March 26, 2019 / 4:17 AM / 3 months ago

コラム:米アップル、歩み始めた「平凡な企業」への道

[ニューヨーク 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米アップル(AAPL.O)には1つの大きな課題、つまり新たな収入源の創出がある。打開策は数多く出てきているのにどれも説得力は今一つだ。

 3月25日、往年のアップルは人々を畏怖させる存在だったが、今やどこにでも転がっているような平凡な企業への道を歩もうとしている。 米カリフォルニア州で行われた新サービス発表会で撮影(2019年 ロイター/Stephen Lam)

ティム・クック最高経営責任者(CEO)は25日、動画ストリーミングサービスへの参入とオンラインゲームサービス、クレジットカードの発行を開始すると発表した。ただ各種のサービスは「分かりづらい」ものから、「多少革新的」なものといった範囲にとどまっている。

アップルにとって新しい製品・サービスのお披露目は、10年余り前のiPhone(アイフォーン)登場によって期待値が高まってしまった。iPhoneが革命的で既成概念を打ち壊したからだ。当時先行していたブラックベリー(BB.TO)、ノキア、モトローラと言った携帯端末メーカーは、自分たちの事業が激震に見舞われるのを目の当たりにした。

iPhoneなどの機器は今でもアップルの売上高のおよそ9割を稼ぎ出しているものの、販売の勢いに陰りが見えており、同社が軸足を端末から定額サービスに移行するのは理にかなっている。だからこそ今回の新サービス発表につながった。

ニュースアプリ有料版「ニュースプラス」は月額約10ドルで、300種類の雑誌を読むことができる。これは素晴らしいが、幅広いコンテンツを押さえているわけではない。特に目立つのは、ニューヨーク・タイムズ(NYT.N)とワシントン・ポストが対象に入っていない点だ。

クック氏がとりわけ注力するのは、動画配信におけるネットフリックス(NFLX.O)への攻勢だ。10年にわたる試行錯誤を経て、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏らから支援を得る形で全面的なサービスを打ち出した。とはいえこのサービス「アップルTVプラス」はさまざまな階層やチャンネル、パートナーシップの寄せ集めの感があり、シンプルさからは程遠い。

より有望なのは、ゴールドマン・サックス(GS.N)が支援するクレジットカード事業だ。アップルは顧客獲得のために手続きの簡単さ、セキュリティーの強さや利便性などをアピールするとともにキャッシュバックを提示している。カード番号がないという目新しさもある。もっともアップルの参入は、JPモルガン(JPM.N)やキャピタル・ワン(COF.N)、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N)、シティグループ(C.N)といった市場に確固とした基盤を築いている大手金融機関の奮起を促す材料にはなっても、業界の構図を一変させたり、現在の寡占状態を覆せる公算は乏しい。アクセンチュアのデータによると、大手金融4社のカード市場における合計シェアは既に50%を超えている。

問題は、クック氏が2時間かけて説明した今回のサービスは、どれも消費者にとって必須ではないことだ。市場の反応も正直で、アップル株だけでなく、競争相手となりそうなウォルト・ディズニー(DIS.N)やネットフリックス、大手銀行の株もほとんど動かなかった。

対照的にシティによると、アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)が2017年にホールフーズ買収を表明した日には、小売りセクター全体で時価総額が約380億ドル減少した。

往年のアップルは人々を畏怖させる存在だったが、今やどこにでも転がっているような平凡な企業への道を歩もうとしている。

●背景となるニュース

・アップルは25日、定額の動画配信サービスとオンラインゲームサービス、ゴールドマン・サックスの支援を受けたクレジットカード発行を開始すると発表した。

・アップルの売上高はiPhone(アイフォーン)のような機器がほとんど。サービス収入は昨年12月29日時点で109億ドルと、全体の13%だった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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