December 30, 2017 / 11:11 PM / 19 days ago

焦点:カンボジアに「第2のマカオ」誕生か、中国投資が加速

[シアヌークビル(カンボジア) 7日 ロイター] - カンボジアのリゾート地シアヌークビルにあるビーチと、増え続けるカジノに挟まれた、ほこりっぽい市街のほんの100メートルほど離れた場所でそれぞれのレストランを経営する通称Lao QiさんとBun Saroeunさんだが、彼らの運命は、これ以上ないほど異なっている。

Lao Qiさんは、中国からの投資ブームに乗って、他の数千人の中国人投資家とともにシアヌークビルに進出した。一方、Bun Saroeunさんの生計を支えているのは財布のヒモの固い西側諸国の観光客だ。とうてい採算は取れず、今や立ち退きを求められる始末だ。

シアヌークビルの状況は、中国との関係緊密化がカンボジアにもたらしている変化を鮮明に物語っている。

カンボジアのフン・セン首相は、中国からの援助や投資を後ろ盾に、自身の反対派弾圧に向けられた西側諸国の批判を無視しているが、そうした援助や投資は同時に、カンボジア経済をこれまで以上に中国経済に強く縛りつけている。

シアヌーク前国王にちなんで命名されたシハヌークビルは、1960年代にジャングルを切り開いて建設され、カンボジアで唯一の深水港を擁する港湾都市だ。

かつてカンボジアのエリート層の行楽地だったこの街は、クメール・ルージュによる虐殺、そして1970ー80年代の紛争期には苦渋を味わったが、その後、太陽と海、砂浜、そして人によってはセックスを求めるバックパッカーなど、西側観光客が立ち寄る場所になった。

だが、これまでにも少しずつこの街のカジノに流れ込んでいた中国マネーは今や大きな潮流となり、中国が掲げる「一帯一路」の最初の港湾としてデベロッパーが宣伝する都市への変貌が確実視されている。

「ここは20年前の中国のようだ。チャンスは大きい」。中国浙江省からカジノで働くためにこの地を訪れたLao Qiさん(33)はそう語る。彼の店で提供されるヌードルとチャーハンは、いまや1日数百ドルもの収入をもたらしている。

通りの向こうで59歳のBun Saroeunさんが経営する「エクスタティック・ピザ」では、1日100ドルも稼げればラッキーな方だ。ホテル価格の上昇と建設ラッシュによる騒音のせいで、西側諸国とカンボジア国内の観光客はこの街を敬遠している、と彼は言う。

「中国人も多少は来るが、今では彼らのための(中華料理)レストランがあるから」と語るBun Saroeunさん。店はビーチに近い一等地にあり、土地のオーナーは再開発のため、彼に立ち退きを迫っている。

中国人の流入は非常に意図的なものだ。

市政を担当するのは、フン・セン首相の盟友Yun Min市長だ。かつて地方軍司令官だった同市長は自ら何度も中国に足を運び、投資家を勧誘し、彼らに対する投資保護措置を提示している。

「中国人投資家にはもっと来てほしい」と市長はロイターに語った。彼の試算では、すでに市内の不動産の半分は中国人に賃貸されているという。「彼らは市に利益をもたらしている」

<第2のマカオか>

市の人口25万人のうち、中国人の住民数は数千人とも数万人とも見積もられているが、公式の数値は発表されていない。

シアヌークビル一帯では、標準中国語(北京官話)の表示が増えつつある。スーパーマーケットが中国製品であふれているのは日常的な風景だ。国内製品といえばビールや飲料水程度になりがちだ。

だが、現時点でのシアヌークビルに対する中国人流入は、今後予想される規模とは比較にならない。かつては落ち着いたインディペンデンス・ビーチ近くでは、コンクリートの高層ビルが数カ月で続々と建ち並び、カジノやホテル、数千戸のマンションの誕生が予定されている。

「ここは第2のマカオになる」。総工費2億ドルの38階建てリゾートマンション「ブルーレイ・リゾート」開発を手掛けるゼネラルマネジャーChen Hu氏(48)は、シアヌークビルを世界最大のギャンブル中心地マカオになぞらえる。

同氏が案内するショールームでは、マンション購入を検討する中国人グループが完成予想模型をうっとりと眺めている。少なくとも700戸ある物件のうち約20%が売約済みだと彼は言う。価格は約12万5000ドルから50万ドルだ。

「文句を言う人も多いが、中国マネーの流入で利益を得ている人もやはり多い」と語るのは、William Vanさん(60)だ。彼が所有する集合住宅は、ほとんどが中国人労働者で埋まっており、投資による利益も膨れあがっているという。

中国人投資家にとって明らかな魅力となっているのは、カンボジアと中国の密接な関係だとデベロッパーは指摘する。フン・セン首相が繰り返し北京を訪問しており、中国の習近平国家主席もカンボジアを昨年末訪問したことで、両国の関係は一層強化されている。

