[オタワ 30日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)は30日、政策金利を予想通り1.75%に据え置いた。ただポロズ総裁は今回の会合で世界的な通商問題からカナダ経済を守るために「リスクに対する保険としての」利下げを検討したことを明らかにした。中銀はこのほか、カナダ経済に対する貿易摩擦の影響が強まっているとして国内外の成長率見通しを引き下げた。
ポロズ総裁は記者会見で、「カナダ経済に対する下方リスクを踏まえ、保険としての一段と緩和的な金融政策が現時点で正当化されるか検討した」と表明。ただ現時点ではそうした必要はないと結論付けられたと述べた。
総裁はこうした保険的な利下げは9月の会合では検討されなかったとも表明。ただ、海外に起因するリスク増大に対する認識は示した。
世界的に緩和傾向にある中、カナダ中銀は2018年10月以降、政策金利を据え置いている。中銀は現在の緩和水準は引き続き適切とし、今後の政策変更に関する言及は控えた。
また通商面での緊張が設備投資やコモディティー価格の重しになっているとし、「貿易摩擦や不確実性が続く中、カナダ経済の回復力がますます試されていることに留意している」と指摘。19年のカナダ成長率見通しを1.3%から1.5%に引き上げる一方、20年と21年の見通しをそれぞれ1.9%から1.7%、2.0%から1.8%に引き下げた。
さらに外需低迷や通商面での不確実性、産油が盛んなアルバータ州での財政支出の減少などを指摘。一方で雇用は引き続き堅調さを示し、賃金は改善しているとした。
BMOのチーフ・エコノミスト、ダグ・ポーター氏は、中銀のトーンは市場予想よりも「ややハト派的」だったと指摘。「中銀は金利変更の準備を全くしていないだろうが、世界の貿易見通しについて強く懸念していることはかなり明白」とし、「今後数カ月で事態が悪化した場合には行動する準備があるという数多くのヒントがあった」と述べた。
中銀は19年の世界成長率見通しを3.0%から金融危機後で最も低い2.9%に引き下げたほか、20年の見通しも3.2%から3.1%に引き下げた。貿易摩擦が世界経済を弱めるとした。
また金融政策を検討する上で「製造業や投資におよんでいる世界景気減速の広がりを監視する」とし、消費支出や住宅市場、財政政策の動向も注視していくとした。
中銀の決定を受けカナダドルは対米ドルで2週間ぶりの低水準近辺に下落。TD証券のカナダ担当首席ストラテジスト、アンドリュー・ケルビン氏は、カナダ中銀は「ハト派的だった」とし、「市場はこれに反応している」と述べた。
*内容を追加しました。
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