[ロンドン 25日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が先週、量的緩和の縮小を見送ったが、投資家は喜ぶどころか、この決定が持つ米国の景気見通しへの含意について懸念している。
第3・四半期に支配的だった3種類の投資プレー、すなわち債券よりも株、新興国よりも先進国、米国よりも欧州を選好するという戦略はいったん息切れしたが、第4・四半期を数日後に控えた今、息を吹き返しそうな様子だ。
先週は米国債利回りの低下につれて世界的に債券利回りが低下し、ドルは主要通貨バスケットに対して1%下落、原油は2%下がって世界の株価指数.MIWO00000PUSは横ばいとなった。
これはFRBの緩和縮小観測につながった市場の米景気回復への確信が揺らいだことを示唆している。
HSBCの資産配分グローバルヘッド、フレドリック・ナーブランド氏は「FRBは行動を見送ったことで、どちらかといえば信認に疑問符が付いたと思うし、経済指標重視の彼らの姿勢は市場のボラティリティを抑えるよりむしろ高めそうだ」と話す。
ナーブランド氏は先週の連邦公開市場委員会(FOMC)前から米景気の行方に懸念を抱いており、今もそれは変わっていない。「われわれはソブリン債、中でも米国債の持ち高を比較的大きくしたままだ。景気が一段とふらつきそうなことを示す証拠が確かに認められる」と述べた。
<何はともあれ経済指標>
FRBが経済指標、とりわけ雇用指標重視の姿勢をあらためて示したことで、10月4日発表の米雇用統計と、第3・四半期決算シーズンの幕開けの注目度が高まりそうだ。
ラボバンクのシニア債券ストラテジスト、リチャード・マグワイア氏は、FRBの緩和縮小見送りにより、市場は「指標への反応の仕方において非対称的なバイアス」を持つことになったと指摘。「市場の基本的スタンスに変化が生じた。現在の標準的見方は、流動性を引き揚げますよと告げられるまでは潤沢な流動性供給が続く、というものだ」と付け加えた。
FOMC直後に実施したエコノミスト対象のロイター調査では、FRBの債券買い入れプログラムが12月に150億ドル縮小されるとの見方が示されたが、一部には2014年初めまで縮小が見送られるリスクを指摘する声もあった。
多くの市場関係者は、指標発表の前後には相場変動が激しさを増すことになると予想しているが、まだ幅広い資産クラスにそうした動きが広がっているわけではない。
外為市場では、ユーロ/ドルの1カ月のボラティリティが2012年12月以来で最低となっている。株式市場でも、ユーロSTOXX50ボラティリティ指数.V2TXが12%低下、米国のVIX指数.VIXも2.5%低下した。
ユニオン・バンケール・プリベのファンドマネジャー、フェアーズ・ベヌアリ氏は、経済成長に敏感な株式の保有を増やしたことに今でも満足しているとした上で、経済政策の観点からは見通しが以前より不透明になったと言う。
こうしたことから、ベアヌリ氏は決算シーズンによって自らの強気姿勢が正当化されると期待。「第3・四半期決算シーズンは上期に比べて幾分改善しそうだが、通年の1株当たり利益見通しの上方修正にはつながりそうにない。もっとも、2014年の見通しについては各社の最高経営責任者(CEO)から慎重ながら楽観的な言葉が発せられ始めるだろう」と話した。
ヘッジファンドも今年の着実な株価上昇基調が続くと予想しているようだ。ヘッジファンドのある投資家によると、「ロング・ショート」戦略のファンドはFOMC後に米国株のロングポジションを差し引き2%増やしている。
しかしトムソン・ロイター・スターマインのデータによると、欧州と米国の格差は大きく開いたままで、実体経済の改善を理由に投資している投資家にとっては落とし穴となりかねない。
このデータによると、ユーロSTOXX50指数を構成する欧州優良企業は利益が前年度比9.3%減少する見通しなのに対し、米優良企業は2.2%の増加が見込まれている。
2014年の業績については、ユーロSTOXX600.STOXXの組み入れ企業では過去30日間アナリストによる見通しの下方修正が上方修正を35%上回った。S&P500種総合株価指数.SPXではこの差が12%だ。
(Simon Jessop、 Emelia Sithole-Matarise記者)
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