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アングル:欧州・中国減速で国内企業の今期増益率は鈍化

[東京 10日 ロイター] 欧州や中国の想定以上の景気減速を受け、国内企業の収益回復が遅れている。東証1部上場企業(除く金融)の4─6月期決算は、東日本大震災直後の前年同期に比べて経常減益となった。通期の増益ペースも鈍化する見通しだ。今期経常利益総額は、リーマンショック前の08年3月期との比較ではまだ7割の水準にとどまる。

8月10日、欧州や中国の想定以上の景気減速を受け、国内企業の収益回復が遅れている。写真は木更津の製鉄所付近で2011年10月撮影(2012年 ロイター/Issei Kato)

電気機器や輸送用機器などの戻りが鈍いことが要因で、日本企業の筋力低下が見て取れる。ユーロ安や新興国経済の減速が長引けば、下期の業績がさらに下振れする可能性もあり、日本企業にとって厳しい経営環境が続きそうだ。

<電機、自動車の回復の遅れ>

みずほ証券リサーチ&コンサルティングによると、9日までに決算開示した東証1部3月決算企業(除く金融)1052社の4─6月期経常利益は前年同期比5.6%減少した。債務不安を背景とする欧州の需要減や中国など新興国の景気拡大鈍化が主な理由で、対ユーロで円高が想定以上に進んだことも足かせとなった。

上期(4─9月期)の予想は期初(5月17日時点)の前年同期比0.2%減益から3.0%減益に悪化し、通期予想は期初の20.1%増益から17.0%増益に下振れた。

同社の米澤忍クオンツアナリストは、鉄鋼や化学などの素材が市況悪化の影響で不振だったほか、電機の回復の遅れなどが下振れの要因と分析する。「前年は東日本大震災、タイの洪水、円高などで製造業の業績は極端に悪かった。今期はその重しがなくなり、増益になるシナリオだったが、期初の想定に比べ回復ペースは遅れており、通期予想がさらに下振れる可能性は十分ある」と指摘する。

今期の経常利益総額は24兆6020億円となる見込みだが、リーマンショック前の08年3月期の35兆5510億円に比べると、31%下回る。なかでも、製造業は37%減で戻りが遅い。素材では鉄鋼が78%減と落ち込みが著しく、ガラスも62%減、非鉄も48%減となっている。加工業では精密が55%減、電機が43%減、自動車を含む輸送用機器が33%減と回復が鈍い。金額ベースでは電機と輸送用機器がともに約2兆円落ち込んだままで、全体の足を引っ張っている。

みずほの米澤氏によると、時価総額10億ドル以上の日本企業414社と米国企業969社について、07年4月のEBIT(利払い前の税引き前利益)市場予測を100としてその後の変化率を調べたところ、今年4月時点で米企業は135まで改善したが、日本企業は71にとどまった。「リーマンショック後の日本企業の回復が米企業より遅れていることを示す」。同期間の時価総額の推移を比べても米企業は4月に106まで改善したが、日本企業は54と半減したまま。株価の回復でも遅れをとっている姿が鮮明となった。

SMBC日興証券・株式調査部の圷正嗣氏は、この遅れについて「08年3月期は景気回復のピークで、為替も今より大幅な円安だったことが要因」とみる。日本企業はリーマンショックで大きな打撃を受けたほか、円高の進行で戻りが遅れた。さらに、昨年の震災やタイ洪水などの特殊要因が重なり、収益や株価の低迷を招いたという。ただ、日本企業はこの数年間で円高対策を積み重ねてきただけに、当時の1ドル=100─120円水準でなくとも「85円前後に円高が是正されれば、収益の戻りは期待できる」と語る。

<下期の不透明感強まる>

とは言え、現時点では円高是正の兆候はなく、中国など新興国の減速の影響も広がりつつある。このため、決算発表でも企業幹部からは先行きの懸念を示す発言が相次いだ。富士通6702.Tの加藤和彦CFOは、下期について「世界の市場環境は不透明感が高まってきており、予断を許さない状況」とし、債務危機の影響が懸念される欧州では、これまで堅調だったドイツ市場で「思った以上に投資が抑制されるのではないかと危惧している」と話した。また欧州や中国の減速で国内企業が進出先の中国などで投資を控えるリスクもあると語った。

上期に9割減益を見込むJFEホールディングス5411.Tの岡田伸一副社長は、アジアの鋼材市況の行方について、世界的なリスク要因を考慮すると「なかなか楽観的にはなれない」とし、「今年はコストダウンできるものを最優先するしかない」との覚悟を示した。

業績好調な自動車各社からも慎重な見方が示された。ホンダ7267.Tは震災影響がなくなり4─6月期の営業利益が7.8倍に拡大したが、円高や欧州経済の悪化などを考慮し通期予想は据え置いた。岩村哲夫副社長は、今期の販売計画について「これから上向くかと言われれば厳しい」と述べ、欧州経済の低迷が長引くことを想定し現地法人の再編など販売効率化を検討する考えを示した。

海外企業からも同様の発言が相次いだ。ダウ・ケミカルDOW.Nのアンドリュー・リベリス最高経営責任者(CEO)は「需要が減退しているのは間違いない」とし、2013年に期待していた需要の回復は2014年以降にずれ込むとの見方を示した。米企業にとってはユーロ安がドル換算の売上高を目減りさせるほか、中国、インド、ブラジルなどの需要鈍化も収益を圧迫している。トラック用電気システムや油圧装置を製造するイートンETN.Nのサンディ・カトラーCEOは「第4・四半期(10─12月期)に欧州や中国の市場が上向くとは考えにくい。回復は来年になるだろう」とし、ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルトCEOも「今年がかなり困難な年になると覚悟していた。2013年も同じような覚悟が必要だ」と話した。

(ロイターニュース 大林優香;取材協力 杉山健太郎 白木真紀;編集 橋本浩)

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