[横浜 13日 ロイター] 横浜市で開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は13日夕、アジア太平洋地域の持続的な発展をめざす成長戦略について議論を行い、行動計画の策定などで合意した。
午前に行われた日米首脳会談では、菅直人首相が環太平洋経済連携協定(TPP)を含むアジア太平洋地域の貿易自由化について「各国と協議を開始したい」との意向を表明、オバマ大統領も「歓迎したい」と応じた。APECは14日午後に成長戦略を含む首脳宣言「横浜ビジョン」を採択して閉幕する。
<成長戦略で行動計画を策定、世界経済はぜい弱>
1日目は、アジア太平洋地域の持続的な成長と繁栄に向け、APECで初めての包括的な成長戦略の策定や経済発展の前提となる「人間の安全保障」について議論が行われた。
成長戦略では、経済的不均衡の解消や成長機会への関与、グリーン経済への移行などを達成するため、構造改革や人材・企業家育成、グリーン成長などに優先的に取り組むとする行動計画をとりまとめる。行動計画には、進ちょく状況を毎年確認し、2015年までに首脳に報告することなどのフォローアップも盛り込まれる見通しだ。
日本の政府関係者によると、初日の議論では、世界経済について「予想以上に回復しているが、ぜい弱」との認識が示され、リスクとして、国の債務や雇用、金融セクターなどを指摘する声があった。その上で具体的な対応として、内需拡大や経常収支の不均衡是正、APEC域内の格差縮小という「3つのバランス」が必要との指摘があったほか、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けた環太平洋経済連携協定(TPP)の重要性や通貨の柔軟性が必要との意見もあったという。FTAAPなど域内の経済統合については、2日目に具体的な議論が行われる予定だ。
APECはアジア太平洋地域の持続可能な発展をめざし、経済統合と域内協力の推進を目的に1989年に発足。参加メンバーはアジア太平洋地域の21カ国・地域で、世界の国内総生産(GDP)の53%程度を占める。
<日米首脳会談、同盟深化に「共同ビジョン」策定で合意>
午前に約1時間行われた日米首脳会談では、日中および日露間で起きた最近の外交問題について、菅首相が米国のサポートに対して謝意を表明。オバマ大統領は、日本の防衛に対する米国の決意は「揺るぎがない」と述べるとともに、新たな時代に即した日米同盟の深化が必要との見解を示した。こうした日米同盟の深化・発展に向けた共同ビジョンを来春の米国での日米首脳会談で打ち出すため、協議をスタートさせることでも合意した。
日本の国連常任理事国入りに対してオバマ大統領は「日本は国連においていろいろな貢献をしている。日本は常任理事国入りをすべきような模範的な国だ」と日本の常任理事国入りを支持する見解を表明した。
また、首脳会談では経済連携についても議論。菅首相が先に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」を説明し、日米2国間やTPPを含むアジア太平洋地域の貿易・投資の自由化について「情報収集を含めて各国と協議したい」と表明した。これに対してオバマ大統領は、日本の取り組みに対して歓迎する意向を示した。
菅首相は、日米首脳会談後にAPEC最高経営責任者(CEO)サミットであいさつ。TPPの交渉参加に向けて「関係国との協議を開始する」と表明し、アジア太平洋地域を中心に「高いレベルでの経済連携」を進めるため「平成の開国」を実現すると強調した。
(ロイターニュース 伊藤純夫記者 基太村真司記者 編集 宮崎大)