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「デフレ脱却」に乗れない市場、消費増税の副作用を警戒

[東京 27日 ロイター] - 日本の物価上昇傾向をマーケットは好感できずにいる。コストプッシュ型の値上げが多いとはいえ、需給ギャップは縮小しており、全体的には「デフレ脱却」方向にある。

9月27日、日本の物価上昇傾向をマーケットは好感できずにいる。写真は都内で5月撮影した株価ボード(2013年 ロイター/Issei Kato)

しかし、金利上昇や可処分所得の減少など消費増税の副作用を抑えるために欠かせない賃金や需要を増やす政策はまだ不十分。安倍政権が増税に踏み切ればデフレ脱却に重要な消費マインドにも悪影響を与える、との警戒感が市場には根強い。

<需給ギャップは改善、CPIは上昇傾向>

現在の物価上昇は原油価格(電気料金)や輸入商品価格の上昇を主因としたコストプッシュ型であり、評価できないとの指摘は少なくない。8月のコア全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)は、前年比0.8%上昇と3カ月連続のプラスとなったが、食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く指数、いわゆるコアコアCPIは同0.1%低下と依然水面下だ。

ただ、全体でみればデフレ解消方向に向かっているとの指摘もある。内閣府が算出しているGDPギャップをみると、需要と供給のマクロバランスを示す需給ギャップは依然としてマイナス(供給に対して需要が不足)だが、その幅は2012年7─9月期の3.1%から減少傾向をたどり、今年4─6月期では1.5%まで縮まっている。

需給ギャップと物価上昇率の関係を示すデータとして日銀が展望リポートなどで示しているフィリップス曲線は、1983年以降、バラツキはあるものの、四半期ベースでみると需給ギャップが改善すれば物価も上昇するという「正」の関係を示している。

「個別品目ではコストプッシュ型の物価上昇もあるが、全体でみれば景気回復による需給ギャップの改善が物価上昇の大きな背景だ。景気回復が徐々に広がってくれば、コアコアCPIも年内にはプラス圏に浮上する」とマネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏はみている。

デフレ脱却は貯蓄から投資へのシフトを促す。「今まで眠っていた1500兆円の個人資金がリスク資産にわずかに動くだけでも株価を大きく上昇させる」(国内生保役員)と市場の期待は大きい。金利上昇を一定程度に抑えることができれば、株価上昇などの恩恵を経済全体で受けることができる。

<数字合わせでない賃上げ促す政策必要>

ただ、CPI発表後のマーケットはほぼ無反応。8月コアCPIは市場予想も上回ったが、デフレ脱却を織り込む動きは乏しく日経平均.N225は小反落となった。「デフレ脱却しても、賃金が上昇しなければ、可処分所得が減るだけで実質マイナスだ。所得を増やす政策がなければ株価上昇要因にはなりにくい」(楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏)という。円債金利やドル/円も小動きだ。

消費増増税も、ようやく上向いてきた消費マインドを損ないかねないと警戒されている。政府は消費増税を実施する際の影響を軽減する経済対策を検討しているが、現在、各種報道から、市場で予想されているメニューは公共事業や設備投資減税や法人税減税など企業関連などが中心だ。

雇用を確保することは賃金上昇にもつながるため、日本企業の体力を上げることは重要だが、効果が出るには時間がかかる。消費税増税のインパクト軽減ということに関しては「ここまで景気回復をけん引してきたのは消費。消費よりも企業に重点を置いた経済対策では、消費腰折れの懸念は消えない」(国内証券)との見方も多い。

消費増税は、日本の財政問題をめぐる不透明感を1つ減らすことになるため、海外投資家などは好感するとの指摘もあるが、8兆円とみられる消費増税の影響が経済を圧迫することは避けられない。今後、策定される経済対策や成長戦略がどの程度、マイナス要因を軽減できるかを投資家は見極めようとしている。

格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は27日、「日本のソブリン格付けの見通し」について説明会を開き、デフレ脱却しただけでは格上げできないとし、成長率がある程度の水準になることが必要と述べた。

三井住友アセットマネジメントのチーフエコノミスト、宅森昭吉氏は、デフレ脱却は経営者がカギを握ると指摘する。「企業が保有するキャッシュは豊富で、オリンピックなどビジネスチャンスもある。ここで賃金を上げていけばいい循環になる。コスト削減を優先すれば、日本経済は成長軌道に乗れず、『合成の誤謬(ごびゅう)』となって企業に返ってくる」という。

給与総額を増やした企業に対して減税を行うという税制案も浮上しているが、反対も多く実現するかは不明だ。また政府に後押しされて渋々、賃金を上げるようでは、日本の「未来」はまだ暗い。数字合わせではなく、縮こまっている家計や企業のマインドを解き放つような政策が求められている。

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