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中東リスクが市場圧迫、クロス円下落が円高要因に

[東京 27日 ロイター] - 化学兵器の使用をめぐるシリア情勢の緊迫化で米国の軍事介入への警戒感が高まるなど、中東の地政学的リスクが再び市場を圧迫している。現時点では「有事のドル買い」は進んでいないが、新興国通貨の下落によるクロス円の下落に押されてドル/円はやや円高気味だ。

8月27日、化学兵器の使用をめぐるシリア情勢の緊迫化で米国の軍事介入への警戒感が高まるなど、中東の地政学的リスクが再び市場を圧迫している。都内で2010年9月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

日本株は様子見気分が強く、売りも乏しいため下げ渋っているが、中東情勢が悪化すれば、原油価格の上昇などを通じ、世界経済に再びリスクオフ意識が広がるのではないかと懸念されている。

<原油価格に「中東プレミアム」>

混乱が続くエジプトなど、もともと中東リスクは意識されていたが、シリアによる化学兵器使用は否定し難いとするケリー米国務長官の26日の発言で、市場の「警戒レベル」は一気に高まった。米国によるシリアへの軍事介入への可能性が高まったとの見方が広がったためだ。

投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数.VIXは26日の市場で1.01(7.22%)上昇し、14.99と15に再び迫った。米量的緩和策への懸念が強まった6月には20を超えており、レベル的にはまだ低いが、8月に入ってから上昇傾向にある。

シリアの産油量は1日30万バレル程度と小さく、同国の混乱自体は世界の原油供給への影響は小さいが、周辺地域への混乱拡大や石油施設への破壊活動などが警戒されている。米国の軍事介入があれば、少なくとも短期的には一段と混乱するのは必至だ。軍事介入の拡大は重い財政負担となるため、米国の債務問題という別の問題が噴出する。ロシア・中国と米国の足並みがそろわないことも懸念要因だ。

北海ブレント先物は26日の取引で、一時1バレル=111ドル超に上昇し5カ月ぶり高値をつけた。「中東全体が徐々に緊迫化してきていることで『中東プレミアム』が原油価格に上乗せされている」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)という。

7月の耐久財新規受注など、やや弱い米国の経済指標が目立ち始めていることが、需要減予想が原油価格の押し下げ要因として働いており、原油価格の急騰を防いでいるものの、供給懸念から価格が高止まりすれば、足元が依然覚束ない世界経済にダメージを浴びせかねない。マーケット全体は今後の展開を確かめようと様子見気分が強いが、相次ぐリスクオフ材料に警戒感も強まっている。

<新興国からの資金流出を懸念>

外為市場では、地政学的リスクが高まる場合には「有事のドル買い」が起きやすい。リスク回避のマネーが米国に集中しやすいためだ。ただ、今回は米国自身の軍事介入が警戒されていることから、現時点では目立った動きはまだみられていない。「同時多発テロのような米国本土での事態でなければ、有事にはドル買いとなりやすいが、今回はまだ状況を見極める段階で動きは鈍い」(国内証券)という。

一方、下げが目立つのがクロス円だ。中東情勢の緊迫化にともなうリスクオフムードの強まりで、新興国通貨に対する円ショートポジションを巻き戻す動きがみられるという。現時点の外為市場では、リスクオン時には円売り、リスクオフ時には円買いとなりやすい。一時、豪ドル/円は88.05円、ユーロ/円は131.25円まで下落。ドル/円自体の動きは乏しいものの、クロス円の下落が波及し、高値98.54円付近から一時98.04円まで下落した。

新興国は米国の量的緩和第3弾(QE3)縮小観測を背景に、資金流出懸念が続いている。中東通貨はアジア通貨に比べ比較的底堅いが、地政学的リスクがこのまま強まれば、資金巻き戻しの動きが波及する可能性もある。「リスクオフ時にはドル買いと円買いが同時に起きやすいため、ドル/円自体は動かないことが多くなっているが、クロス円の下落で弱含む可能性があり注意が必要だ」と東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏は指摘する。

<揺らぐQE3縮小決定予想>

27日の日経平均.N225は続落。石川製作所6208.Tなど軍事関連株が思惑的に買われたが、海外株安に押され、全般的には上値が重かった。東証1部売買代金は1兆4323億円と依然として薄商い。積極的な売りが出ているわけではないが、「円高警戒もあって買い手は様子見に転じている」(国内投信)という。

米国経済指標に弱いデータが出ているほか、地政学リスクも高まってきたとあって米QE3縮小の決定は9月米連邦公開市場委員会(FOMC)ではなく、12月のFOMCとの見方が強まってきている。その分だけ「金融相場」は維持されやすいが、「ネガティブな材料が先延ばしの要因とあっては、積極的なリスクオンには傾きにくい」(しんきんアセットマネジメント投信・運用部長の藤原直樹氏)という。

一方、依然として9月のQE3縮小決定との見方も根強い。「むしろ緩和縮小に踏み切った方が市場のインパクトが小さくなるかもしれない」(邦銀)という。ただ、市場からは、縮小観測に日々、右往左往するマーケットの動きに「流動性を吸収して出口に向かうことへの難しさをあらためて認識させられた」(国内金融機関)との声も出ている。

(伊賀 大記 編集:北松 克朗)

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