償却制度の見直しや繰越欠損金の使用制限などにより約5000─6000億円の財源確保が可能との試算を提示した。
経済成長による将来の増収分も含めるなど、池田元久経済産業副大臣は企業活動を活性化させ成長を促進させる観点から「法人税のなかだけで、単年度ベースで、ペイ・アズ・ユー・ゴー原則はその目的にそぐわない」と訴えたが、経済効果も見込む財源論などに異論も出て平行線のまま終わった。
尾立源幸財務政務官は終了後の会見で、11月上旬にあらためて税調で検討する考えを明らかにした。
経産省が提示した独自試算によると、法人税を5%引き下げた場合の税収減は年間約1兆円。政府税調PT(プロジェクトチーム)が国・地方合わせて平均2兆円の減収となるとした試算と大きな開きが出た。
焦点の財源については、企業の欠損金を翌年度以降に繰越し課税所得を減らす制度や減価償却制度の見直しや、租税特別措置の見直しを提案。税制措置による財源手当てとして約5000─6000億円を見込んだ。同時に、池田経産副大臣は、研究開発減税や石油化学業界向けに実施されているナフサ免税措置の見直しには反対を表明した。
また法人減税による経済効果として、経済成長や企業の海外流出防止をあげ、その増収効果が2013年度に約4800─6400億円になると試算。全体で、13年度には1兆1500億円の増収が見込めるとしている。
経済効果については、最大121万人(製造業で69万人)の雇用維持効果や、国内投資・回帰効果によるGDP押し上げ効果が3年間で約1%、海外移転抑制効果によるGDP下支え効果を3年間で約1.6%と見通した。
一連の説明に対して、尾立政務官は、(1)法人税5%下げによる自然増収に確証が持てないこと、(2)減収見合いの財源確保を原則する税調の立場では、まずは法人関係税制のなかで財源を見つけてもらいたい、などの問題点を指摘した。
ナフサ免税でも、税調内でナフサを精製する過程で発生し燃料に使うガスについて免税対象から外す案が浮上しており、尾立政務官は「地球温暖化の視点と国際競争力の両立の観点から検討余地がある」と異論を示した。