[東京 12日 ロイター] - 甘利明経済再生相は12日午後、来年度中に実質賃金はプラスになると見通し、景気好循環の大きな推進力になると述べた。雇用・所得環境の改善で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれるとし、「名目3%・実質2%」成長実現に向けて手順が見えてきたと語った。
デフレ脱却に向けても着実な進展が込まれるとしたが、デフレ脱却宣言は慎重に見極めたいと語った。来年度政府経済見通し決定後に官邸で記者団に語った。
政府は2015年度の実質経済成長率プラス1.5%、名目成長率2.7%とする政府経済見通しを閣議了解した。名目国内総生産(GDP)は504兆円と8年ぶりに500兆円台に乗せる。
また、原油価格下落による交易条件改善により、2年連続でGDPデフレーターがプラスとなる。2年連続でのプラスは93年度以来。ただ、消費者物価指数(CPI)は1.4%の上昇にとどまる。
<実質賃金プラスへ、好循環の大きな推進力に>
来年度の日本経済について甘利経済再生相はあらためて「雇用・所得環境が引き続き改善するなかで、好循環がさらに進展するとともに、原油価格低下に伴い交易条件が改善するなかで、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる」と語った。
政府が目標とする「名目3%・実質2%」成長には届かなかったが、甘利担当相は「大事なことは好循環がしっかり回っていくこと。実質賃金がプラスになりそれが消費に反映し、生産を後押ししていく。このサイクルに見通しがつくと、循環が始まる」と指摘。「来年度中に、実質賃金がプラスになるという見通しを示している」ことを挙げ、好循環の「大きな推進力になっていく」と語った。
そのうえで「名目3%・実質2%は10年間の平均だ。その終盤にはこの平均値を超えていく必要がある。それに向けてアベノミクスを加速させていく。その手順が見えてきた」と述べた。
<2年連続のデフレータープラス、デフレ脱却の強力な足掛かり>
物価情勢については、「デフレ脱却に向けて、着実な進展が見込まれる」と強調。とりわけ、1993年度以来、22年ぶりに2年連続でGDPデフレーター変化率がプラスとなる見通しをあげ「デフレ脱却の強力な足掛かりになる」と語った。
一方で「デフレ脱却ということは、多少のことでは戻らないこと(を指す)」と述べ、デフレーターがマイナスに戻らないこどなど「もう少し慎重に見極めたい」と語った。
<2%の物価安定目標達成、日銀に期待>
日銀が掲げる物価目標2%達成については、原油安が「日本経済にとっては、歓迎すべきことだが、物価安定目標に関しては足を引っ張る材料になっている」と説明し、来年度中の達成の可能性についての言及は避け「日銀に頑張ってもらいたい」と述べるにとどめた。
<PB赤字半減目標、国費ベースでは達成が見込まれる>
大枠が固まった来年度予算に関しては、「成長と財政再建の両立に向けて、大きな歩みを示すことができる内容になった」と評価。15年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)赤字の対GDP半減目標について「国費ベースでは達成が見込まれる」とした。
吉川裕子
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