[リスボン 6日 ロイター] ポルトガルのソクラテス首相は6日、欧州委員会に金融支援を要請することを決めたと明らかにした。欧州連合(EU)への支援要請はギリシャとアイルランドに次いで3カ国目。
首相はテレビを通じ、ポルトガル議会が先月、緊縮財政策を否決したことを受け、財政状況や債券市場での資金調達環境が悪化したと指摘し、支援の要請が「不可避」になったと説明した。
「あらゆる努力をした。しかしこの決定をしないと、わが国が負うべきでないリスクに直面することになる、という段階に来た」と述べた。
首相は支援の規模や、どのような形式での支援になるかなど詳細については触れなかったものの、支援をめぐる交渉で最善の条件を獲得することを目指す、と述べた。
ユーロ圏当局者によると、ポルトガルは今後3年間で欧州および国際通貨基金(IMF)から600億─800億ユーロの支援を必要とする可能性が高い。
IMFは、同国から支援の要請は来ていないが、支援の用意はできているとしている。ドイツはIMFの関与を支援の条件と主張している。
ソクラテス首相は3月23日、政府が策定した緊縮財政策を議会が否決したことを受け、大統領に辞表を提出。政局が不透明となり、同国をめぐる状況は一段と悪化した。総選挙は、6月5日に予定されている。
こうしたなかポルトガルの債券利回りは急上昇、格付け各社は同国のソブリンおよび銀行債務の格付けを引き下げた。ポルトガルの一部の国内大手銀行は今週、同国国債の購入を停止する可能性を示唆していた。
ポルトガルのドスサントス財務相は「厳しい状況のなか、欧州フレームワークの支援メカニズムを利用することが必要になった」と述べた。
欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)はポルトガルの決定について、ユーロ圏全体の利益になるとして歓迎、「ポルトガルおよび欧州の経済安定のためになる責任ある措置だ」と述べた。
<財政目標達成できず>
ポルトガルはこれまで歳出削減や増税、賃金抑制など一連の措置を導入。政府は、今年の財政赤字を国内総生産(GDP)の4.6%に削減することを目指し、一段の対策を提案していた。同国の財政赤字の対GDP比は昨年は8.6%となり、目標の7.3%を達成できなかった。
暫定政権は先週、EU・IMFと経済調整プログラムを交渉する憲法上の権限を持っていない、との認識を示した。ソクラテス首相は、今回の支援要請について、暫定政権の役割の制限内で決定したとしている。
ポルトガルの野党・社会民主党(PSD)のコエリョ党首は、支援要請を支持すると表明した。
党首は「真実を隠さないという最初の一歩と見るべきだ」と述べた。
世論調査によると、総選挙では単独で過半数を獲得できる党はないとみられ、そうなれば連立政権樹立に向けた交渉が行われることになる。
同国は今月と6月中旬、100億ユーロ超の国債償還を控えている。
バンコ・カレゴサの投資責任者、ジョアオ・ライタ氏は「ポルトガル政府による外部への支援要請は、金利に好影響を及ぼすというより、内部的な影響のほうが大きい」と指摘。「残念ながら、解決策の効果は長期的なものであり、それまでは厳しい状況が続く」との見方を示した。
<EU、迅速な対処約束>
欧州委員会の声明によると、ソクラテス首相はバローゾ欧州委員長に金融支援メカニズムの発動を要請する意向を通知し、委員長は「当該規則に従って、可能な限り速やかに要請に対処する」と約束した。
EU当局者は、交渉は迅速に進む可能性がある、としているが、緊急融資は通常、議会の承認を得た正式な政府との調印を経て実行される。
フランスのラガルド経済・財政・産業相に近い関係筋によると、ポルトガルが正式に支援を要請すれば、欧州委員会とIMF、欧州中央銀行(ECB)による合同評価が始まり、対応が決まるという流れになる。
EU関係筋は、ポルトガル向け融資の金利について、時期や、ユーロ圏救済基金が市場から借り入れるかどうかよって決まる、としている。
ユーロ圏とEUの財務相は、今週末8日からハンガリーの首都ブダペストで会合を開き、ポルトガルの資金ニーズについて協議を行う予定。
ポルトガルは1970年代と1980年代、IMFに支援を要請している。その際、緊急融資と引き換えに、厳しい財政緊縮策を受け入れた。ポルトガル国民の間では依然、外部からの支援への抵抗感が強い。