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焦点:市場ボラティリティ沈静化、「今回は違う」は正しいか

[ロンドン 28日 ロイター] - 景気サイクルが止まったわけではないだろうが、金融市場の感覚では、今の局面が極限まで続いていこうとしているかのようだ。

 5月28日、景気サイクルが止まったわけではないだろうが、金融市場の感覚では、今の局面が極限まで続いていこうとしているかのようだ。写真はニューヨーク証券取引所(2014年 ロイター/Brendan McDermid)

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ前議長がちょうど1年前に異例の金融刺激策から段階的に撤退すると警告し、昨夏にグローバルな市場の大混乱を引き起こしたが、奇妙なことに金融市場のボラティリティはその後、再び消滅した。

当時、FRBの方針転換によって市場に動揺が走ったのは、1世代に1度あるかどうかという規模で金融市場と経済が崩壊した後で、「正常な状態」に復帰する可能性を予告したためだ。それは以前の政策枠組みへの回帰が避けられず、結果的に高騰していた金融資産の価格調整をもたらすことを示す。

経済学用語である「平均的水準への回帰(ミーン・リバージョン)」とは、振り子は必ず最終的に元の位置に戻るということを指し、トレンドの形成を期待する市場は概してその転換点において最も激しい出来事を経験するということも意味している。

この1年間に株式と債券の利回りは急騰し、それまで欧米から資金を吸い寄せていた新興国市場に激震が走った。その後もFRBは自分たちの言葉を忠実に守って量的緩和策の段階的縮小を継続しており、緩やかながらも着実な景気回復が進行している。

それでも、2014年の相場は、乱高下が増幅するどころか、長期金利は急低下し、株式相場は高揚感に沸いている。新興国市場もさっそうとした回復を遂げている。

このため、今年は数えきれないほどの政治リスクが表面化したにもかかわらず、金融市場の不安定度を図る指標は急降下した。世界株式指数は反発し、2007年11月の「グレート・リセッション」前夜につけた史上最高値まであと2%の水準に迫っている。

金融市場の「恐怖指数」と呼ばれ、S&P500指数のオプション価格を用いて算出されるボラティリティー・インデックス(VIX指数)は3月以降の最低水準に低下しており、長期の平均でみても07年以来の低水準に落ち込んでいる。

国債利回りのボラティリティは昨夏のピークの半分程度での推移が続く。主要通貨市場の不活発な状況により、ユーロ/ドルの予想変動率(インプライド・ボラティリティ)も07年以降で最低となっている。

実際に主要な株式、債券、通貨市場の変動率は、08年の金融危機までの4年間の平均を3割かそれ以上下回る水準まで低下している。

<「今回は違う」のか>

では、景気回復は行き詰まりを迎えており、FRBや他国の中銀は再び軌道修正を迫られるのだろうか。世界の経済成長率が中国の景気減速によって弱まり、欧州中央銀行(ECB)が緩和モードを鮮明にし続けている事実に限れば、あるいはそうなのかもしれない。

しかも米国の景気回復が5年目に入り、戦後2度の景気循環の1つの局面の継続期間が平均5年半だったことを考えると、歴史的に見て米景気が下降局面入りするという主張にも説得力がある。

だが、米国と世界の国々が転換期を迎えるとすれば、未だに株価がこれだけ押し上げられているのはなぜだろうか。

有名な弱気派として知られるファンドマネージャーのジョン・ハスマン氏は、株価は歴史的にみて割高で相場が伸び切った状態となっているため、いつ急落してもおかしくないとみている。

同氏は今週顧客に対して「人はブロードウェイの舞台に毎回同じ道化役のダンサーが出てくると安心感を得る。かつては金融環境は健全で、サブプライム商品は抑制され、株式はまだ割安だと言われ、投資家は安心していた」と話した。

しかし、実際に起きているのはボラティリティの低下で、米国債利回りはことしに入り50ベーシスポイント(bp)下がった。まさしく「今回の状況は違う」とする議論に沿った動きだ。

失業率や遊休工場、設備の形で残された経済の余力が、景気拡大のペースとともに失われていくスピードについて市場は再考してきた。

結論として、08―09年に経済が被った衝撃があまりにも大きかったため、多くのエコノミストは現在、景気循環の上で物価や賃金、金利の上昇が始まるまでに通常より2倍の期間を要すると推定している。

その考え方を主導したのはサマーズ元財務長官だ。彼は27日にロンドンで持論でもある「長期停滞論」をあらためて披露し、高齢化や技術進歩、また債務返済の動きによって、完全雇用が達成されるまでに超低金利状態が以前より大幅に長期化するとの考えを強調した。

こうした経済におけるスラック(需給の緩み)という考えが、FRBの政策変更をめぐる不安感が広がった後に市場に浸透していった。

BNPパリバの株式・デリバティブ投資戦略責任者のジェリー・ファウラー氏は、個別銘柄にそれぞれ乱高下があるとしても、市場のボラティリティが低下するかどうかは、このマクロ経済をめぐる見方で決まると考えており、「かなり強気の予想でも米国の需給ギャップは2017年まで解消しないとみられており、今回の景気循環は18年まで終了しないことを示唆している。我々の考えでは、現在株式を手放す行為は全く意味をなさない」と話している。

(Mike Dolan記者)

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