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焦点:東京以外のオフィス賃料上昇に壁、背景に相次ぐ開発

[東京 5日 ロイター] - アベノミクスの第1の矢である大規模金融緩和の効果によって、大都市を中心に地価が本格的に反転しだした。不動産取引も活発化し、東京ではオフィスビルの賃料上昇が鮮明だ。だが、大阪や名古屋、福岡などの大都市圏では空室率は改善しているものの、賃料上昇には大きな壁が存在している。

 1月5日、アベノミクスの第1の矢である大規模金融緩和の効果によって、大都市を中心に地価が本格的に反転しだした。だが、大阪や名古屋、福岡などの大都市圏では、賃料上昇に大きな壁が存在している。写真は2013年にオープンした大阪の高層ビル。2014年12月撮影(2015年 ロイター/Junko Fujita)

<大阪の現実>

大阪におけるビジネスの中心地・梅田駅前にある大阪中央郵便局の前の広場。ここが、大阪の不動産市場の見方を象徴しているかもしれない。2008年に日本郵政は、この建物を40階建てのオフィス・商業複合ビルに建て替える計画を打ち上げた。

だが、今そこに建つのは2階建ての郵便局の仮庁舎。その前は広場となり、ビジネスマンや買い物客などが、高層ビル計画の存在を忘れたかのように行き交っている。

日本郵便はロイターに対し、ビルの開発スケジュールは経済環境や周辺開発の状況を見ながら検討すると回答した。

中央郵便局と至近距離にある巨大なオフィスと商業の複合ビル、グランフロント大阪は2013年に開業したが、オフィススペースにはいまだ30%の空室がある。

大阪の一等地にこのような「真空地帯」があるのは、経済の伸びに力強さがないためとの指摘が多い。大阪に本社を持ついわゆる関西系の大企業の多くは、営業基盤の中心が東京にシフト。代わって大阪経済を支えるような新しい産業の創出も少ない。

「大阪で新しいオフィスビルができても、そこに入るテナントは大阪の外から、あるいは海外から来るのではなく、大阪の町の中での移転に過ぎない」──。大阪に本社を持つ京阪神ビルディング8818.T常務の井上康隆氏は、そう語る。「大阪にオフィスビルへの新しい需要が生まれているわけではない。そこが大阪のオフィスビルマーケットのポテンシャルの低さを物語っている」と分析する。

大阪に本社を持つダイビル8806.Tは、今年竣工予定の31階建て「新ダイビル」を建設中。主要テナントには商社の丸紅8002.Tの入居が予定されているが、現在丸紅が入っている築30年の「大阪丸紅ビル」には大きな空室ができる。これは大阪のオフィス需要のぜい弱さを示す一例だ。

京阪神ビルディング8818.Tは現在、賃貸売上高の9割が大阪におけるビルの賃料。今後は新しい物件を東京で取得し、経営の軸足を首都圏に移して行く。

2012年の安倍晋三政権発足以降、アベノミクスによる大幅な金融緩和政策により、投資家の余剰資金が不動産投資に振り向けられてきた。それは不動産取引数の増加をもたらし、東京のみならず、大阪や名古屋が形成する三大都市圏の地価の上昇を生み出した。

昨年9月に国土交通省が発表した都道府県地価調査によると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の商業地は2年連続上昇した。東京の不動産価格が高騰し、より高いリターンを求め、地方都市に目を向ける動きが国内だけでなく、海外の投資家にも出てきたことが市場をけん引した。

資産価値の上昇によって年率2%程度のマイルドなインフレに導くことが、安倍政権の大きなターゲットだが、東京以外の都市が投資家を引き付ける市場として今後、成長するかどうかは不透明だ。

企業の増床移転などのニーズに伴い、大都市のオフィス空室率は低下しているものの、オフィスの賃料の上昇には結びついていない。

不動産仲介の大手、三鬼商事の12月オフィス賃貸市場調査によると、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌などの大都市の空室率は、ここ1年順調に低下している。

しかし、11月末のオフィスの平均賃料が明確に前月を上回ったのは東京のみ。東京は3.3平方メートル当たり1万6913円から1万6950円に伸びたが、大阪は1万1119円から1万1120円とほぼ横ばい。

さらに過去1年をみると、オフィス賃料が前年同月を上回ったのは、東京と札幌のみだ。

業績回復に後押しされ、より質の高いビルにより広いスペースを求める企業が増えてはいるが、地方では賃料の上昇に結びついていない現状が浮き彫りになっている。

こうした賃料の推移について、PAG不動産投資部門マネージング・パートナーのジェイ・ピィ・トッピーノ氏は「大手海外投資家は、オフィス賃料が明らかに上昇している東京に投資ターゲットを移していくだろう。東京と地方の不動産の資産価値はしばらく広がっていくことになるかもしれない」と指摘する。  

<名古屋の高層ビル>

第3の経済圏を形勢する名古屋のオフィス市場でも、賃料には不透明要素がある。

名古屋はリニア中央新幹線の開業を2027年に控えている。東京との距離が縮まることで今後の不動産価格の上昇が期待されて不動産取引は活発になっている。名古屋の不動産仲介会社・ICHIによると、名古屋のオフィスを中心とした商業不動産取引件数は昨年上半期は94件と前年同期より8%増加した。

しかし、オフィスビルの賃料には、上昇圧力がかかって来ない。名古屋のオフィス空室率は昨年11月に7.5%と前年同月の9.76%から低下したが、賃料は3.3平方メートル当たり1万0760円と1年前の1万0828円から下落している。

名古屋駅前には「大名古屋ビルジング」、「JPタワー名古屋」、「JRゲートタワー」などの高層ビルが2017年までに5棟開業し、約33万平方メートルのスペース供給が見込まれる。これは現在のオフィススペースの1割に相当する。それにより名古屋の空室率は、17%まで悪化すると予想する地元の仲介会社もある。

地方都市のマーケットは、東京に比べて規模が格段に小さい。名古屋のオフィスビル市場は、東京の品川区と同規模だと指摘する専門家もいる。その結果、東京に比べて流動性もかなり低い水準にある。

「地方のオフィス市場のキャップレートは、ピーク近くに達している感がある」と指摘するのは、福岡市に本社を置く不動産投資会社・玄海キャピタルマネジメント、事業開発部長の谷元勝美氏だ。

地方都市での投資では「物件取得の巧拙や効果的なバリューアップ戦略の有無により、投資パフォーマンスが今まで以上に左右される環境にある」とし、より熟練した投資ノウハウが求められる実態をにじませている。

藤田淳子 編集:田巻一彦

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