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黒田総裁は緩和期待と一線、雇用・所得起点の物価上昇に自信

[東京 4日 ロイター] - 足元のさえない経済指標を背景に、消費税率引き上げ後の日本経済の先行きに慎重な見方が広がる中、黒田東彦総裁は4日の会見で、経済の前向きな循環メカニズムは維持されていると繰り返した。市場では日本経済の成長下振れが続き、日銀がいずれ追加緩和に追い込まれるとの見方もくすぶるが、黒田総裁は雇用・所得環境の改善を中心に経済・物価を支えていく構図を明確にした格好だ。

 9月4日、黒田東彦総裁は会見で、経済の前向きな循環メカニズムは維持されていると繰り返した。記者会見の様子(2014年 ロイター/Yuya Shino)

4日の会見で質疑の中心になったのは、足元で続く弱い指標の評価だった。消費増税に伴う反動減の影響を主因に、4─6月期の国内総生産(GDP)は年率で前期比6.8%減と大幅に低下。鉱工業生産、個人消費など弱めの経済指標が続き、想定よりも下振れている可能性を聞く質問が相次いだ。

しかし、総裁は成長率について、駆け込み需要で高い伸びとなった1─3月期とならしてみれば「潜在成長率を上回る成長を続けている」と説明。

個人消費は所定内給与の持ち直しなど雇用・所得環境が改善を続ける中で「先行き底堅く推移していく」、生産は予測指数や企業のヒアリングなどから「緩やかな増加基調をたどる」との見解を表明。「家計・企業とも前向き循環メカニズムは維持されている」と強調した。

消費増税の影響を直接受け、これまでの景気けん引役だった個人消費の低迷が強く意識される中、総裁が再三にわたって指摘したのが雇用・所得環境の改善だ。

実際に2日に公表された7月の毎月勤労統計(速報)では、現金給与総額が前年比2.6%増と5カ月連続で増加。総裁が「出来過ぎ」と指摘したように、常用雇用者数と1人当たり賃金を掛けた雇用者所得は同4.2%増に伸びを高めた。こうした足元の賃金動向が、日銀を勇気づけることになったのは想像に難くない。

昨年4月の量的・質的金融緩和(QQE)の導入以降、足元の成長率見通しは下振れが続く一方、物価は日銀の想定に沿った動きを続けている。

総裁はアジア経済のもたつきなど輸出の低迷と堅調な内需が純輸出を減少させて成長を鈍化させたとする一方、「雇用の急速なひっ迫」が物価上昇に寄与したと説明。成長下振れが、インフレ期待に与える影響についても「今年度後半にインフレ率が再び加速していくとみているが、その中でインフレ期待も上がってくる」との見通しを示した。

足元でも雇用・所得環境の改善が続く中、人手不足などを背景とした物価上昇圧力が次第に増してくることで、インフレ期待も2%に向かって高まっていくとの見立てだ。

ただ、総裁が単年度の要因と指摘した増税に伴う実質所得減少が、今後の消費者心理に与える影響は不透明。一段のインフレ期待上昇には、来年も継続して賃上げが行われることが不可欠との見方もあり、予断を許さない状況が続きそうだ。

伊藤純夫 編集:田巻一彦

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