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焦点:国際会計基準、2011年以降の導入機運高まる

 村井 令二記者

 9月8日、2011年以降の国際会計基準導入に機運高まる。都内で昨年2月撮影(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 [東京 8日 ロイター] 日本の上場企業に国際会計基準(IFRS)を導入する機運が高まってきた。米国が2014年以降の国際会計基準の義務付けを検討すると表明したことで、日本でも真剣に受け入れを検討すべきとの声が国際的に活動する企業や公認会計士などに広がっている。

 国際的な単一会計の流れに乗り遅れれば、日本企業が海外で活動する際に障害になるとの懸念が出てきているためだ。ただ、欧州支配の色が濃い国際会計基準の運営に日本の影響力が確保されないまま「受け入れ」の方向性が固まれば、国益を損なうと金融庁は警戒感を強めており、日本の方針が決まるまでにかなりの曲折が予想される。

 <米国が方針転換、2014年以降の義務付け検討>

 国際会計基準は、欧州連合(EU)やオーストラリアを含む100カ国以上で導入され、カナダ、インド、韓国では2011年からの適用を予定。グローバルな単一の会計基準としての地位を築きつつある。EUでは、2005年からEU域内に上場する企業の連結財務諸表に国際会計基準の使用を義務付けた。

 米国では国際会計基準を採用せずに、米国会計基準(GAAP)を使っているが、米証券取引委員会(SEC)は2007年11月、外国企業に対して国際会計基準の決算書を作成することを容認。さらに米SECは今年8月27日、米国内企業への国際会計基準の義務付け案を公表した。

 米SECが公表した工程(ロードマップ)案によれば、2009年11月15日以降の会計年度から、110社の米国企業に国際会計基準の選択適用を認め、国際会計基準への移行による問題がないかどうかを検討する。さらに2014年以降に国際会計基準を段階的に義務付けることが可能かどうか、2011年に最終判断することとした。工程案は、60日間のパブリックコメントを経て決定される。

 <日本、会計士協が国際会計基準の導入を提言>

 一方で日本は、2011年までに国際会計基準と共通化することを目指している。具体的には、日本の会計基準と国際会計基準との違いを埋めていく「コンバージェンス(収れん)」の手法を進めており、国際会計基準の「アダプション(受け入れ)」とは現時点で距離を置く立場にある。

 ただ、日本公認会計士協会は9月1日、米国が導入検討を表明したことで「世界の潮流をみて判断すると、日本でも国際会計基準を受け入れる方法について真剣な検討を行う必要がある」と提言し、米SECに倣って「日本版ロードマップ」を関係者の間で策定するよう求めた。具体的には「連結決算で先行して使用を認めるべき」だとしている。

 日本経団連も「世界的な流れをみると、国際会計基準を受け入れないという選択肢はない」(幹部)との意見だ。今年3月に実施した経団連会員企業39社に対する意識調査では、67%にあたる26社が「国際会計基準との選択適用を認めるべき」と回答。グローバルに事業活動を行っている企業にニーズが強く「義務付けか選択適用かという受け入れ方には多様な意見があるが、国際会計基準の使用を認めることには多くの会社が肯定的な意見だ」(同)という。

 <企業・会計関係者の非公式会合>

 企業や公認会計士など「ユーザー」の意見調整をする立場にある金融庁は7月末、日本経団連、日本公認会計協会、東京証券取引所、企業会計基準委員会(ASBJ)、学識者など関係者15人を集め、日本の会計基準改革について非公式な意見交換の場を設けた。

 関係者によると、この会合では「連結決算の会計改革を単体決算に先行して行う」との方向性で意見が一致した。この「連結先行」の考え方は、2011年までの国際会計基準との共通化を進める手順だと説明されているが、ある会合の参加者は「国際会計基準の受け入れの方法論としても応用される話だ」と解釈しており、すでに2011年以降をにらんだ議論が始まっているとも受けとめられている。

 非公式会合は9月中旬にも2回目が予定されており、「連結先行」の考え方について議論が進められる予定。また、公認会計士協会から、国際会計基準の受け入れ提言についても意見陳述がある見通しだ。

 <国際会計基準のガバナンス改革の裏に各国の思惑>

 ただ、金融庁は「コンバージェンスが最重要課題」(茂木敏充金融担当相)との立場を繰り返し強調し、国際会計基準の導入は「今後の議論」として現時点で慎重な姿勢だ。この背景には、国際会計基準のガバナンスの問題が大きい。

 ロンドンに本拠を置く国際会計基準委員会財団(IASCF)は民間組織として運営され、実際に会計基準を開発する審議会の理事13人(定員14人)のほとんどが会計士。英米会計士の影響力が強く「時価会計原理主義」「会計専門家の独善」として、ユーザーの企業側との衝突が絶えないという。財団の評議会メンバーは26人いるが、選任プロセスが不透明との指摘があり、講演するだけで多額の謝礼が支払われる慣例が確立されているなど、名誉的な立場にある点に対して「既得権益」との批判もくすぶる。

 ここ数年で急速に拡大し、世界で100カ国がかかわることになった国際会計基準の「ガバナンス不在」の問題に対しては、財団に国際的な監視組織(モニタリンググループ)を設置する案が提出されている。日本の金融庁のほか、米SEC、EU委員会、証券監督者国際機構(IOSCO)がメンバーとして、定期的に報告を受ける体制を整える。設置は年内にも決まり、稼動するのは来年以降になる見通しだ。

 さらに審議会の理事の定員を現在の14人から16人に増やす案も提出されている。新しい体制には地域枠が設けられ、北米4人、欧州4人、アジア・オセアニア4人、南米・アフリカで各1人、残る2人は地域枠を設けない。現在の日本の理事は、中央監査法人出身の山田辰己氏1人だけであるため、日本側としては増員を機会に日本人理事を増やしたい考え。

 ただ、アジア・オセアニア枠には、現在も理事を務める日本、オーストラリア、中国が既得権を主張し、残る1人には、韓国、シンガポール、インドが「虎視眈々(たんたん)とねらっている」(関係者)とみられている。

 こうした国際会計基準のガバナンス改革の建前の裏には、各国の影響力の確保を狙った思惑が潜んでいる。ロンドンを所在地とする財団には「欧州支配」の色が濃く、日本を含む関係各国の意向が反映されにくいとの指摘もある。

 <導入先行は国益にマイナス>

 金融庁としては、国際会計基準をめぐる米欧の駆け引きと自国の影響力の確保を慎重に見極めており「2011年以降の導入論」だけが先行することに警戒心が強い。ある金融庁の関係者は「この段階で、国際会計基準を導入する方向性が固まるのは、国益にとってマイナスだ。導入するならコンバージェンスは必要ないではないか、との論調になるのが最悪のシナリオになる」と警戒している。

 茂木敏充金融担当相は、米国が国際会計基準の導入検討を表明した翌日の8月28日、コックス米SEC委員長と会談した。2日の閣議後の記者会見では、国際会計基準の義務付けの最終判断を2011年としている米国は「日本と立場が同じ」との認識を示し、日米の連携を強調した。

 9月下旬には、国際会計基準審議会のトゥイーディー議長(英国会計基準委員会初代議長)が来日する予定。日本経団連と公認会計協会で講演を行う予定で「国際会計基準の売り込みに来る」(会計関係者)とみられている。

 (ロイター日本語ニュース 村井 令二記者 編集;田巻 一彦)

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