[ロンドン 2日 ロイター] 20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)は、大恐慌以来最悪の世界的な経済危機に対処するため、総額1兆1000億ドルの対策を講じるとともに、危機の再発を防ぐため規制を強化することで合意した。
オバマ米大統領は、今回のG20会合について、世界経済の「転換点」と位置付けた。
エコノミストの間では、楽観ムードの広がりをけん制する声も出ているものの、世界の株式市場はG20の大胆な措置を歓迎し、上昇した。
オバマ大統領は、記者会見で「われわれは、成長回復と危機の再発防止に向け、前例のない一連の措置を講じることで合意した」と語った。また「現在の危機を深刻化させる可能性のある保護主義を否定した」とした。
G20会合では、制裁につながる可能性のあるタックスヘイブン(租税回避地)のブラックリスト公表や、初めて大規模なヘッジファンドや格付け機関を監視することで合意した。
オーストラリアのラッド首相は「この日の合意は、世界の市場を崩壊させた金融市場の『カウボーイ』摘発を始めるもので、あらゆる面に影響を与える」と述べた。
議長国である英国のブラウン首相は「きょうは世界的なリセッション(景気後退)に立ち向かうため、世界が一致団結した日だ。言葉ではなく、世界経済の回復と改革に向け、明確なタイムテーブルを設定した」と述べた。
ブラウン首相によると、各国は2010年末までに総額5兆ドルに上る財政刺激策を実施することで合意した。
各国の株式市場はG20の決定を好感し、欧州株式市場は4.9%、米国市場ではダウ工業株30種が2.8%、ナスダック総合指数が3.3%、S&P総合500種が2.9%上昇した。
ブラウン首相によると、G20首脳は、IMFや他の機関を通じて利用できる新たな資金源として1兆1000億ドル拠出することで合意した。それにはIMFの特別引出権(SDR)2500億ドルが含まれる。
IMFは5000億ドルの新規資金を得て、独自財源は3倍に拡大する。新規資金のうち400億ドルを中国が拠出することで合意した。
このうち多くは特に東欧の困難に陥った貧困国の支援に充てられる見通し。
スタンダード・チャータードのシニアエコノミスト、サラ・ヘウィン氏は、貿易の大幅減少で打撃を受けている貧困国が支援されるとの見方を示した。
G20はまた、IMFに対し、最貧国向け融資資金の調達や保有する金の売却を加速するよう求めた。さらに、世界の貿易を促進するため、2年間にわたり2500億ドル規模の貿易支援策を講じることで合意した。
サセックス大学欧州経済学部のジム・ロロ教授は「貿易大国である中国や、ブラジルなどその他の新興国にとって良いニュースだ。ドイツにとっても朗報だろう」と指摘した。
ただ、エコノミストの中には、楽観ムードの広がりをけん制する向きもある。
ロイヤル・バンク・オブ・カナダの新興市場ストラテジスト、ナイジェル・ランドール氏は「IMFの財源拡大は予想以上で、困難に陥った国の支援に充てる資金が増加したことは好ましいニュースだ。だが、特に東欧諸国などが抱える問題は一夜では解決できない」と指摘した。
ブラウン英首相も「早急な解決策はない」としながらも、今回の措置でリセッションが短期化し、雇用喪失も食い止めることができる、との考えを示した。
G20の声明は、今回の措置により、世界の生産が来年末までに4%押し上げられるだろう、との見通しを示した。
オバマ米大統領は「声明で示された措置は必要なものだ。これらが十分かどうかは成り行きを見守らなければならない」と語った。
フランスのサルコジ大統領は、G20で予想以上の成果が得られたと評価するとともに、世界経済は「アングロサクソン型モデル」から変化しつつある、と指摘した。
ドイツのメルケル首相は、一段の景気刺激策の実施が義務づけられることがなかったことを歓迎する考えを示した。
独仏が市場の規制強化を求めて英米と対立していた問題について、英国のブラウン首相は「要求に応じて情報を明らかにしないタックスヘイブンはなくなるだろう。これまであった銀行の秘密主義は幕を閉じた」と述べた。
ロイターが入手した書類によると、コスタリカ、マレーシア、フィリピン、ウルグアイが、非協力的なタックスヘイブンのブラックリストに載せられた。