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焦点:今年度も12兆円台の巨額貿易赤字か、5月の輸出回復せず

[東京 18日 ロイター] - 5月貿易統計では、増勢を取り戻すとみられていた輸出が減少に転じた。国内の駆け込み需要が一巡して輸出余力が回復し、米国やアジアの需要回復を追い風に、輸出が増加するとのシナリオが有力視されてきたが、楽観的な予想は裏切られた。

 6月18日、5月貿易統計では増勢を取り戻すとみられていた輸出が減少に転じ、2014年度も12兆円前後の貿易赤字になるとの見通しが広がった。昨年10月東京の工業港で撮影(2014年 ロイター/Issei Kato)

このため2014年度も12兆円前後の貿易赤字になるとの見通しが広がっている。

<輸出減少の背景に構造要因>

「大幅な円安が進行し始めてから約1年半が経過したが、輸出は依然として一進一退の状況を脱してない」--。5月貿易統計では、輸出の動向にエコノミストの注目が集まった。

輸出停滞が続いている要因について、JPモルガン・シニアエコノミストの足立正道氏が挙げているのは、1)米国やアジアの景気回復が鈍い、2)構造変化要因として海外生産が増えている、3)電機を中心に日本企業の競争力が低下している──などだ。

  日銀では、駆け込み需要に伴う国内向け出荷を優先する動きがはく落し、輸出は増加に転じていくとの見通しを示していたが、5月のデータからはその動きは確認できなかった。

足立氏は「日銀は国内駆け込み需要向け要因を強調し過ぎた印象があるし、海外経済の回復もまだ、日本の輸出に波及するに至っていない」と見ている。

他の民間調査機関でも、輸出は一進一退と予想している。構造要因として海外生産比率が高まることや、競争力の低下は、引き続き輸出を下押しする要因だ。

<米中も潜在成長率低下、輸出下押し要因に>

ここでポイントになるのが、今後の海外経済の動向だ。1つには「米国経済の回復が持続力が持つかどうか。疑問な点もある」(野村総研・金融ITイノベーション部長・井上哲也氏)との見方が広がりつつある。

同氏によれば、米国民の純資産の増勢が鈍化し、設備投資の弱さと住宅部門の回復の鈍化もあり、すでに景気循環はピークを打ったとの見方が出ている。

さらにイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が言及しているように、米経済の潜在成長率の低下も気になるところだと、井上氏は指摘する。

また、中国経済にも投資から消費への需要転換を促すため、中国政府が景気刺激策を控えているという事情がある。労働力人口の減少問題もあり、専門家の間では、6%台への成長減速は、持続的成長のためにむしろ正当化されるとの見方もあるほどだ。

米中経済に加速感が出てこないようであれば、日本の輸出が増勢を強めるかどうか、かなり不透明感が出てくる。

これに対し、日銀はいずれ輸出が回復するというシナリオを維持している。黒田総裁は13日の会見で「輸出の回復時点が少し後ずれした可能性はあるが、輸出が全体として回復しないというようにはみていない」と、輸出回復の後ずれを強調してみせた。

<原油高継続も、貿易赤字減少しないとの声>

輸出の伸び悩みだけでなく、今後の輸入増加要因にも目を配る必要が出てきた。ウクライナ問題に続き、イラク情勢の緊迫化を要因に原油価格が高騰し始めており、今後のエネルギー輸入金額がかなり膨張しそうな状況だ。

SMBC日興証券の試算では、ドバイ原油が1バレル当たり10ドル上昇した場合、原油輸入は4.3兆円程度増加する計算となり、GDPは0.25%ポイント押し下げられる。

ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斉藤太郎氏は、14年度も貿易赤字は12兆円台と、駆け込み需要向けの輸入が膨らんだ13年度の13.8兆円とそれほど違わない巨額な数字になると試算。他の調査機関でも同程度の赤字を予想する声が目立つ。

日銀は15年度以降の見通しで、国内民間需要の堅調な増加に加え、海外経済改善による輸出増加に支えられるシナリオを描き、成長率は民間平均より高めの見通しを出している。

これについて足立氏は「米国や中国の潜在成長率の低下を考えると、数年単位でみた日銀の見通しは甘過ぎるかもしれない。思っていたより外需の回復が弱い可能性もある」とみている。

中川泉 編集:田巻一彦

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