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東電賠償スキームにねじれ国会の壁、救済批判や責任論で廃案も

 [東京 13日 ロイター] 福島第1原子力発電所事故による東京電力9501.Tの損害賠償支援について、政府が13日に発表したスキームを実現させるには高いハードルがある。

 5月13日、福島第1原発事故による東京電力の損害賠償支援について、政府が発表したスキームを実現させるには高いハードルがある。写真は会議に出席する菅首相と海江田経産相。12日撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 今回のスキームには特別立法が必要となり、参院で野党が多数を占めるねじれ国会では野党の協力が不可欠。しかし、最終的な国民負担増加や、東電の株主や融資銀行団の責任論が不明確だとの理由で野党が反対する可能性もある。民主党内も東電のあり方をめぐって一枚岩ではなく、政府案通りに法案がすんなり通るかどうか今後の展開を危ぶむ声もある。

 「法案通過にはウルトラCが必要」―─。民主党のある参院議員は今回の特別立法の行く末について、厳しい見通しを示した。参院では、民主党の議席数が106と与党・国民新党の3議席を合わせても過半数の121に届かず、野党の協力を得ることが法案成立の絶対条件だ。

 この参院議員は、住宅金融専門会社(住専)の不良債権処理のため公的資金の投入を審議した1996年の「住専国会と似ている」と振り返る。当時の政府・自民党は「住専を守るためではなく金融システムを守るため」という論法だったが、野党は「住専救済のための公的資金」と反発。今回、政府は「東電を救済するためではなく、被災者の損害賠償を確実にするため」(官邸関係者)と訴えているが、野党が「東電救済」を反対の理由に掲げる可能性もある。最終的には10兆円にも膨らむ可能性があるとされる賠償額を、他の電力会社の協力や電気料金の値上げでねん出するスキームになっており、安易な電気料金値上げとして与野党にまたがって反対論が広がる可能性もある。

 最大野党の自民党は「立法の詳細が明らかになっておらず、党としての公式的な見解はまだない」(国対関係者)としている。ただ、党内では河野太郎衆院議員らが、より抜本的・整理的な手法を用いた方が国民負担も少なく済み、電力業界の改革につながると主張しているという。 

 河野氏は10日夜に塩崎恭久元官房長官ら十数人と勉強会を開き、経済産業省の官僚が私的にまとめた破綻処理をベースとした補償スキーム案について、議論を交わした。参加した柴山昌彦・自民党副幹事長は「巨大企業の再生は、会社更生法など法的でオープンな手法を採るのが公平性の点で望ましい」と指摘。政府のスキーム案が成立するのは「厳しい」との見方を示した。

 一方で同党内には、電力族として知られる議員がいるのも事実。「現在の政府案は解体されない東電にとっても望ましい内容で、自民党も乗ってくれるのではないか」(民主党衆院議員)という指摘もある。

 もっとも民主党内も電力政策をめぐっては一枚岩ではない。党内には原発事故は、原子力損害賠償法が免責対象とする「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じた」事例に相当すると主張する電力業界に近いとされている議員から、賠償額の全容がみえないのに東電存続のスキームを先に決めるのは拙速、とみる電力自由化論者まで様々な意見がみられる。

 12日に民主党が開いた原発事故影響対策プロジェクトチーム(PT)では、国策である原発事業での事故で、一民間企業の東電に第一義的に責任があるとするとの前提そのものをめぐり紛糾。これを受け当初12日予定されていたスキームの正式決定が延期された。

 4月中旬以降、債権保全を急ぎたい金融機関や、政府支出を抑制したい財務省など様々な関係者の思惑の中で練られてきた政府スキーム案だが、世論の理解を得られずに参院で成立せずに廃案となる可能性もある。

 (ロイターニュース 竹本能文:編集 石田仁志)

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