[東京 6日 ロイター] - 大手ビール4社の決算は、明暗が分かれた。高級ビールなどが好調なアサヒグループホールディングス2502.Tや買収したビーム社の収益が加わったサントリーホールディングス[SUNTH.UL]は2014年12月期の業績見通しを上方修正した。
一方、キリンホールディングス2503.Tは、国内ビール類販売の不振などから売上高計画を下方修正。1―6月期も唯一、減収減益決算となった。
<アサヒ、高級ビールやノンアル好調>
アサヒは通期の業績予想を上方修正した。連結売上高は1兆7500億円から1兆7830億円(前年比4.0%増)、営業利益は1230億円から1270億円(同8.1%増)へとそれぞれ引き上げた。4年連続での営業最高益更新となる。
通年販売を開始した高級ビールの「ドライプレミアム」が好調な酒類事業のほか、上期で「三ツ矢サイダー」が過去最高の販売数量を記録した飲料事業、食品事業、国際事業の全事業で増益を計画している。また、ノンアルコールビールテイスト飲料の「ドライゼロ」も好調で「20%の増産体制をとる」(奥田好秀取締役)という。
1―6月期の営業利益も上期としては10期ぶりに過去最高を更新した。消費増税についても「うまく乗り切った」(奥田取締役)と言い切る。
<キリン、上期は唯一減収減益>
大手4社の1―6月期決算で、減収減益となったのはキリンHDだけとなった。通期見通しも売上高を2兆2900億円から2兆2600億円(同0.2%増)へと引き下げた。
ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)の販売が不振で、通期での計画も前年比0.1%増から3.1%減へと下方修正。ブラジルも販売競争激化で販売計画が未達で推移、通期計画を下方修正した。
国内ビール類販売について、三宅占二社長は「消費増税前までは良かったが、増税後の販促策の打ち方で、他社に比べて優位性がなかった」と振り返る。各社とも、消費増税後の販売減に危機感を持ち、新商品の発売やキャンペーンの実施など積極的な販促を仕掛けていた。しかし、キリンは、サッカー日本代表オフィシャルスポンサーを務めていることから、ワールドカップに焦点を置いた販促を実施していた。
国内シェアが低下している点について、三宅社長は「大変大きな問題」との認識を示したうえで「下期はトップラインを取るために積極的な販促策を投入する」とした。上期に計画していた販促費が使い切れていないこともあり、下期は予算内でも計画比販促費は増加するという。
同社は、国内総合飲料事業について「2015年に2012年対比で増収増益を実現する」との目標を掲げており、13年、14年の減収減益は覚悟の上で再生に取り組んでいる。しかし、三宅社長は「計画通りに行っていない」と認めており、ブランド強化のための投資や販促に取り組む方針だ。
<サントリー、ビーム買収で業界トップへ>
サントリーHDは、5月にビーム社を買収したことで、14年12月期業績予想を上方修正した。連結売上高は2兆2200億円から2兆4400億円(前年比19.6%増)、営業利益は1460億円から1670億円(同32.0%増)へとそれぞれ引き上げた。この業績予想を達成すれば、売上高、営業利益ともにキリンHDを上回り、業界トップ企業となる。
千地耕造常務執行役員は「国内他社に比べてトップとなることにあまり感慨はない。ここからさらなる成長を目指し、グローバルな企業になるための通過点」との認識を示している。
一方、ビーム社の買収関連費用を特別損失に計上したことで、当期利益予想は500億円から370億円(同81.1%減)に下方修正した。
ビーム社の買収で悪化した財務について、千地常務は「3年で健全な財務体質に戻したい」と述べた。具体的には、17年までにDEレシオが1倍を切る水準に引き下げる方針。
また、ビームののれんの償却は、毎年300数十億円ずつ、20年間で行う。
<サッポロは「極ゼロ」問題で当期赤字に修正>
サッポロホールディングス 2501.Tは、「極ゼロ」に関する追加納税116億円を特別損失として計上したため、2014年12月期の連結最終損益予想を50億円の黒字から20億円の赤字に下方修正した。当期赤字は、2003年12月期にホールディングスとして決算を開示して以降、初めてとなる。 ただ、国内ビール類販売は好調で、通期の連結売上高は前年比5.5%増の5377億円、営業利益は同2.2%減の150億円の予想を据え置いている。上條努社長・グループCEO(最高経営責任者)は「事業は順調に推移しており、極ゼロの特損要因は一時的と捉えている」と述べている。
清水律子 編集:内田慎一
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