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副都心線が14日開業、新宿など商圏の攻防戦激化へ

 水野 文也記者

 6月12日、東京メトロ・副都心線が14日に開業するのを受け、新宿・池袋など商圏の攻防戦激化が予想される。写真は2005年12月撮影の新宿周辺の夜景(2008年 ロイター/Kimimasa Mayama)

 [東京 12日 ロイター] 都心部の新たな足となる東京メトロ・副都心線が14日に開業する。鉄道会社間の競争が激化すると想定される一方、従来路線を延伸して副都心線に乗り入れる形になるため、これまで池袋を利用していた買い物客が新宿や渋谷に流れる可能性があり、商圏の攻防戦が激しくなりそうだ。

 新線開通をきっけかにライバルの鉄道会社や百貨店の収益が大きく上下する展開もありそうだ。

 <競合するJRや他の私鉄の乗降客は減少>

 副都心線は、埼玉県和光市と渋谷の約20キロを結ぶ東京メトロの9番目の路線だ。和光市と池袋間は既存の有楽町線と同ルートで、新設区間の池袋─渋谷間(8.9キロ)は東京メトロとしては初めて急行運転も採用。急行を使うと池袋-渋谷間は約11分で結ばれる。東武東上線、西武池袋線も副都心線に乗り入れ、埼玉県西部から新宿、渋谷方面への利便性が高まると期待されている。

 同区間唯一の急行停車駅となる新宿三丁目は、丸の内線と都営新宿線が交差。2012年度には、渋谷から東急東横線に乗り入れ、横浜方面ともつながることになる。

 東京メトロによると、開業日の14日から来年3月31日までに、1日に15万人の利用客を見込む。1日当たりの主要3駅の乗降客予測は、池袋が11万1000人、新宿三丁目が4万9000人、渋谷が6万人になるという。この数字について同社は「実際に開業してみないとわからないが、予測は堅めに算出した」(広報担当者)としている。

 当然のことながら並行するライバルの鉄道会社は、影響を受けることになりそうだ。副都心線と並行する山手線や埼京線を運行するJR東日本9020.Tの広報担当者は「今年度の予想で(山手線など)特定の路線で乗客数の増減は試算していない」とした上で「新幹線まで含んだ全体で1日あたりの利用客は9万人の減少を見込んでいる」と説明。副都心線開業によるマイナス分を業績に織り込んでいる。

 JR東日本は「副都心線開業を意識するような特別な施策を打ち出していない」としているが、新線の開業で人の流れが変わり、池袋や渋谷などが活性化した場合「それが新たなビジネスチャンスを生み出すことも考えられる」とみている。

 副都心線と相互直通運転をする東上線の東武鉄道9001.T、西武池袋線の西武鉄道も影

響が避けられそうにない。JRの日暮里と足立区の見沼代親水公園を結ぶ舎人ライナー開業の影響も出ている東武鉄道では、2009年3月期の鉄道旅客収入について、定期外が前年比1.7%減、定期券が同2.3%減に落ち込むと予測した。同社では「新線の開通に合わせてダイヤ改正を行い、従来よりも該当区間についてラッシュ時で4分のスピードアップを実現するほか、池袋駅での乗り換え時間の短縮を図る」(中島直孝常務)など対応策を練っている。

 <大幅な来店者増をもくろむ新宿のデパートも>

 他方、新線開通によって、沿線の商圏も大きく変わる可能性が高くなっている。従来路線からの延伸により、東上線・西武池袋線の沿線住民が池袋を素通りして、新宿や渋谷に流れてしまうことが想定されるなど、攻める新宿や渋谷と守る池袋の間で顧客の奪い合う形になりそうだ。

 中でも新線による顧客増加を期待しているのが、新宿三丁目に接する新宿の百貨店だ。高島屋8233.T新宿店では、1日当たりの来客数で1000人の純増、年間で36万人の増加を見込んでいる。

 高島屋新宿店は、同社の主要店舗の中で唯一、地下鉄の改札口とつながっていなかった店舗で、これまではJR新宿駅と2階の渡り廊下から客を呼び込む形となっていた。それが副都心線の新宿三丁目と地下でつながることにより「単に新駅からの来客増だけではなく、従来は2階の出入り口がメインになっていたため、地下1階と1階の売り場が活性化され、売上増となる効果も期待できる」(広報担当者)という。

 新宿三丁目に伊勢丹の旗艦店がある三越伊勢丹ホールディングス3099.Tでは「副都心線の開業に合わせてイベントを行うが、(終点ではない)新宿三丁目でどれだけ乗降数があるのか──といった疑問もあるなど、実際に開通してみないと効果はわかならい」(広報担当者)と慎重な見方だ。

 <街の活性化も意識する池袋>

 迎え撃つ池袋では、東武鉄道の子会社である東武百貨店と、池袋で長年ライバルとして競っていた西武百貨店が手を結び、顧客流出を防ごうとしている。両社は、東武が西口、西武が東口に分かれているが、共同運営する案内カウンターを東西出口に設置。両社の案内係を配置し、街情報などを伝え池袋の活性化を図る。

 東武百貨店では「副都心線からJR線や丸の内線に乗り換える場合、東武百貨店の前を通ることになる。雑司が谷方面から池袋にくる時、これまでバス利用で東口に到着したのが、新線を利用すると西口に到着することになるなど、開業によるメリットもある」(広報担当者)と副都心線の開業を必ずしもマイナスばかりではないと考えている。

 JR埼京線が新宿まで延伸した1986年にも、今回のような懸念が池袋の流通業者を覆ったことがある。その時の落ち込みは一時的で、ほどなく元の水準に戻ったという。東武百貨店では「開業当初は、新宿、渋谷に流れるかもしれない。しかし、近くて便利、行き慣れた場所ということで、埼京線の新宿延伸時がそうだったように、再び顧客が池袋に戻ってくるだろう」と述べ、中期的な展望について悲壮感が漂う様子はない。

(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

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