[東京 3日 ロイター] -武田薬品工業4502.Tの長谷川閑史社長は3日の会見で、同社の高血圧治療薬「ブロプレス(一般名:カンデサルタン)」をめぐる問題について、臨床データの改ざんや利益相反はないと述べた。一方、プロモーションについては、一部で不適切な利用があったとし、改善に努める方針を示した。
「ブロプレス」をめぐっては、京都大学などのチームが実施した大規模臨床研究「CASE─J」の論文中のグラフと、武田が宣伝広告に利用したグラフが異なっているなどの指摘が出ていた。武田は、2度にわたる社内調査を実施し、事態の把握を進めてきた。
長谷川社長は、武田が研究の統計解析には「一切関与していない」と述べた。また、奨学寄附金を出していたが「利益相反上の問題もない」とした。このほか、武田は臨床データにはアクセスできないほか、社内調査でもアクセスの事実はなかったとして「データ改ざんや捏造の事実はない」と否定した。
一方では、学会情報をプロモーション活動に使うなど一部に「不適切なプロモーションがあった」とし、プロモーション全体の監査機能を強化する考えを示した。
武田では、第3者機関を設置し「可及的速やかに調査を実施し、結果を報告したい」とした。
大規模臨床研究「CASE─J」は、高血圧患者数約4700人を対象に、武田の「ブロプレス」と別の種類の高血圧症治療薬「アムロジピン」と比較したもの。2001―06年に実施された。
「ブロプレス」は、1999年6月に国内で発売を開始。2012年度の国内売上高は1340億円で、同社の主力薬のひとつとなっている。
臨床試験と製薬会社の関係については、ノバルティスファーマの「ディオバン(一般名:バルサルタン)」をめぐる問題で注目が集まった。大学の研究チームが行った臨床試験の結果、ディオバンには血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症の発症が抑えられる効果があるとの論文を発表。しかし、この研究には、ノバルティスの社員が身分を隠して関わっていたことが明らかになり、データを不正に操作したとの疑惑が出た。厚生労働省は「ディオバン」の不正な臨床研究データを用いた広告宣伝が薬事法違反の疑いがあるとして、ノバルティスなどを東京地検に刑事告発した。
清水律子
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