[ブリュッセル 30日 ロイター] 欧州委員会は30日、スペインの財政赤字削減目標を緩和する可能性を示唆した。現行の目標がほとんど達成不可能であるとの認識を反映している。
バローゾ欧州委員長はラホイ・スペイン首相との記者会見で「2012年の赤字削減に向けた努力は必要だ」としながらも「しかし、現在の状況に関する議論を現時点で行うことは適切だ」と述べた。
同委員長は、2月のユーロ圏財務相会合や欧州連合(EU)財務相理事会でこの問題が討議される見通しを示し、スペインも構造改革の詳細や時間枠を示す必要があるとした。
委員長は「詳しいことは話せない」としつつも「(財政)健全化はできるだけ成長を犠牲にしない形で行われるべき」との認識を示した。
一方で、ラホイ首相は、きょうブリュッセルで開催されたEU首脳会議の場では、この問題を提起しなかった、としている。首相は「首脳会議の前も会議中も、われわれはこの問題を議論しなかった」と述べた。
ラホイ首相は財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率を今年4.4%に引き下げるなどと公約していた。しかしスペイン経済は第4・四半期に2年ぶりのマイナス成長に陥り、長期にわたるリセッション(景気後退)に突入する可能性が高まった。
このため2月23日の欧州委による2012年の成長見通し公表にあわせて、赤字削減目標を修正することを打診していた。
ラホイ首相は会見で、2012年の成長目標は達成できないと述べたが、財政赤字削減目標への影響については詳細を明らかにしていない。
首相は「われわれは、新たなマクロ経済フレームワークを提示するつもりだ。現在の見通しでは、スペインの今年のGDP伸び率は2.3%とされているが、これが実現できないことは明白」との認識を示した。
スペイン中銀は、今年は1.5%のマイナス成長、と予想している。
スペイン政府筋は、具体的な経済改革を実施する見返りに、財政赤字削減目標に関して段階的な自由裁量の余地を求める案を非公式に打ち出している。
ただ、EU高官は、こうした案はEUの規則にそぐわないとの考えを示している。
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