for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

米債務上限問題で合意成立にかすかな望み、与野党案に類似点

 [ワシントン 26日 ロイター] 米国の企業や国民が格下げやデフォルト(債務不履行)リスクに神経をとがらせる中、米連邦債務の法定上限引き上げをめぐる与野党交渉で26日、こう着状態の打開に向けたかすかな望みが浮上してきた。

 7月26日、米国の企業や国民が格下げやデフォルトリスクに神経をとがらせる中、米連邦債務の法定上限引き上げをめぐる与野党交渉で、こう着状態の打開に向けたかすかな望みが浮上してきた。写真はリード上院院内総務(2011年 ロイター/Jason Reed)

 過去数週間、共和、民主両党の指導部の間では辛らつな応酬が続いていたが、両党の財政赤字削減案の類似性を指摘する声が多くなり、議会が8月2日の期限までに14兆3000億ドルの債務上限を引き上げるチャンスが出てきた。

 市場では、米国がデフォルトに陥る事態を避けるため、ぎりぎりで合意が成立するとの見方が強いものの、激しい党派対立や長期的な赤字削減に関する政治的コンセンサスの欠如が、最上級の米信用格付け引き下げという前例のない事態を招く可能性を高めてきた。

 協議の難航は世界中の投資家の神経を逆なでし、26日の市場では、ドルが幅広い通貨に対して下落する一方、金は過去最高値近辺で推移した。ただ、いずれ行き詰まりが解消されるとの観測は消えておらず、パニック売りの兆候は出ていない。

 米大統領上級顧問のデビッド・プラフ氏は26日、CNNとのインタビューで、債務上限引き上げに関する与野党の案には類似点が多いとの認識を示した。同氏は与党民主党のリード上院院内総務と野党共和党のベイナー下院議長がそれぞれ出した提案について「類似点が多い」と述べ、両案が妥協の糸口を包含しているとの見方を示した。

 両党の議員らも、歩み寄りは可能だと話す。ただ、オバマ大統領が再選をかける大統領選を来年11月に控え、両党は長引く経済・財政問題の責任をなすりつけあっており、二極化した論争がワシントンのイデオロギーの分裂を端的に示している。

 米議会では共和党が下院を、オバマ大統領の民主党が上院を支配している。

 <今が行動するとき>

 デフォルトが回避できたとしても、格付けが引き下げられれば米国のソルベンシー(支払い能力)に対する自信が損なわれ、景気回復見通しが阻害され、米国債が指標とされている国際金融システムに否定的な波紋を広げることになる。米国は基盤のもろい機能不全の大国とみなされるリスクを冒している。

 ロイターが過去2日間に実施した調査によると、エコノミスト53人中30人は、米国が3大格付け会社(スタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズ、フィッチ)のうち少なくとも1社の最上級格付けを失うと予想している。また、大半は、この問題をめぐる与野党の対立が既に米経済に悪影響を与えているとみている。

 スタンダード・アンド・プアーズとムーディーズ・インベスターズ・サービスの幹部2人は、27日に開かれる米下院金融委員会の公聴会で証言する予定。両氏は、格付け業界の改革に向けた取り組みと米国の債務上限をめぐる協議に同業界が果たしている役割について証言する見通しだ。

 米連邦債務の法定上限引き上げ期限である8月2日が近づく中、議会では、ベイナー下院議長(共和党)の財政赤字削減案の採決を前に仮死状態に陥っている。ベイナー議長は党内右派の造反に直面しており、採決結果については疑問符がついている。保守系グループは、下院議長案への「賛成票」は彼らに対する非難とみなすと警告している。

 ベイナー議長が提唱している2段階での連邦債務上限引き上げ・財政赤字削減案が民主党の助けを得ずに下院を通過するためには、共和党の造反は22票以内に抑える必要がある。

 財政保守派の茶会党陣営に属している少なくとも10人の共和党議員はロイターに対し、議長案に反対票を投じる意向であることを明らかにした。

 カンター下院共和党院内総務の事務所は26日、ベイナー議長の代替案の下院採決が、予想されていた27日から28日に延期されると発表した。米議会予算局の分析で歳出削減額が当初想定より不足していることが判明したため、議会スタッフが法案を書き直しているという。

 超党派の議会予算局は下院議長案について、10年間の歳出削減額が同案が約束した1兆2000億ドルではなく8500億ドルにとどまるとの見方を示した。

 側近らによると、ベイナー議長とリード上院民主党院内総務は引き続き接触しているが、下院の採決が終わるまで本格的な交渉は行われない可能性が高い。

 リード院内総務は、ベイナー議長案が下院を通過したとしても、上院では「否決されることが初めから分かっている法案」だと述べた。院内総務も独自案の作業を遅らせている。

 ただ、一部の議員は与野党案の類似点を指摘した。上院共和党のジョン・キル議員は「共通点はかなり明確だ」と語った。

 ワシントンでの債務交渉の行き詰まりは既に市場にも影響を及ぼしている。市場には、長期投資離れと投資家が資金を引き揚げ始めている兆候が表れている。米国商業会議所は下院議員らに宛てた書簡の中で「今こそ議会が行動するときだ」と訴えた。

 <国民の懸念>

 米貨物輸送大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)UPS.Nは26日、四半期決算発表に際し、景気先行き不透明感と債務協議の行き詰まりを理由に挙げて、繁忙期の出荷について慎重な見通しを示した。

 米国の一般国民が債務交渉の決裂リスクに目覚め始めたことを示す、明らかな兆候もある。

 オバマ大統領は25日夜のテレビ演説で、米国がデフォルトすれば政府は社会保障費や退役軍人給付金、何千もの企業との契約を履行する支払いなどができなくなり、一般国民生活に直接的な影響が出ると指摘した。

 ロイターと調査会社イプソスが実施した世論調査では、債務危機を懸念しているとの回答が圧倒的多数を占め、過半数は行き詰まり打開を目指すオバマ大統領の妥協案を支持した。56%の米国民は、オバマ大統領や民主党が推し、共和党が反対している歳出削減と増税を組み合わせた財政赤字削減と債務上限引き上げのアプローチに賛成している。

 一方、大手金融機関は、米国が最上級の信用格付けを失う現実的な可能性に備えている。米証券業金融市場協会(SIFMA)のメンバーであるJPモルガン・チェースのグローバル・フィクストインカム戦略統括者テリー・ベルトン氏は電話会議で、格下げによって米国債利回りが長期的に最大70ベーシスポイント(bp)上昇する可能性があると予想し、「これは米国の資金調達コストが長期的に1000億ドル程度膨らむ可能性があることを意味する」と述べた。

 また、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの米経済担当上級エコノミスト、マイク・ハンソン氏は、格下げがあれば消費者と経済に悪影響が及び、「雇用が、そうでない場合に比べてはるかに少ない環境になる」と指摘した。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up