最近北京を再訪したフン・セン首相は、中国企業から、幹線道路、プノンペン郊外の衛星都市、そして教育やエンターテイメント、銀行分野のプロジェクトなど、総額70億ドルに上る投資の申し出を受けた。

 12月7日、カンボジアのリゾート地シアヌークビルの状況は、中国との関係緊密化がカンボジアにもたらしている変化を鮮明に物語っている。写真は同地の中国料理屋、ホテルとカジノ。9月撮影(2017年 ロイター/Samrang Pring)

このうち新規、もしくは確定的な投資がどれほどあるかは明らかにではないが、投資トレンドが加速している様子が浮き彫りになった。

中国のカンボジア進出に伴って、ビジネスが進展している。

「それは継続しており、爆発的に拡大しているとさえ言えるかもしれない」と米国で活動する研究者で、中国の海外進出に関する共著があるソーパール・イアー氏は語る。「どの国もやっていないような規模に達している、という話だ。彼らの活動の規模や大きさで、他の投資家を締め出している」

プノンペンでマンションを売り出し、シアヌークビルでも10億ドル規模のプロジェクト2件に着手しているプリンス・リアルエステート・グループが配布する豪勢なパンフレットで目を引くのは、習主席とフン・セン首相の写真だ。

マーケティング担当ディレクターHu Tian Lu氏は、インフラ整備を軸とする中国の開発・外交イニシアチブに触れ、「ここは、一帯一路構想における重要なロケーションだ」と語る。

シアヌークビルの港から車で少し行ったところに、拡張を続ける経済特区がある。ここで活動する110社のうち9割が中国企業で、輸出入関税は免除され、法人税も一定期間は非課税となっている。

中国はプノンペンに至る4車線の高速道路を建設する予定であり、シアヌークビル国際空港も拡張を進めている。同空港を利用する国際便の約7割は中国向けの発着だ。また「一帯一路」計画では、最終的に鉄道網の改善も盛り込まれた。

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<増加する中国人観光客>

中国からの投資の焦点になっているのはシアヌークビルだが、こうした現象は決してここに限ったものではない。

カンボジアを訪れる観光客は、中国人が一番多い。その数は今年1─7月で63万5000人に上り、観光客全体の5分の1を占めた。カンボジアは、中国人観光客を2020年までに200万人へ増加したいと考えている。

2012年から2016年までの間、中国からの対カンボジア投資は40億ドルを超えた。米国からの投資と比べると、昨年操業開始したコカコーラ工場の1億ドルを計算に入れても、30倍以上となる。中国による昨年の援助額は2億6500万ドルで、日本による援助の2倍を超えており、米国と比較すると4倍に近い。

中国が建設したダムが、カンボジアにおける大半の電力を供給している。カンボジアの主力輸出品を生産する衣料品工場の約3分の1は中国企業のものだ。

また、カンボジアの対外債務58億ドルの半分近くは対中国であり、他のどの国に対する債務よりも何倍も多い。

またカンボジア政府の、中国政府に対する「政治的な借り」も大きくなっている。

フン・セン首相が来年の選挙を前に主要な政敵を逮捕し、その政党を解散させたことは、西側諸国からの批判を浴びているが、中国は、カンボジアによる秩序維持の努力であるとして支持を明言している。

逆に中国にとっては、カンボジアから地域的な問題を巡る忠実な支持を期待できるし、東南アジアに確固たる戦略拠点を確保することができる。シアヌークビルは、中国企業の租借地で挟まれており、カンボジアの海岸線の3分の1以上は中国企業に支配されている格好となる。

シアヌークビル向けの大型投資は、地主にとっては天の恵みだ。あるホテル経営者は、カジノスタッフの宿舎とするため、中国企業がホテルを買収するため、通常の2倍の金額を提示してきたと語る。この経営者は、もう働く必要すらなくなってしまった。

だが、借りる側にとっては悪夢だ。西側諸国の現地駐在員は「中国化」を話題にしている。中国人が自分たちよりはるかに高い金額を払うために、自分たちが締め出されてしまう現象のことだ。

不動産代理店のThim Sothea氏は、市場変化による厳しい教訓を得た。同氏の経営するシアヌークビル・プロパティはビーチに近い場所にあったが、地主から退去させられてしまったのだ。中国企業に2倍の賃料で入居してもらうためである。

「ここはチャイナタウン化しつつある」と同氏は言う。まだ新たなオフィスが見つからないため、カフェで取材に応じた。「ホテルや不動産を持っている金持ちにとってはよい話だが、それ以外は皆が不幸になっている」

冒頭のLao Qi氏にとっても、まったく問題はない。彼はすでに新たなレストランを開店する計画を立てている。今度はもっとビーチに近い場所になると期待している。

(Matthew Tostevin記者、Prak Chan Thul記者、翻訳:エァクレーレン)

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